2万円超でも売れるトースターはどう生まれた?「バルミューダ」の秘密に迫る

「BALMUDA The Toaster」という商品の名前を、聞いたことはあるでしょうか。

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最近おしゃれな人のブログやインスタでも見かけることが多いこのトースター。2万円を超える超高級トースターなのに、なんだか最近非常に売れ、超話題になっているのです。

前回の記事を要約すると、バルミューダの方に「一度食べたら間違いなくファンになりますよ」と、言われたため「本当か~?」と、そのトースターで焼いたパンを食べさせていただいたところ、まんまと「これ欲しい」とうめくようになったWoman Insight編集部スタッフ。

★前回はコチラ→ こんなの初めて…!話題の「バルミューダ」で焼いた食パンが異常にウマすぎる

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このチーズトーストが忘れられない……。

 

さて、バルミューダ製品は、トースターはもちろんですが、他の商品も、どれもよく考えられた素晴らしいものばかり。たとえば、自然の風を感じられる扇風機や、面倒な手間いらずで、上から水を注げばいい加湿器……そんな、「むしろ、どうして今まで存在しなかったんだろう?」という商品を、次々と世に送り出し続けています。

その開発の裏側について、バルミューダ株式会社 クリエイティブ企画室 室長の木下直子さんに、じっくりとうかがってみました。

 

Woman Insight編集部(以下、WI)バルミューダさんは、これまでになかったさまざまなアイディア家電を多数世に送り出していますが、いつもどのように商品を考えていらっしゃるんですか?

バルミューダ 木下直子さん(以下、木下)何かを使うときに、「本当はこうだったらいいな」と思いつつも、慣れてしまって意識しないでいる、ということってありますよね。トースターなら、パンは焼けてはいるものの、実はロールパンがちょっとこげちゃったり、ちょっとパサついたり……。そういう「別に使えているけど、なんだかなぁ」ということ、ありませんか?

 

WI ああ……! ものすごく思い当たります。

木下 それを、きちんと言語化して、「じゃあもっとこうしたらいいんじゃない?」ということを常に考えています。その上で、製品化するなら、それは本当に意味あるものなのか、既存のものにイノベーションを加えられる製品なのか……すごく検討しますね。

 

WI バルミューダさんの製品はデザインが素敵なのはもちろんですが、機能面も素晴らしいですよね。

木下 「デザイン家電」と呼ばれることがありますが、うちは外だけ付け替えてかっこいいものを出す、ということはしません。私たちは「クリエイティブとテクノロジーの会社」とうたわせていただいています。一からアイディアを考え抜いて、中の回路やソフトウェアをひとつひとつきちっと作り上げていく、というのがバルミューダの特徴かな、と思っています。

 

WI 実際、社員の方で技術に関わっているのはどのくらいの割合なのでしょうか?

木下 全社員50人のうち、半数の25名が技術者です。この規模の会社としては、技術者の割合がとても多いですね。いつも開発とデザインを同時進行しているのですが、技術の面で「ここは中にこういう線を入れるからもっと厚みがなければならない」と判明したらデザインを変える、というくらい技術にはこだわっています。

 

WI それはバルミューダさん独特の文化なのでしょうか?

木下 最後の最後まで、デザイナーと開発陣が伴走していく、というのは珍しいパターンですね。結構「最初にデザインを出しておしまい」という感じのところが多いようですが、うちは最後までデザイナーが開発に寄り添っていきます。デザイナーが大量にデザインを起こしたのに、結局今のところお蔵入りして商品化していないものも、山のようにあります。

 

WI 実際ひとつの製品が完成するまで、どのくらいの期間をかけているのですか?

木下 やると決めてから製品ができるまでは異常に速いので……どれも1年くらいですかね。でもその間にデザイナーが描くデザイン画は、2,000枚になります。

 

WI 2,000枚!?

木下 はい(笑)。どの製品も2~3か月かけて、相当練り上げます。その間に同時進行で開発を進めていくと、技術とデザインが「ここだ」と出会うポイントがあるんですよ。でも、一度これだと決めても、いややっぱりこっちだ、と揺り戻すことは、製品化までに何回も何回も納得いくまでやります。

 

WI 「BALMUDA The Toaster」を発売するまでは、空調を中心に力を入れてきたと思いますが、突然のキッチン家電への参入。ここで、トースターを開発しよう、と思った理由を教えてください。

木下 いくつかの流れがあったんですが、まず、前回お伝えした通り、代表の寺尾が毎日チーズトーストを食べているほど、無類のトースト好きなんです(笑)。特にチーズトーストには目がありません。

 

WI あっ!そこから始まったから、やたらピンポイントな「チーズトーストモード」が存在するんですね……!

木下 はい(笑)。「トーストモード」でチーズトーストが焼けるかっていわれたら、まぁ焼けます。でも、それは「最高のチーズトースト」ではありませんでした。上に具材が乗っているときは、そこに合わせて火を通すと下が焦げてしまうので、トーストモードとは制御を変えないといけないな……と開発段階で言い合うくらい、代表がチーズトーストが好きで(笑)。それをはじめとしたパンに関する思い入れがいくつかあり、やろうか、と。

 

WI そういう思い入れから始まる商品だからこそ、こだわりと強さを感じるのかもしれませんね。このトースターでは、「スチーム」がパンをおいしくするカギとなっていますが、そこに気づいたきっかけはなんでしょうか?

木下 会社でバーベキューをしたときに、開発陣がパンを持ってきて焼いたら、すごくおいしく焼けたんです。でもそれを再現しようと思って会社の裏庭で焼いてみても、なんだかうまくいかない。で、「そういえばバーベキューの日はどしゃぶりの雨の日だったね」というところにたどりつき、もしかしたら湿気がパンにおいしさをもたらすんじゃないか……と気づいて、そこからです。

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WI なんだかいろいろとドラマのような話が多いですね! 「キッチン家電」を開発するうえで、苦戦したことなどがあれば教えてください。

木下 これまでバルミューダが作っていた「空調家電」は、「空気」を取り扱っているので、目にも見えないですし、それ自体が主役ではありません。デザインも、買うときには「かっこいいな」と思っていただきつつも、基本的には白ベースで壁に同化してほしい、という意志を持ったデザインをしていました。そういった、存在を消すデザインのクセがついていたので、このトースターも、最初はオフィス機器のような……プリンターみたいになっちゃいました(笑)。

 

WI そんなことがあったんですね。

木下 そこで、あれ、おかしいな、と思って「キッチンにある家電ってなんだろう?」とすごく悩みました。そうしてイメージに出てきたのは、『魔女の宅急便』に出てくる、いかにもおいしそうなものが出てきそうな、かまどです。窓を小さくしてのぞきこみたくなるデザインにしてみたら、「あっ」としっくりきまして、この方向でデザインが決まりました。

 

WI いざ実際トースターを世に出してみて、驚いた反響などはありましたか?

木下 まず、反響が多いことそれ自体に驚きました! 「食べること」って、こんなにお客さんに響くものなんだな……と。私たちもどんどん楽しくなってきています(笑)。発売前に販路さんに「今度こんなトースターを出します」とプレゼンして、食べていただいた時点でまず喜んでもらえて。「どうしてこんなに喜んでくれるんだろう、すごいすごい!」と、もしかしてこのトースターは売れるんじゃないか……と思っていたら、ありがたくも……。

 

WI ものすごい大評判ですよね。さらに買った人自身が口コミでたくさん広めている、という図をすごく見かけます。

木下 そうなんです、一台持っている方が家にお客さんを招いてパーティしてくれたり、毎日このトースターで焼いたパンをインスタグラムなどにあげてくださる方がいたり……買ってくださった方が楽しんでいる様子を見ていると、すごいなぁ、と。

 

WI これからもキッチン家電は出していく予定ですか?

木下 そうですね。今もふたつみっつキッチン家電企画を並行して動いています。これからも、私たちなりの「おいしさ」を提供し、毎日が楽しくなって、生活の質がよくなるような製品を出していきたいな、しばらくキッチン分野で暴れさせていただこうかな、と思っています(笑)。

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「焼く機能」が素晴らしいのはもちろんですが、バルミューダが徹底的に考えているのは、「そうして出来上がったものが、その人の生活にどんな影響をもたらすか」。だからこそ、トースターが「ただパンを焼くもの」にとどまらず、「生活を豊かに、楽しくしてくれるもの」になったのではないでしょうか。

じゃあ、そんなバルミューダが今後、たとえば炊飯器を出すなら? 電子レンジを出すなら? いったいどんな、おいしい体験を提供してくれるのか……どんな風にキッチン家電分野で“暴れて”くれるのか、バルミューダの今後に、要注目です!(後藤香織)

バルミューダ 公式サイト http://www.balmuda.com/jp/

 

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