中学のダンス必修化を良い方向へ導きたい!振付稼業air:manインタビュー(4)

OK Goの最新大ヒットMV『I Won’t Let You Down』の振付や、世界の広告賞を総ナメにしたユニクロのウェブCM「UNIQLOCK」の振付を担当するなど、今もっとも注目の振付ユニット・振付稼業air:manのロングインタビュー4本目! 先日出版した、中学校のダンス必修化に向けたテキスト『振付稼業air:manの踊る教科書』を作るに至った考えなどを聞いていきます。

インタビュー1本目→  OK Goの最新MVを担当!教科書も出版!?今もっとも熱い振付ユニット、振付稼業air:manインタビュー(1)

インタビュー2本目→  振付業界の曖昧さに挑戦し続けて10年!振付稼業air:manインタビュー(2)

インタビュー3本目→  「ギャラは1人分、仕事の出来は人数の乗数倍」で作り上げた実績~振付稼業air:manインタビュー(3)

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Woman Insight編集部(以下、WI) 私がもし発注側だったとすると、「○○さんにお願いした振付はこちらです」って見せてもらったときに、「ん?」ってひっかかっても、「有名な〇〇さんにお願いしてるし……」「自分の感覚が間違ってるのか……?」って悩んでしまって、明確にノーを言いにくい気がするんですよね。そんなときに、選択肢のパターンが豊富にあって、それぞれなぜそうかっていう理由が提示してもらえてるのは、発注する制作サイドの方もすごくやりやすいんじゃないかなと思いました。

振付稼業air:man・杉谷一隆さん(以下、杉谷)  だと嬉しいですね。ほかの方々がどうしてるかはっきりはわからないですが、特にCMの振付においては、うちらが出てくる以前と以降(のやり方)っていうのは明確に違うと思います。それはそれで、自分たちに対する批判も多く聞きました。

WI 今までのやり方でやっていた人からすると、うまく回ってたのに何するの!って感じなんでしょうね。

杉谷 その辺はいろいろあったけど結果的にうまくいっているので、もっと同じスタイルを真似する人が多く出てきてもいいと思ったんですが、それが思ったほどそうでもなくて。じゃあどうしていこうかっていうのが、次の悩みといいますか、考えていることでもあります。

WI 杉谷さんとしては、もっとたくさんの振付ユニットが誕生して、職業としての振付業界がしっかり確立されて、さらに盛り上がればいいなと思っているんですね。

杉谷 そうです。ダンスが学校で必修になったことも加え、とにかく誰でも無作為にダンスに触れる機会が増えますよね。その子たちが大学を卒業したとき、振付は経験ないけど、なんとなく踊りは知っている。その「なんとなく知っている」ですべての職業を越権する可能性があるくらいに、踊りが身近になる可能性があります。そして必修になるっていうのは、身近になる可能性もあれば、嫌いになる可能性もあるっていうことだとも言えると思います。必修という言葉は「なんで言われた通りにやらなきゃならないの」っていう拒否に繋がる諸刃の剣でもあり、特にダンスは「そんなのカッコわりいよ」って、人によってはより「嫌い」が強調される可能性もあるなって思ったんです。そう思ったときに、業界の現状はダンスがこれだけあふれていてもアウトプットの場がすごく少なくて、未だにそうですけど、最大の夢がアーティストの後ろで踊るバックダンサーだったり、あるいは自身がアーティストになるとか、表現する側の職業の選択しかなくて。踊りの中に振付っていう職業もあるよっていうのはプレゼンし続けていきたいです。ダンスが中学校の必修の授業になりましたっていうのは、職業の選択の幅が広がるのには有効なはずなんです!

WI 小学校はもう必修なんでしたっけ。

杉谷 小学校はもうずいぶん前に必修になっていて、中学校が2012年に必修になりました。必修といっても、武道とかダンスとかからの選択になっていると思います。

WI 実際に今の小学生、中学生はダンスが必修でも、その親や先生は踊れない人が多いですよね。そういう意味では、今はちょうど過渡期なのかなと思います。今の20代前半くらいの方って、おしなべてダンスの経験がある人が多いなという印象があります。私の世代(アラフォー)だったら「ピアノを習ったことがある」くらいのニュアンスで「ダンス習っていたことがある」っていう人が多いなって。それが20代後半以降、つまり今の小学生や中学生の親世代、先生世代以上になると、まだ「ダンスをやっていた人もいる」っていう程度ですよね。今回のair:manさんの『振付稼業air:manの踊る教科書』は、そういう方に向けてつくられたのかな?と思いました。

杉谷 本当にそうですね。まずは学校の先生と子供たちが、ダンスで等距離にすり寄れる素材が欲しいなと思ったんです。その素材は何かというと、それが今回の本のメソッドなんですけど、「校歌で自分たちの踊りを踊ってみよう」っていうことです。あくまでも先生がダンスで悩まなくてもいいように、自分の理解できるテリトリー内で子供たちと共通の素材を探るためにはどうすれば?ということと、どうやったらダンスってちょっとだけ楽しくなるかな、というアプローチを一番に考えています。

実際に現場の先生にも子供たちにもいろいろ聞いたりしながら、この本は3年くらいかけて作ったんですね。そのリサーチの過程で「踊ってる先生、どう?」って子供たちに聞くと「先生、案外かわいい」なんて答えが圧倒的に多くて、これはいかんともしがたいなと個人的に思ったりもしました。学校の先生を「かわいい」っていうのは悪いことではないけれど、そういうふうに思われている対象たち(生徒)を、先生たちはダンスで評価しないといけない。ぜんぜんお互いのリンクが等距離に貼れていないのに、評価しないといけない状況って、どちらもより混乱してしまうだろうなと。

そうならないように、よりわかりやすい素材っていうのを、先生たちが持ち寄れればいいんですけど、全員がそうはいかない。例えばうちらの世代なら、尾崎豊の曲を弾き語りしてくれる先生とか、自分の好きなものを明確にアウトプットする何かがあって、それを授業と結びつけることができる人はそれでいいんです。そういうものが見つけられなくて、「ダンス、どうしよう、格好良く踊らなきゃいけない」って思っている先生に有効な素材になっていると思います。なので、本書は踊りのハウツーではないです。ハウツーは、ダンススクールでも学べるので。そうではなくて、必修になったダンスっていうのをどういうふうに捉えればいいのか、「ダンスを教えなきゃ」って固くならずに力が抜けたり、「これだけ方法論ってあるじゃん」っていうポジティブな感覚が伝わるといいですね。

踊りが身近になっていくからこそ、それを好きになってほしいし、アウトプットの場の選択肢として振付業界を確立したい。そんな想いから出版された『振付稼業air:manの踊る教科書』。DVD付きで「ダンスとの向き合い方」を楽しく指南! 次回は、この本のポイントを杉谷さんに語ってもらいます!(安念美和子)

インタビュー1本目→  OK Goの最新MVを担当!教科書も出版!?今もっとも熱い振付ユニット、振付稼業air:manインタビュー(1)

インタビュー2本目→  振付業界の曖昧さに挑戦し続けて10年!振付稼業air:manインタビュー(2)

インタビュー3本目→  「ギャラは1人分、仕事の出来は人数の乗数倍」で作り上げた実績~振付稼業air:manインタビュー(3)

 

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『振付稼業air:manの踊る教科書』(¥2,160/東京書籍刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/448780796

 

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