トラウデン直美が話題のイマーシブ展覧会に!北斎が描いた江戸の風景から感じたこと【SDGs連載】

トラちゃんと考える「SDGs」RETURNS!

『SDGs』の目標達成に向かって、モデル・トラウデン直美が気になるテーマを深掘りするこの連載。今回は、伝統の浮世絵を未来につなぐ挑戦から、文化の保存と新しい産業の可能性を探りました。SDGsの目標「産業と技術革新の基盤をつくろう」に通じる、カルチャーとテクノロジーが響き合う豊かな発想に、今こそ目を向けてみよう!

環境省サステナビリティ・トラウデン直美/高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。SDGs関連の発信に力を入れ、『news23』(TBS系)、『NIKKEI NEWS NEXT』(BSテレ東)など報道番組にレギュラー出演、現場取材も務める。2024年4月にCanCam専属モデルを卒業後は、ドラマ、ラジオ他幅広い分野に活躍を広げている。

先端のテクノロジーで北斎が見た世界に全身で没入!

■今回訪れたのは…『HOKUSAI:ANOTHER STORY in TOKYO』

7つのゾーンで構成される、浮世絵の世界を全身で感じるイマーシブ展覧会。葛飾北斎の代表作『冨嶽三十六景』を軸に、映像・音・触覚を融合させた次世代型の体験空間が渋谷に誕生。世界的な名作から意外な一面まで、北斎を五感を通して味わえる。好評につき、会期延長予定。中島健人さんとコラボした「碧暦 New ExperienceMV体験も登場! 一般¥3,500※要予約

住所:東京都渋谷区道玄坂1-2-3 東急プラザ渋谷3F、HP:https://hokusai.anotherstory.world/
about 葛飾北斎
江戸時代に活躍した浮世絵師。庶民の暮らしや自然、動植物まで森羅万象を描き、生涯(1760年〜1849年)に残した作品は3万点を超えるともいわれる。代表作『冨嶽三十六景』をはじめ、数え90歳で亡くなる直前まで筆をとり続けた。その大胆な構図や色使いは、モネやセザンヌら数多くの海外の芸術家たちにも影響を与え、今なお世界に名を残す〝江戸の天才〟。

■江戸の浮世にタイムスリップ! 北斎と旅して感じた、今とこれから

2025年は、大河ドラマの影響もあって浮世絵が再注目。私自身、歴史番組出演を通して学ぶ機会が増えました。なかでも惹かれたのが、時代を超えて語り継がれる葛飾北斎。今回の体験取材では、北斎が見ていた江戸の風景を旅するように生き生きと体感できて、思わず胸が熱くなる場面も! 浮世絵は、当時の最先端技術を駆使した〝庶民の娯楽〟。カメラもなかった時代に、多くの人々の心を動かして流行を生んだ、その創意工夫と情熱を今の技術で受け継ぐそんなアートと産業の可能性をぜひ感じてみてください!」

新千円札の裏面にも採用され、きっと誰もが一度は目にしたことのある『神奈川沖浪裏』。これは北斎が70代のときに出版された風景画シリーズ『冨嶽三十六景』のひとつ。当初の36図が大ヒットし、のちに10図が追加されて全46図になったのだとか。鮮やかな色彩と量産性を両立する「錦絵」技法で、江戸時代の人々に広く親しまれた。今回の展示では、北斎の目にあの波はどう映っていたのか? そんな想像の世界を、超高精細の大型ディスプレイでリアルに再現。浮世絵で親しんできたはずの景色が、実はこんなにも荒々しかったとは…!

■浮世絵『冨嶽三十六景』は約200年前から続く日本の美

幅16m×高さ3mのLEDディスプレイと鏡に囲まれる、『北斎の部屋』。視界いっぱいに広がる波のうねりに、風と音、足元から響く振動が連動し、まるで絵の中に飛び込んだかのような感覚に! ディスプレイや演出には、最新の3DCGやソニーの風ハプティクス技術が用いられ、映像に合わせて風のタイミングや強弱を精密にコントロールすることで、様々な風の質感を表現している。海外では〝Great Wave〟として親しまれ、『モナ・リザ』と並ぶ知名度を誇る『神奈川沖浪裏』。その迫力と美しさが迫ってくる。

■かつて人々が馬を引いて歩いた木造の橋が出現

『駿州片倉茶園ノ不二』の他、4図を展開する「大地の部屋」ゾーン。茶畑で働く人々の様子を眺めながら、橋の上や水辺を歩くような感触が味わえる。歩行に合わせて床が振動するハプティクス技術によって、絵と地続きの世界を身体で感じられる。

「風の部屋」ゾーンでは、北斎が描いた〝風〟の世界へ。懐紙や笠が舞い、旅人たちは身をかがめる…『駿州江尻』が伝えるのは、吹きつける風そのものの存在感。翻弄される人々とは対照的に、富士は揺るぎなく静かにそびえている。

『礫川雪ノ旦』は、雪が積もり、池に氷が張る江戸・小石川の冬の朝。現代の東京ではなかなか出合えない風景を、「大地の部屋」ゾーンで、踏みしめる足元からたどってみよう。

\90歳まで駆け抜けた北斎の歴史も学べます/

■竹あかりのゆらめく光で江戸時代の楽しみ方を追体験♡

江戸時代のあかりは、部屋全体ではなく手元や一角をやわらかく照らすもの。そんな時代の光を再現した「竹あかり」の中で見る浮世絵は、凹凸や繊維の繊細な陰影による美しさが浮かび上がる。竹は伐採と整備で観光資源となり、使用後は竹炭や堆肥として再利用される循環型素材である点にも注目!

\和紙の繊維の1本本までリアルなマスターレプリカ/

エピローグの部屋では、原作品所蔵元の山梨県立博物館認定のマスターレプリカを、拡大鏡でじっくり観察。DTIP(三次元質感画像処理)の精緻な技術で、〝目で触る〟ような鑑賞体験に。

\当時の人たちの装いや生活まで鮮明に♪/

原画の多くは現代のB4サイズ程度。デジタルで拡大することで、表情、しぐさ、衣の動き、人々の息づかいまでもが感じられる。北斎が小さな版画に込めた躍動にワクワク!

進化し続けた北斎の知恵は、現代への創造のバトン

教えてくれたのは…ヴィジュアルアーティスト 猪口大樹さん

RED所属、本展では総合演出を担当。企業展示や広告映像、文化施設などの空間演出を多数手がける。これまでにない〝新しい体験〟を生み出すべく、表現・技術を日々探究している。

トラ:浮世絵というと伝統工芸のイメージがありますが、展示を通して知った北斎には、現代的な感性があって驚きの連続でした。

猪口:浮世絵は絵師・彫師・摺師が分業で仕上げる版画で、北斎はその全体を構成するアートディレクターのような存在でもありました。さらに、着物やテキスタイルの図案も手がけていて、今でいうマルチクリエイター的な一面も、ひとつの肩書きに収まらない多面性が魅力です。

トラ:70代のときに代表作『冨嶽三十六景』を描き、90歳まで創作を続けたとか。

猪口:技術革新にも柔軟でした。ベルリンブルー(ベロ藍)をいち早く取り入れ、摺の技術も研究していた記録があります。晩年は教育者としても活躍し、全国の弟子に向けて、構図や描き方の基本を教材にまとめて伝えていました。コンパスや定規などの道具を使った指南もあり、まさに通信教育の先駆けといえます。

トラ:技術力も発信力も高い、江戸のインフルエンサー! 海外への影響も大きいそうですね。

猪口:北斎の構図は再現性が高く、モネやセザンヌ、ゴッホら印象派の創作にもヒントを与え、近代絵画の礎になりました。きっかけのひとつは、鎖国中に輸出陶器の緩衝材として欧州へ渡った浮世絵でした。

トラ:日用品が逆輸入的に再評価されたと。

猪口:はい。当時の日本は寛政の改革による出版規制下、北斎は読本の挿絵や風景画に活路を見いだしました。特に富士講ブームに着目し、富士の絵をお土産として広めた。旅に出られない庶民にとって、観光ポスターやガイドブックのように旅気分を味わえる身近な娯楽だったんです。

トラ:旅好きの北斎が、現地の感動を共有していたのかな。受け手への想像力を感じます。

猪口:北斎が描いたのは、雄大な自然と傍らの人々の小さな営み。永続する自然の中で、儚くも健気に生きる人間が浮かび上がってきます。まなざしの温かさが伝わる部分ですね。

トラ:子供からお年寄りまで描き、限りある命のサイクルも感じます。それに、一見バラバラな動きが、全体としては調和している。北斎が円や線に込めた、自然の〝秩序〟があるというか。

猪口:北斎自身は飢饉や病の最中も筆をとり、「あと5年生きられたら、本物の絵描きになれるのに」と言い残して逝きました。まさに本質、自然の理を追求していたのではないかと。

トラ:そんな功績や文化を今の技術で継承する意義については、どうお考えですか?

猪口:今後は保存の観点から、原画を直接見られる機会は減っていく見込みです。まずはアートのハードルを下げて、気軽に楽しんでもらうこと。そして美術館で本物に触れるきっかけになれば。

トラ:江戸時代の浮世絵が担った役割に重なりますね! デジタルで改めて気づいた魅力も?

猪口:ディテールの緻密さです。摺り目すら意図的に使っていたとわかる。高精細な技術で得る新発見は、当時の最先端を探った北斎の進化にも通じます。私たちはようやく、その奥行きに追いつき始めた感覚でもあります。

トラ:技術って、ただ守るのではなく、今の感性で更新していくことなんですね。その姿勢こそが、受け継ぐということなのかも。

取材をして…今回のトラの気づき

現代にも通じる本質を描き出した北斎の視点と探究心

「時間やお金に追われがちな日常の中で、立ち止まって本質を見つめることの大切さに気づかされました。最新技術によって細部まで再現されたからこそ、そのまなざしの奥行きに触れられた気がします。時代を動かす存在でありながら、普遍的な美や感情に寄り添い続けた北斎に、会ってみたくなる時間でした!」

ジャケット¥45,000・ワンピース¥35,200(aloof home<aloof home>)、靴¥35,200(アイネックス<SHISEI>)、ピアス¥37,400(フラッパーズ<プラウ>)ネックレス[短]¥19,800(フーブス<IRIS47>)、ネックレス[長]¥22,000(ココシュニック<ココシュニック オンキッチュ>)、リング¥20,900(14 SHOWROOM<IT Átelier>)

目指せSDGs!トラの一歩

\金属も石も限りある資源! 長く大事に使い続けたい/

「アクセサリーは母のおさがりをよく使っています。プラチナやシルバーなど、時を超えて輝きを保つ素材。どんな年齢のファッションにもすっとなじむデザインで、重ねづけも楽しんでいます。時々磨きながら、長く使えるよう心がけることも大切に。想いごと受け継いだものだからこそ、人生を一緒に過ごして育てていきたいと思っています」

2025年CanCam7月号「トラちゃんと考える 私たちと『SDGs』RETURNS!」より 撮影/花村克彦 スタイリスト/伊藤舞子 ヘア&メイク/遊佐こころ モデル/トラウデン直美 構成/佐藤久美子 web構成/稲垣あすか ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。