SNSで見ず知らずの人を誹謗中傷している人の心理
多くの人がさまざまな情報を知るうえで便利なSNS。でも、その中にはデマや心ない誹謗・中傷も散りばめられています。面と向かってなら普通言えないような意見であるはずなのに、どうしてSNS上だと言えてしまうのでしょう。
そこで今回は、「なんでSNSで見ず知らずの人を誹謗中傷するのか?」その心理をご紹介いたします。
■SNSゆえの没個性化現象が攻撃性を引き起こす
SNSでは一人一人が匿名であるがため、誰かを傷つけることへの心理的なハードルが下がり、行動への責任感が低下してしまいがちです。これを心理学では、没個性化現象と呼びます。
そして、そのように没個性化した状況では、人は攻撃的になるという心理実験の結果があります。これが心理学者のジンバルドの実験です。被験者に対して電気ショックを与えるという実験で、顔が隠れる実験服を着たグループと名札をつけたグループに分け、匿名性と電気ショックを与える時間について調べたところ、顔が隠れて匿名性が確保されていたグループは、そうでなかったグループよりも2倍ほどの時間、電気ショックを与えていました。
このように匿名性が担保されていると、人は攻撃的になってしまうのです。
■SNSをフラストレーションのはけ口にしている
心理学者ミラーとダラードは、フラストレーション攻撃仮説を提唱しました。この仮説によると、人は欲求不満状態に陥るほど攻撃行動を起こしてしまいやすくなります。そして、フラストレーションが大きければ大きいほど、攻撃性は強くなるのです。
日常生活の中では、直接怒りを爆発させるのは難しいもの。そうなると攻撃の形態が変化したり、攻撃の対象が変わったりしてしまう傾向が強くあらわれてしまいます。特に、SNSのように陰で他者の悪口を言える状況では、批判されて当然だと思える相手をターゲットにして攻撃してしまう結果に。そのため、フラストレーションのはけ口としてSNSを利用し、他者を誹謗中傷してしまうのです。
■安易な同調現象が起こりやすい
SNSの世界は誰が何を発言したか分からないため、責任の所在が曖昧な環境です。匿名だからこそ、何を言ってもとがめられないと思っている人も少なくありません。中でも多いのが、あの有名人もこんなことを言っている、偉い人がRTしていたから自分もという同調心理です。自分固有の発言に責任を持たず、誰か権威のある人の言葉を借りるのは楽なことです。
また、大多数が発言しているなら、赤信号みんなで渡れば怖くないという同調が起こり、誰かが傷つくことを想像できずに投稿してしまいがちです。そのような責任逃れの安心感が、他者に対する誹謗中傷を生んでしまうのです。
■他者が誹謗中傷されていても傍観する側になってしまう
事件や誹謗中傷を目撃するなどして、本来傷つけられている人を援助すべき状況であると認識しているにも関わらず、自分以外の傍観者が大勢いることで行動が抑制されるという集団心理を、傍観者効果と言います。
この効果の有名な事件として、キティ・ジェノヴィーズ事件があります。これは1964年にニューヨークで起こった殺人事件です。被害者のキティが、帰宅途中に前科のある男性に殺害されました。事件発生当時、被害者の叫び声を38人もの近隣住民が聞いて目撃していたのにも関わらず、誰も被害者を助けず警察にも通報しなかったことが明らかになりました。
この事件はSNSの場とよく似ています。SNSのように傍観者が大勢いる環境では、本来ストップがかかるはずの行動が抑止されなくなってしまうため、誹謗中傷が横行する結果になってしまいやすいのです。
SNSと違って実生活では、名前も立場も知られていますよね。それが、見えない規制になって安易な誹謗中傷を慎もうという心理になります。しかしSNS上では誰がどのようなことを発言しているかは、知るよしもありません。そのため、責任を問われないから何を言ってもOKだとカン違いをしてしまうのです。でもそんな発想でいると、いつか加害者になってしまう可能性も。自分の発信したことで誰かが傷つくかもしれない…… そんな危惧感を持ち言葉に責任を持ちたいものですね。
(脇田尚揮)
認定心理士。Ameba公式No.1占い師として雑誌やTVなどに取り上げられ、現在テレビ東京「なないろ日和」にてレギュラーコーナー担当。また、自身が監修したアプリ 「マル見え心理テスト」はTBS 「王様のブランチ」 などでも紹介され、120万DL。著書『生まれた日はすべてを知っている。』(河出 書房新社)。