2020年秋冬、コロナ禍。20代で「今と全然違う仕事」に未経験転職ってできますか?転職のプロに聞いてみたら…

コロナ禍の今、自分の将来について考える時間も増えて「転職」を真剣に考える方も多いのではないでしょうか。

CanCam1月号では「20代の転職」について5ページにわたって特集していますが、CanCam.jpでは気になる「転職のプロ」たちが語る転職事情やコツを、もっと詳しくご紹介!

『マイナビ転職』『doda』『エン転職』の有名転職サイト3社の編集長、実際にエージェントで求職者と話す機会の多いキャリアカウンセラー、そして企業・求職者双方の事情を知り尽くすキャリアコンサルタントの5名に「結局、今の転職事情ってどうなってるの?」「自己PRって何言えばいいの?」「最初の会社はとりあえず3年勤めたほうがいい説ってホント?」など、転職について気になるアレコレをこれからたっぷりご紹介していきます。

 

この記事でお話をうかがったのは…『doda』編集長 喜多恭子さん、『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん、『エン転職』編集長 岡田康豊さん、『エン エージェント』キャリアパートナー 熊谷正志さん、一般社団法人国際キャリア・コンサルティング協会 代表理事 キャリアコンサルタント 長井亮さん

◆まずはじめに…2020年の求人事情って、どうなってるの?

2020年秋冬現在の求人事情は、各社とも「5月の緊急事態宣言の頃は昨年の50%まで求人数が減ったものの、秋にかけて例年の7〜8割程度までは回復してきた」ということで見解は共通。
ただし「経験者採用」は微減程度で戻ってきているものの、「未経験採用」はまだまだ去年に比べると大幅に減っているのは気をつけたいポイント。
また、業界によってもかなりの差があり、旅行・観光や飲食、アパレルはかなりの打撃を受け復調の兆しはまだ見えていません。一方で建設、医療・福祉、ITエンジニアなどはさほど影響を受けていない業種です。

◆じゃあ、いつ頃求人数は戻ってくるの?

こちらは見解が分かれており「徐々に採用数を例年通りに戻すという企業も出てきている(マイナビ転職)」「ゆるやかに戻ってきてはいるが、コロナ禍をきっかけに業務効率化をはかった企業もあり、昨年と同数の求人に戻ることはしばらくない(エン転職)」「コロナ以前に戻るには3年かかる(doda)」と、転職のプロたちでも「いつ求人が元通りになるか」を読むのは相当難しいようです。

一方でキャリアコンサルタントの長井亮さんは「新卒がうまくいかなかったときに第二新卒に行くのがセオリー」とのことで、若手層の採用についてこのように予測しています。

「来年の3月に大学を卒業する、いわゆる『2021卒』の採用が思い通りにいかなかった企業さんが多いです。すると4月に予定より人数が少ないままスタートするため『やっぱりもっと人が欲しい』と思うところが増えるはず。また、リーマンショックを経験した企業は、必要以上に慎重になり採用をストップしたものの、ふたを開けてみたら意外と業績が良いので、止めていた部分を採用したいと考えている企業もあります。
このまま情勢が悪化することがなければ、もちろん業界にもよりますが、来年の6〜7月くらいに若手層の採用が増えることが予想されます。そのため、転職を考えているならば、今は一度今いる場所で頑張ってみて、来年の春くらいから動き出すのが良いかもしれません」(長井さん)

◆じゃあ…もし「未経験で転職」をしたい場合、どうすればいいですか?

まず、数がこれまでよりも圧倒的に減っていて、厳しい状態になっている未経験採用。とはいえ現在の仕事をする中で違う仕事をしてみたいと思った、本当はこっちの仕事をずっとしたかったけどとりあえず新卒で採用されたのがここだった…など、さまざまな事情で「未経験転職」を希望する方は多いはず。
そこで「未経験転職をしたいとき、何をするべきか」と『doda』『マイナビ転職』『エン転職』の編集長に聞くと、共通するのは「まずは、自分をしっかり知ること」でした。

▼『doda』の見解:何かしら関係する経験を積む

「今、本当にまったく未経験のジャンルへ転職する門戸は非常に狭く、何かしら関係する経験が必要とされる傾向にあります。
たとえば『アパレルのマーケティングの仕事をしたい』と考えている方が、マーケティングの仕事自体は未経験だけれど、ずっとラグジュアリーなアパレルの仕事をしていて、そこのマーケット知識にすごく明るいということであれば、未経験転職は可能だと思います。何かひとつでも、ものすごくコミットして突き詰めた経験があり、それが転職先の仕事となんらかの関係性があれば、直接未経験であっても比較的転職はしやすいと思います。

この「何かしら関係する経験」がパッと思いつかない場合、今の会社でやりたい仕事に近いところに異動希望を出して経験を積んでから転職をする、というルートもあります。もしくは、実はあなたが気づいていないだけで近い仕事をしている可能性もあります。特に若手の方は自分の経験や強みを自分だけで見つけるのはなかなか難しいと思うので、一度転職サイトのサービスでもコーチング会社のサービスでも、キャリアカウンセリングを受け、第三者の力を借りながらキャリアの棚卸しをすることをおすすめします」(『doda』編集長 喜多恭子さん)

▼『マイナビ転職』の見解:あなたの経験は意外な分野に転用できるかも

「コロナ禍でどうしても仕事自体が減っている業種・職種があり、未経験転職を迫られる人もいます。たとえばずっと販売の仕事をしていた方が、本当はずっとその仕事をしたいけれど、事業縮小や店舗閉鎖に伴う人員削減などが起こり、転職をせざるを得ないケースなどです。この場合どうしようと思い悩む方も多いですが、この『販売のスキル』を持っている場合は、意外とまったく違う仕事に見える『個人向けの営業』に転用できる可能性もあります。なぜかというと『お客さんに対し、必要なものを売ること』という点において共通しているから。そのほか『営業事務』と『カスタマーサポート』も「社内の営業の方をフォローするか、お客さんをフォローするか」で、意外と近い要素があったりします。

見ている限り『未経験であっても、意外と求められている』ケースは皆さんが想像しているより多いものです。たとえば金融業界はホテリエ(ホテルマン・ホテルウーマン)経験者を求めているケースが結構あります。これはなぜかというと『とにかく、第一印象がしっかりしているから』。高額の金融商品を取り扱う営業担当者の第一印象がいいことは、実は信用にも直結していてかなり重要。金融商品の知識はわりとすぐに研修で身につけられますが、ホテルのフロントを長年経験していたことによる第一印象の良さや身だしなみ、清潔感などは一朝一夕に身に付くものではなく、貴重な人材です。
自分がやってきたことが他の業界に転用できることも、あなたが当たり前だと思っていたことが他の業界では求められていることもよくあります。幅は狭めすぎずにできるだけ広げたほうが、案外見つかると思いますよ」(『マイナビ転職』編集長 荻田泰夫さん)

▼『エン転職』の見解:「頑張ります」だけではなく「できること」を見せる

「自分自身が何ができるのかを冷静に見極めてください。例年に比べて未経験求人がかなり減っているため、ただ『頑張ります』という意欲だけでは難しい時代です。
『やりたい』だけでは仕事は務まりません。『できること』は何か。会社に自分自身が貢献できることを言語化してください。たとえば『私はこれができます。御社に入りたいのはこの仕事がしたいからです。ただ、現状だとこの分野の知識が足りないので、カバーするべく勉強しています』などと伝えれば、ただ『頑張ります』と言うよりもかなり印象はいいはずです。

その上で、人事が納得するようなストーリーがあると面接を通過しやすくなると思います。難しく考えすぎず、なんでもいいんです。たとえば販売から事務に転職したいときに、ただ単に『事務の仕事をやってみたい』『立ち仕事が疲れたので座れる仕事がしたい』ではNG。たとえば『事務の実務経験はありませんが、Excelのマクロを勉強しています。将来的にはマネジメントをやりたいと思っているので、社内の有志のプロジェクトを立ち上げ、さまざまな社員と関わりコミュニケーションを取っています』などであれば、事務の仕事自体は未経験であっても、納得がいくし採用にもつながりやすくなるはずです」(『エン転職』編集長 岡田康豊さん)

いずれにしても、転職の際は「今、自分ができること」「やりたいこと」などをしっかりと考えて整理する必要があるようです。
次回はこの「転職する前に、きちんと考えるべきこと」をご紹介します。

構成/後藤香織