漫画家望月ミネタロウ先生と女優・モデルとして活躍する菊池亜希子さんの、新刊発売記念対談第2回! 一見共通点がないように見えるふたりですが、実は菊池さんは10代のころからの望月作品ファンなんだそう。
★1回目はコチラ→ 【望月ミネタロウ『ちいさこべえ』×菊池亜希子ムック『マッシュ』発売記念】緊急対談(1)ふたりが語る制作秘話
菊池亜希子さん(以下、菊池) 望月先生の作品に出会ったのは、小学生のころ。近所のお兄ちゃんの家に『バタアシ金魚』(※1)があって、なんとなく手に取ったのが最初です。子供だったから、自分の思春期がまだ追いついてなくて、本当のストーリーは理解できていなかったと思いますけど……。
望月ミネタロウ先生(以下、望月) 描いていたほうも子供でしたよ(笑)。30年くらい前で、19歳か20歳のころ。遠い昔ですね……。
菊池 私が生まれたころに描かれた作品なんですね。中学、高校のときには『座敷女』(※2)や『ドラゴンヘッド』(※3)も読んでいました。『ドラゴンヘッド』は、リアルタイムで追いかけるくらいハマって読んでいた作品です。そして大人になって、なにげなく入った本屋さんで出会ったのが、『ちいさこべえ』でした。
望月 ひとりで本屋に行くんですか?
菊池 よく行きます。漫画はつねに探していて、『ちいさこべえ』は1巻が発売されて、すぐに読みました。表紙に描かれた、しかめっ面の女の人とヒゲもじゃの男の人が、塀の前で立っている日常的な風景に惹かれたんだと思います。先生の作品は、ホラーのイメージが強かったので、単純に「これはどういう作品なんだろう?」と思ったんですよね。1巻では、どういう方向の話なのかわからなかったんですが、ヒロインの“りつ”に共感することが多くて読み続けていました。りつって、口元に感情が出るんですよね。無表情なのにあごだけキュッとなるシーンを見て、あ、私に似ているって思いました(笑)。でも、りつがこういう顔になるのは、主人公の茂次さんだけなんですよね。いちばん理解したい人だからこそ、裏っ返しの顔になってしまう、そこが愛おしいなと思いました。
望月 『ちいさこべえ』は、原作が山本周五郎先生の時代小説なんですが、具体的な心情はそれほどつまびらかには書かれていません。それでも、登場人物たちの心情を想像させてくれるような文章表現で、漫画ではそこを表現できればいいなと思いながら描いていました。
菊池 茂次は髪もヒゲももじゃもじゃで、何を考えているのか読めないというところも魅力だったと思うのですが、あえて表情が見えない設定にしたんですか?
望月 小説の茂次は、男気があって竹を割ったような人間です。でも、現代物の漫画にするにあたって、それだと主人公に感情移入しにくかったんです。僕が描く茂次はナイーブな部分も表現したくて……そうしました。人ってマスクをすると安心じゃないですか、そんな感じです(笑)。