長年化粧品ブランドの広報を勤め、定年後もその腕と人柄を買われ雑誌の連載や企業のコンサルとして活躍する、美容業界きっての伝説の人がおられます。
その名も鈴木ハル子さん。
美容やファッションへの見識だけでなく、立ち居振る舞いの美しさ、コミュニケーションスキルの高さ…どこをとっても、まさに女性の鏡。
そんな彼女が手がけた実用書『大人は「近目美人」より「遠目美人」』(講談社、本体1200円+税)が、美容本の域を超えて、働く女性の懐刀として最強!と評判です。
大人の美のキーワード『俯瞰力』についてお聞きしたインタビュー前編に続き、後編の今回は、外資系化粧品会社で勤め上げたキャリアを持つ鈴木さんに、仕事や人間関係についてうかがいました。尊敬すべき先輩のお仕事論は、仕事で悩む女性は必見です!
■SNS世代の部下とのコミュニケーションで大切な3つのこと
Woman Insight編集部(以下、WI) 鈴木さんは外資系化粧品会社で定年まで勤められたということですが、外資系という職場って、ある意味「ドライ」な印象があります。
鈴木ハル子さん(以下、ハル子) “年をとればとるほどドライになるのはよくない”というのは、母から教わったこと。日本で言う「ドライになる」というのは、物事への関心を失うことでもあって、それはある意味失礼なことなんですね。「ウエット」がいいわけではないけれど、みずみずしさ、興味を持つといった女性らしいコミュニケーションを大切にしてきたおかげで、自分は長く勤められたのだと思っています。
WI それは、具体的にはどういったコミュニケーションなんでしょうか?
鈴木 まずは笑顔。そして、ちょっとしたことに対する「ありがとう」や「すみません」をきちんと言うこと。「ごめんなさい」=自分が負けた、自分が悪いということと思われがちですが、本当は気づきが多い人ほど「自分が何かしちゃったのかな」と思うから、謝れるんです。気付かない人ほど自分が完璧だと思うから謝れないもの。あとは、パシッと「あなたと私は違う」というのではなく、どこかにかかわりを持とうとすることを大事にしていましたね。
WI Woman Insightの読者には、SNS世代と言われる部下とのコミュニケーションについて悩んでいる方が多いのですが、鈴木さんはどんな風にしてらっしゃいましたか?
鈴木 まずは部下のいいところを引き出して、私がそう思っていることを伝えること。いわゆるSNSでのコミュニケーションに慣れている子たちって、逆に面と向かった、目を見るコミュニケーションが苦手な人が多いんです。だからこちらがまず心を開いて、とっかかりとしてその人のいいところを引き出す。「私はあなたを認めています」と伝えることはとても大切です。そして、できそうだな、と思ったら権限委譲する。やってみさせて、若いうちから慣れさせます。
WI なるほど……!
鈴木 女性にありがちなのですが、優秀な人ほど人を信用できないので、なんでも自分でやろうとするんです。私は逆。優秀ではないからこそ、部下のいいところがよくわかります。自分にないところがあるな、と思うと権限委譲する。上司としてのミッションは、自分が優秀であることではなくて、部全体の生産性を上げること。だから、「あなたがやることが部全体を活性化させるんだよ」ということを身をもって感じてもらいます。
WI そうすると信頼もされて、距離も自然と近づきそうですね。
鈴木 あとは、絶対に感情的にならないこと。自分の機嫌がいい・悪いでものごとを左右するのは御法度です。そういうことがあるからウラを見られて絶対に信頼してもらえません。逆にそれさえなければ、自然と好かれると思います。
WI ちなみに、部下を叱ったことはありますか?
鈴木 もちろんあります。ただ、自分のことを優秀と思っていないので「私も自分に対して言っていることだから」ということは伝えるようにしています。「約束しようね、ちゃんと見ているからね」ということも。あくまでジョークっぽく、あんまり糾弾しないことです。白黒つけることだけがいいことじゃないので、ファジーな部分を残す。
WI そういうところが、人望が厚い理由なんですね。そうやって感情をコントロールするために、気をつけていることはありましたか?
鈴木 それがまさに「俯瞰力」です。常にもうひとりの自分がいる。よく部下にも言っていたのですが、人間関係を築くのはお家を建てるのと同じこと。積み上げるのは時間がかかるけれど、失敗したら一回で破壊されてしまうかもしれない。人間関係はそれだけもろいものだから、常日頃から気をつけるようにしていました。これはなかなか人に教えることができるものではないけれど、常に意識すること。そうすると自然にできるようになります。
「化粧品を扱っていても、常にそれを使う人の気持ちを考えていた」という鈴木さん。その人柄に惚れ込んだ編集者が満を持して作り上げた本は、働く女性なら誰しも胸に刺さるはず。ちょっと悩める時に手にとることをオススメします! (撮影/諸田梢)
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