トラちゃんと考える「SDGs」RETURNS!
\今年の猛暑にも負けず、青々とした稲が美しい!/
『SDGs』の目標達成に向かって、モデル・トラウデン直美が気になるテーマを深掘りするこの連載。今回は、スマート農業で米づくりに挑む中森農産を取材! 未来のごはんを守る方法とは?
将来、日本で米が食べられなくなる!?
—失われつつある水田は、ただの風景ではなくかけがえのない生産装置。
スーパーからお米が消えたり、コンビニでは〝備蓄米おにぎり〟が並んだり。そんな光景が連日ニュースになった2025年の夏。でも、その裏では照りつける日差しの中でも田んぼに立ち、次の季節に向けて汗を流す人たちがいました。私もコロナ禍をきっかけに、食や自然と向き合う時間が増え、畑にお邪魔して在来種の野菜を育てるように。昨年からはNHK『やさいの時間』という番組で、不耕起栽培や草生栽培など、自然の力を生かす農の知恵を学んでいます。収穫を控えた真夏の水田を歩いて感じたのは、おいしいほかほかの新米が食べられることが、どれだけ多くの手と時間に支えられているかということ。青くしなやかな稲のひと粒ひと粒に込められた思いや工夫を知ることで、日々の食事をもっと大事にしたくなる――そんな時間になりました。
◼︎今回取材したのは…『日本の米づくりを守りながらスマート×大規模農業で成長“中森農産”』
埼玉県加須市を拠点に、平均年齢30歳という若い世代が集う農業法人。スタッフの多くが異業種出身ながら、最新鋭の農機やDXを駆使し、米をはじめ小麦・大豆なども生産。4県にわたる約1,500か所の田畑を管理している。「農業がもたらす価値を最大化し、人々の食を守り抜く」をミッションに掲げ、働きがいと生産性を両立。シフト制で8時間労働・週休2日を実現し、さらに年収1,000万円を目指す新しい農業モデルを築いている。
▶︎今、お米がピンチ!? 知っておきたい稲作のリアルな数字
・市場価格が、5kg4,000円台に
2023年には5㎏あたり2,000円台だったお米の店頭平均価格が、2025年に4,000円台に達し、新米流通後も同水準で推移(10月現在)。背景には、猛暑による収量減少や生産・流通コストの上昇、供給不足への不安から起きた業者間の集荷競争などがある。
・毎年約2.5万haの農地が消えている…
日本では毎年、田畑を含む農地が約2万5千ha(ヘクタール)ずつ消失し、これは東京ドーム約5,300個分に相当。都市化による宅地などへの転用や後継者不在による休耕が主な原因で、生産地が失われれば、安定供給そのものに影響が及ぶ可能性も…!
・備蓄米、国保有分の6割を放出
政府は非常時用の備蓄米を大量に放出して需給を調整。ただし、一時的な効果にとどまり、根本には旧来の統計による需給ギャップの見落としや急増するインバウンド需要への対応遅れ、さらに農地減少や担い手不足といった構造的な課題が…。
田んぼから未来を耕す! 食の安心を、次の世代へ
\大規模農業で社員の年収1000万円も実現したいです/
/AIや自動化で負担を減らしつつ、やりがいも生まれるとは!\
お話をうかがったのは…【中森農産 代表取締役】中森 剛志さん
中森:そもそも日本では、大陸のような大規模で効率的な生産が難しいんです。国土は広い平地が少なく、南北に長い。四季の変化に加え、梅雨や台風もありますから。
トラ:暑さなど不確定な要素で、想定より収穫量が減ってしまうこともあるのでは?
中森:まさに2023年は記録的な猛暑で、農水省が後に「実は大凶作だった」と発表しました。世界でも「10万年に一度の異常気象」と言われるほど。それが3年連続で重なり、これまでの前提が通用しない時代に入っていますし、気候変動の影響を最も受けるのが農業です。
トラ:この先は担い手が減り、今を支える団塊世代の方々も引退していかれますよね。
中森:はい。三菱総合研究所の推計では2050年に農家の数が8割減る見通しです。さらに深刻なのが農地の減少。背景には減反政策の代償もありますが、毎年2・5万ha、僕らが手がける面積の約80倍が失われている状況です。
トラ:想像以上のスピードですね…!
中森:これは風景だけでなく、生産装置がなくなるということ。日本の米は今後、量的にも質的にも維持が難しくなる。稲作は食料安全保障の最前線なんです。
トラ:遠い話ではなく、お米が足りなくなれば私たちの生活に直結しますよね。
中森:そうなんです。例えば2040年代、日本の主食である米と麦の需給ギャップは現状比で200万トンに広がると予測されています。その頃、日本のGDP順位は20位台まで下がり、購買力も落ちる。世界的に穀物価格が高騰したら、日本は今のように簡単に輸入できず、外交上の立場も弱くなってしまいます。
トラ:食料の供給力を失えば、経済力の低下と同じくらいの危機を招く、と。
中森:国の安全を守るためにも、稲作をどう持続可能な形に変えていけるか。若い世代や新しい技術の力を、農業に取り込んでいくことが不可欠だと思っています。
トラ:現場ではどんな対策を?
中森:まずは、熟練した農家さんたちのノウハウを、デジタルで蓄積。日々の作業記録や気象データ、トラブルの対応策などもクラウド上に集約して、AIが解析できる仕組みを整えています。一般的なビジネスなら1年で何度もPDCAを回せますが、農業は1年で1サイクル。だからこそ、データを活かして成功と失敗の要因を共有することで、経験の浅い若手も早い段階で現場に立てるようになります。
トラ:テクノロジーの力で、若者が活躍できる職場をつくることができるんですね。
中森:社員の平均年齢は30代前半で、農業に将来性を感じて入社してくれる若者が増えました。僕らは「農業で年収1000万円を目指す」と公言しています。突飛な話に聞こえるかもしれませんが、自動化で生産性を上げれば充分に可能ですし、若い人に選ばれる仕事にしていきたいと思っています。
トラ:希望がありますね! 最近は海外でお米が人気とも聞きますが、明るい兆しになりますか? 私は父がドイツ人なのですが、欧州に行くとオーガニックがスタンダードになっていると感じます。
中森:おっしゃるとおりで、世界の穀物市場では「量より質」へと価値がシフトしています。特にオーガニック市場の拡大は目覚ましく、過去10年で約22兆円に成長しました。中でもオーガニック米の市場は約6000億円規模で、10年後には1兆円を超える見込み。ここに日本の米が入っていけるかどうかが、大きなわかれ道ですね。
トラ:海外の主食用米は安価なイメージがありますが、可能性はいかがでしょう?
中森:アジアの多くの国では、原価が1㎏あたり50円前後の米が主流です。価格だけを見れば競争になりませんが、日本が〝プレミアムブランド〟としての立ち位置を確立すれば、戦い方は変わります。安全性と品質にこだわる層が先進国で増えていて、EUでは「Farm to Fork(農場から食卓まで)」という戦略が進んでいます。これは一見、環境対策のようで、実態は見えない関税なんです。
トラ:EU基準に適応しなければ、輸出が難しくなるということですね。
中森:まさに、EUに続いて北米も同じ流れになりつつあります。日本がこの波に乗り遅れると、世界のプレミアムマーケットを半分失うことになりかねません。そのため、日本政府も「みどりの食料システム戦略」を掲げ、農地の有機比率を今の50倍に増やすという大胆な目標を立てました。国内では理想論と捉えられることもありますが、国際競争力をつける現実的な施策なんです。
トラ:中森農産さんでは、すでに有機栽培にも力を入れていますよね。
中森:現在、全体の20%ほどがオーガニックです。ただ、気候変動によって生態系が変わり、難しさも増しています。今年はイネカメムシが過去最大の被害を出しました。農薬に頼れない有機農法は、毎日が試行錯誤の連続です。
トラ:日常生活の中で、私たちが貢献できることは何かありますか?
中森:まずは、シンプルにお米を食べてもらうことですね。水田という仕組みは、自然の力を活かした恒久システムです。水を引き入れて、貯めて、ゆっくりと流す――この循環の中で土が還元され、病害の原因になる菌も自然と抑えられる。古代エジプトのナイル川が毎年氾濫して肥沃な土を運んだように、日本の水田も毎年リフレッシュされる。だから、何百年も同じ土地で米づくりが続けられるんです。
トラ:野菜のような連作障害が起きないのはすごいこと! 人類の文明そのもので、この文化を絶やしてはいけませんね。私も毎日、玄米をいただいています。
中森:もちろんパンもパスタもおいしいですが、日本で小麦や大豆をたくさんつくるのは難しい。一方でお米は、気候に合っている。たんぱく質が6%ほど含まれていて、冷めたごはんなら血糖値も上がりにくい。無理なく毎日取り入れられる食材です。
トラ:体にも地球にも優しい! 未来の自分につながる選択になりますね。
中森:若い皆さんが「食べることで応援する」という意識を持ってくれるだけで、僕らにとっては何よりの希望です。
田んぼを守るためにも気候変動対策は待ったなし!
\有機農法の雑草対策を助けるたのもしい除草機/
◼︎農業ビジネス成長の秘訣はサステナブルな工夫にあり!
▼農業用ドローンで大幅に効率UP!
中森農産では、長年受け継がれてきた農家の知恵に最新技術を掛け合わせ、持続可能な米づくりに挑んでいる。地域に眠っていた耕作放棄地を借りて再生し、4県に広く分散した水田をAIアプリで一元管理。少人数でもきめ細かな見回りが可能に。さらにドローンによる肥料や農薬散布を精密に行い、作業時間を短縮している。大型除草機などの導入で、難しい有機農法でも増産を実現。年商1億円を達成した稲作モデルに期待!
◼︎20~30代の若手が活躍!
▼未経験から就農した26歳の西村佑磨さん
トラちゃんと同世代の西村さんは、東京の商社から農業へ転身。自然や生き物が好きで「定年後に農業を」と考えていたものの、人の口に運ばれる食べ物を育てる仕事に魅力を感じて就農。初めて育てたそばの収穫では、「ゼロから形になる達成感に心打たれました」と笑顔で話す。体力的にハードな作業も「きついときほど『頑張れ自分!』と思える」と前向き。農作物が製品化されて社会に届くことに誇りを感じているのだとか。中森農産を選んだのは、「若い仲間の活気と熱意ある社長の存在」に惹かれたから。情報共有が活発でマニュアルも整い、1年目から学びやすい環境の中で、機械操作やデータ活用など日々成長を実感しているという。
取材をして…今月のトラの気づき
日本のおいしいお米は当たり前にあるものじゃない!
「お米の値上がりばかりが話題になる一方で、稲作そのものを続けられるのか、そんな本当の危機を実感しました。農家の方の経済性を守りながら、次のつくり手を育てていくこと。そして、猛暑の影響が年々深刻になる中で、気候変動対策が選挙の争点にならない日本の現状に、他人事ではいられないと強く思います」
■今回のSDGsブランド…BASICKS(ベイシックス)
デザイナーの森川マサノリ氏が設立したユニセックスブランドで、2025年7月には初のリアル店舗となる旗艦店が東京・表参道にオープン。ベーシックでありながら心に引っかかるデザインで、日常の装いに小さな違和感を忍ばせる。今季はユニフォーム要素をミックスした新作も登場。循環をテーマにオーガニック素材の生地を使用し、リサイクル素材も取り入れている。
目指せSDGs!トラの一歩
\住みよい街のヒントに!多文化共生が進む江戸川区/
「先日、「INTERNATIONAL SDGs FES in EDOGAWA 2025」に出演! トークショーでは〝日本に暮らす外国人との共生〟をテーマに意見を交わしました。江戸川区には多くの外国人が暮らしていて、行政の支援も整っているそうです。移民について社会には様々な意見がありますが、日本人にとっても日本に住む外国人にとっても、お互いに住みよい方法を探していきたいですね」









