あなたは大丈夫?「隠れ睡眠負債」のサインに気をつけて!
日々の生活で「睡眠」は欠かせないものですが、日々の睡眠に悩みを感じている方も少なくないのではないでしょうか。また、在宅ワークによりこれまでとの生活習慣が変化。それに伴い睡眠時間にも変化が出ている人も少なくないはず。そこで、睡眠専門家・梶本修身先生に監修いただき、日本、アメリカ、中国、フランス、フィンランド計5カ国の20~60代の男女計1,000名を対象に睡眠事情に関する調査を実施しました。
睡眠負債とは
睡眠負債とは、睡眠時間の減少や質の低下で十分な睡眠が確保できず、慢性的な寝不足で疲れが蓄積した状態。放置すると作業効率の低下だけでなく、自律神経失調症、高血圧や糖尿病など生活習慣病の発症リスクを高めるほか、免疫力の低下を引き起こします。(睡眠専門家・梶本先生)
「隠れ睡眠負債」簡易チェックシート
睡眠専門家 梶本先生に自分では気づきにくい「睡眠負債」が溜まっていないかどうかを確かめる「隠れ睡眠負債」簡易チェックシートを作成いただきました。
1.ベッドに入ると5分以内に眠れる
2. 休日は2時間以上長く寝る
3.電車に乗るとすぐうたた寝する
4.起床4時間後にも眠気を感じる
5.夜中に2度以上起きてしまう
6.いびきをかきやすい
7.びっしょりと汗をかく
8.就寝前は極力、水分を控えている
9.寝室の照明を点灯したまま寝る
10.就寝時、寝室のエアコンを消す
みなさんはいくつチェックしましたか?実はこのチェックリスト、4個以上チェックがつくと「隠れ睡眠負債」の可能性が高いんです! チェックポイントに4個以上は「要注意」、8個以上は「危険」と考えられます。チェック数が多い方ほど、すぐに睡眠負債への対策が必要です。 この「隠れ睡眠負債」簡易チェックシートに関して、梶本先生に解説していただきました。
1.ベットに入ると5分以内に眠れる
ベッドに入ってから眠るまでの時間は平均10分程度。5分以内に眠ってしまうのは、「寝落ち」している可能性が高く、睡眠負債の可能性が高いです。入眠前の1時間、同じルーティンを過ごすことで安定した入眠へのプロセスが実現できます。
2.休日は2時間以上長く寝る
休日に2時間以上長く眠ってしまうのは、平日の睡眠が足りていない証拠。寝だめをすると生活のリズムが乱れ、翌週の睡眠に悪影響を及ぼすことになります。睡眠負債の返済には15分から30分程度の昼寝がベストです。
3.電車に乗るとすぐうたた寝する
すぐにうたた寝してしまうのは、睡眠負債で疲れがたまっている証拠です。また、午後4時過ぎの仮眠や帰りの電車での居眠りは、夜の睡眠を阻害する可能性があるので、注意が必要です。
4.起床4時間後にも眠気を感じる
起床後4時間経過した頃は覚醒レベルが最も高い時間帯です。その時刻に眠いのは睡眠が足りていない証拠。一方、起床後7時間経った頃に昼寝するのは自律神経の疲労を回復させるため、むしろ、夜の睡眠の質を高めると言われています。
5.夜中に2度以上起きてしまう
就寝中に何度も目が覚めてしまうことを中途覚醒と言います。まず、睡眠リズムや睡眠の質の低下を疑ったほうが良いでしょう。入浴や飲酒量、いびきや寝汗、寝室環境など睡眠の質を高める工夫で中途覚醒の回数が減少します。
6.いびきをかきやすい
いびきは酸素が不足するのを補おうと、自律神経がフル活動している状態。そのため、いびきは睡眠の質を悪化させる最大要因になります。横向きの姿勢で寝るとだいぶ改善されるので、抱き枕を使うといいでしょう。アロマディフューザーの香りとともに自然に目覚めると自律神経も疲れません。
7.びっしょりと汗をかく
寝汗をかくのは自律神経機能が疲弊し交感神経優位にあるか、睡眠中に最も休めなくてはいけない自律神経が体温調節を行っている証。せっかく疲れを回復しようとしているのに、かえって疲れることになりかねません。睡眠の質を悪化させ、睡眠負債を起こしやすいです。
8.就寝前は極力、水分を控えている
睡眠中、体内から300cc以上の尿が膀胱へ流出し、さらに200ccの不感蒸泄(ふかんじょうせつ)があるため、600ccの水分が体内から失われます。夜間に脱水を起こすと脳への酸素供給を行えず、自律神経の疲労回復は望めないです。就寝前のおすすめホットドリンクとしては、一般的にホットミルクやココア、ハーブティー、生姜湯などが代表的です。
9.寝室の照明を点灯したまま寝る
目や耳など感覚器は、危険を察知する重要な器官。瞼の上で光を感じると睡眠レベルが低下し、深い睡眠が困難となります。蛍光灯やLED電球などの白色照明、スマートフォンやパソコンのブルーライトには、睡眠の質を高めるメラトニンの分泌を抑えてしまう働きがあるため、夜間の室内照明は赤色っぽい電球色の間接照明にしたり、パソコンやスマホのブルーライトカット機能を使う方が良いでしょう。
10.就寝時、寝室のエアコンを消す
寒すぎても暑すぎても自律神経は酷使されます。寝室温度の目安は夏で温度25~26℃、湿度50~60%程度がオススメ。部屋は涼しくした上で厚めの布団で身体を温かくして頭寒足熱を心がけましょう。冬の寝室は室温20℃前後、湿度40~60%を目指しましょう。
絶対知っておきたい!睡眠負債を解消する7つの方法
コロナ禍で睡眠の質が下がっているという人も少なくないはず。そこで、睡眠負債を解消する正しい睡眠法を、睡眠専門家の梶本先生に教えていただきました!
1.「+1時間」睡眠、または「15分昼寝」
睡眠負債は、“寝だめ”で返済することはできません。負債を返済するには、睡眠時間を毎日少しずつ増やすことが大切です。まずは「30分早寝・30分遅起き」など睡眠時間を少しでも増やすよう工夫してみましょう。また、睡眠負債の返済には「15分昼寝」も効果的。ぐっすりと眠れるように、睡眠の質を高める工夫も有効です。
2.熟睡感のない方は、イミダペプチドを摂取しよう
睡眠の質を制御している自律神経が疲れると睡眠の質が悪化し、熟睡感が失われます。イミダペプチドは、鶏むね肉に豊富な抗疲労物質。イミダペプチドを鶏むね肉から摂取する場合は1日に100g。ただ、イミダペプチドは自律神経の疲労を軽減する作用。疲労を消す作用ではないため、継続して摂取することで自律神経の抗疲労効果を発揮するので、サプリメントドリンクとの併用がよいでしょう。効果が出るのは2週間後です。
3.いびきのある方は、まずは、スマホアプリを活用
いびきは、睡眠の質を悪化させる最大の要因。特に、無呼吸を合併するときは夜間突然死のリスクが高いだけでなく、生活習慣病、免疫力の低下等を引き起こします。いびきの有無をチェックするには、スマホのアプリを利用するのもよいでしょう。30分以上、断続していびきをかくようなら、専門のクリニックで簡易型PSG検査を受けましょう。
4.いびき・無呼吸のある方は、横向き寝がお勧め
仰向き寝を横向き寝に変えるだけで、8割の方のいびき・無呼吸が半減します。横向き寝に重要なアイテムは、枕。枕を買うとき、仰向けにフィットする枕を選ぶと、横を向いたときに嵩(かさ)が低くて、首が折れてしまいます。横向きで眠るには、肩幅の厚みがあり、首が折れない嵩(かさ)の高い枕が必須です。また、頭の重さは約5キロあるので、高反発の枕を使いましょう。また、横向寝を安定させるために、抱き枕を同時に使うことをお勧めします。
5.入浴は就寝の1時間前までに
睡眠の質を高めるには脳や内臓の温度である「深部体温」が重要です。就寝時は、組織の回復を図るため活動を最小限に抑えようと深部体温を下げます。つまり、深部体温が下がることで、質の高い深い睡眠が可能となるのです。そこで効果的なのが就寝の1時間前の入浴。入浴で深部体温を少し上げておくと、その後徐々に体温が下がっていくので入眠がスムーズになります。深部体温を少し上げるには、39℃~40℃のお湯に5~10分浸かるのがポイント。ただし、41℃以上の熱いお湯に長時間入って汗をかくのは厳禁。自律神経の疲弊は睡眠の質を低下させてしまうので注意が必要です。
6.スマホやパソコンの使用は就寝の1時間前までに
寝る前に映画や動画の視聴、SNSをされる方は多いですが、睡眠の質を高めるにはスマホやパソコンの使用は就寝の1時間前までには終わらせた方が良いでしょう。また、就寝中は天井照明の豆電球ですら睡眠の質を悪化させることがわかっています。真っ暗が苦手な方は足下照明がオススメです。
7.太陽光を浴びること
日中に太陽の光を浴びると、夜には睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が増えて自然と入眠態勢に入ることができます。テレワークでステイホームが続く方も、必ず1日1度は日光を浴びるように心がけましょう。特に日照時間の少ない冬は、午後の暖かい時間帯に散歩することをお勧めします。1日30分以内の散歩は、入眠をスムーズにします。また、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクを軽減させることが報告されているビタミンDも、太陽光を浴びることで、必要な量を体内で合成することができます。
入眠を妨げるのは、日ごろの睡眠時間やスマホなどの利用、そして太陽光を浴びることでなど、多岐に渡ることがわかりました。誤った生活習慣を改善することが、「睡眠負債」のに繋がります。少しずつ、そしてひとつずつ自分のペースで取り組んでみてはいかがでしょうか。
梶本修身 先生
東京疲労・睡眠クリニック院長。医師・医学博士。大阪外国語大学(大阪大学)保健管理センター准教授、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授等を歴任。産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」では統括責任者を務める。著書「すべての疲労は脳が原因Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」は累計20万部を突破するベストセラー。現在、「ホンマでっか!?TV」他、数多くのメディアで活躍中。