ダメだとわかっていても、既婚者を好きになってしまったり、友達や家族に言いにくいのに不倫関係をずるずると続けてしまったり…。「こんなはずじゃなかったのに」と思いながらも沼ってしまう“不倫”。そもそも人類はどうして不倫してしまうのか? 脳科学や認知科学の最先端の研究結果をわかりやすく紹介している中野信子さんに、科学的に考察してもらいました!
【Profile】1975年生まれ、東京都出身。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授として教壇に立ちつつ、研究や執筆活動に勤しむ。またテレビのコメンテーターとしても活躍中。科学的な観点から不倫について解き明かす著書『不倫』が好評発売中! 今回はその書籍から興味深い部分をピックアップ。詳しい内容が知りたい人は、ぜひこちらの本もチェック♡ ¥913/文藝新書
そもそも…一夫一婦制のライフスタイルがメジャーになったのは比較的最近!
「どんな婚姻形態が最も生存に適応的かを考え、人類は一夫一婦だけでなく、一夫多妻や共同婚など様々な形態を採用してきました。男女平等に基づく一夫一婦が日本に根付いたのは戦後以降。近代までは跡継ぎを残すことを優先し一夫多妻が推奨されたことも。
また人類の祖先は元々は一夫一婦制ではなく、なんらかのきっかけでつがいを作って共同生活するメリットが高まり、それをきっかけに一夫一婦制を取るケースが増えたのではないか…と考えられています」(中野さん・以下同)
先天的な特定の遺伝子が、不倫のしやすさに関わっている
「昨今の研究では、AVPR1Aやオキシトシン、ドーパミンの遺伝子には“貞淑型”“不倫型”が存在し、その割合はほぼ同数だと言われています。ここからわかるのは、人類の歴史には“不倫型”が子孫を残すのに有利だった過去があり、現在も“一夫一婦制度には向かない人”が一定数いるということ。不倫が絶えない理由のひとつには、つきつめると遺伝子の影響もありそうです」
後天的に形作られた“愛着スタイル”も浮気しやすさを左右
「他者との関わり方に関係し、オキシトシンの分泌量にも影響を及ぼす愛着スタイル。乳幼児期に養育者とどう愛着を形成したかで3種に分類され、研究結果から安定型以外は人と依存的・利己的な関係を築きやすい傾向があることがわかっています」
1. 安定型
他者と関係を築くのが上手く、一定のパートナーと安定的で継続的な関係を望む。
2. 回避型
距離を置いた対人関係を好み、自己中心的。愛情と性欲が乖離している場合も。
3. 不安型
見捨てられる不安が強く、セックスに依存しやすい。求められると弱く、女性に多い傾向。
周期的、反応的な男女の性ホルモンも、浮気心を左右しているかも!
「父親になった男性は性欲に関係するホルモン“テストステロン”が減りますが、単身赴任などで妻や子と接する機会が少ない男性はあまり減少しないことがわかっています。また排卵期にパートナーがいない女性は、一夜の過ちを犯しやすく、男性もそうした女性に惹きつけられるという研究結果もあり、ホルモンが浮気を後押しすることも」
不倫する理由まとめ
- 人類の歴史上、一夫一妻制が採用されるようになったのは比較的最近
- 「不倫型」の遺伝子を先天的に持つ人がいるといわれている
- 後天的に作られた“愛着スタイル”が影響する場合も
- 性ホルモンが浮気心を左右しているかも
どうして不倫をしてしまうのか、脳科学的な観点で考えてみると、遺伝子やホルモンが深く関係している場合もある様子。「彼氏が浮気常習犯で別れるか悩む…」「不倫をやめたいけれど、なかなか抜け出せない」と悩んでいる方は、ぜひ中野信子さんの著書『不倫』を読んでみてくださいね。
イラスト/芝 りさこ デザイン/岩見夏美(beeworks) 構成/衛藤理絵 Web構成/佐々木菜摘