flumpoolの「聴いてほしいけど聴いてほしくない」曲とは?NEWアルバム独占インタビュー

flumpoolの「聴いてほしいけど聴いてほしくない」曲とは?NEWアルバム独占インタビュー


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flumpoolの4年ぶりのNEWアルバム『Real』が5/20に発売されました。

インタビュー前編では、このアルバムに込めた決意や、バンドのこれまでを振り返って思うことを伺いました。続く今回のインタビュー後編では、アルバムの楽曲それぞれに関する初出し裏話や、新アルバムをひっさげてのツアーについて、ヴォーカル・ギターの山村隆太さんにお話を伺います!

 

アルバム制作中の雰囲気は


編集部 アルバム制作にあたっては、自分たちの目を背けたい部分とも向き合ったというお話を前回伺いましたが、制作中のメンバーの皆さんはやはりシリアスな雰囲気だったんでしょうか。

山村 割と和やかだったと思いますよ。長いこと一緒にやってきた中で、お互い譲り合えるようになってきたと思います。僕自身、昔は自分の作りたいものからちょっとでもずれると嫌だったけど、今はメンバーとの意見の違いが楽しいと思えるようになってきて。最近では役割分担というか、各々が思い入れの強い部分をそれぞれ任せ合うような形になってきてますね。

僕は歌詞とかメッセージの部分を考えるのが好きだけど、見せ方の部分、視覚的な面はまったくわからないので、そこはベースの(尼川)元気に任せてて。作曲面では、メンバーみんな(阪井)一生の音楽的な才能を信じてるし。(小倉)誠司は……まあ彼は……猫好きなんで、猫関連担当で(笑)。

編集部 (笑)

山村 何にせよ、それぞれ自分の好きなことやったほうがええやろ、好きな人が好きなこと貫いてくれたほうが尖ったものになるやろっていうふうになってきましたね。好きな気持ちをもとに作ったほうが、たとえ間違ってても鋭いものができると思うので。

それは、CanCam.jp読者の方も一緒だと思います。自分の熱意を向けてるもの、例えば服やコスメが好きなら、その分野では他の人には思いつかないようなことを思いつく想像力や決断力が生まれるはず。僕は本当にファッションに疎いので、何が正解かわかんなくて、中途半端に流行りを取り入れてみて、カメレオンみたいに自分の色がない感じになってしまうことがよくあるんですけど、自分の好きな分野だったらそうならずに、自分の色をしっかり持てる。好きな色を貫ける強さに叶うものはないと思います。

 

実体験を反映した曲


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『Real』ジャケット

編集部 ここからは、アルバム収録曲について伺っていきます。実体験を基にしているのかなと感じる歌詞がいくつかあったんですが、いかがでしょう。

山村 そうですね、今回特に実体験をベースにしたものが多くて、今までで一番恥ずかしいですね。

編集部 恥ずかしいんですか?(笑)

山村 そうですね、なんかこう、聴いてほしいけど聴かないでって気持ちが湧くというか。これまでのキャリアの中で、いろんな歌詞の書き方を試したんですよ。実体験を基にするやり方、完全なフィクションとして書くやり方、本や映画にインスパイアされるやり方とか。結局僕は意図しなくても自分の体験が滲み出てきちゃうんですけど、今回は特にそれが濃くて。

編集部 例えば『ほうれん草のソテー』なんかは友達との思い出が詰まっているのかなと思いました。

山村 『ほうれん草のソテー』は、同窓会に行ったときに感じる寂しさに対して、音楽で抵抗できないかなと思って作った曲です。歳を重ねていくと、なかなか昔みたいにフラットに話せなくなるんですよね。結婚した人もいれば会社を興した人もいて、失業したり、離婚したり、それぞれの人生が分岐していく。特に男ってこう、比べがちじゃないですか。社会的な立ち位置というか。

編集部 仕事がうまくいっていない人はあまり同窓会に来なくなってしまったり。

山村 そうですね。僕だって活動休止中は、正直行くのが億劫でした。そういうふうに中学生や高校生の頃みたいに深夜にファミレスで駄弁ってた自分たちがどんどん薄れていくのが嫌で、あの頃の気持ちを忘れないように歌にした感じですね。

編集部 もう1つ、実体験が色濃く出た曲となるとどれでしょうか。

山村 『初めて愛をくれた人』ですね。これは両親のことを歌っているんですけど、これまでなかなか両親に対するストレートな気持ちを歌うってことをしてこなかったので、いやあ、照れくさいですね。でも、虐待事件のニュースなんかを見聞きするたびに思うんですが、今の世の中では親が子を愛するのは決して当たり前のことじゃないと思うんです。自分は恵まれてたんだなってことを再確認して感謝できたのはよかったと思います。

やっぱり照れくさいですけどね。反面、『虹の傘』なんかはベースの元気がLINEで送ってくれたコンセプトを基にしているので、気恥ずかしさなしで書けたんです。だからそっちを重点的に聴いてほしいです!(笑)

 

対になった2曲


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編集部 このアルバムで最初にできたのはどの曲だったんでしょうか?

山村 『ディスカス』ですね。一番できるまでに時間がかかった曲でもあります。それくらい熱がこもった曲で。一生から「とにかくエロい歌詞を書いてくれ」とオーダーを受けて書いた曲なんです。そういう曲をやってこなかったので、かなり苦戦しました。

編集部 自然な大人の色気を感じる曲だったので、苦戦したというのは意外でした。

山村 いやあ、かなり難しかったですよ。僕ももう35歳になるので、今更ちょっと色っぽい曲にチャレンジして失敗したら、イタいおじさんになりかねないなと。僕はむっつりスケベな方なので、言葉にして表現するのは抵抗があって。こんなん嫌われるんちゃうかな?って不安でしたね(笑) 。今さら下ネタで嫌われたくないですからね。そんなん一番ダサいですよ(笑)。

編集部 程よい色っぽさになっていると思いますよ(笑)。 続いて『不透明人間』について伺います。こちらはタイトルが印象的ですが。

山村 なんというか、透明になってしまいたい、消えてしまいたいって思うときって誰しもあると思うんです。僕らも傷跡や悩み、カッコ悪い部分なんて人に見せたくないっていう思いが強かったと思うけど、活動休止のときに学んだことが大きかったんです。やっぱり傷を見せなきゃ周りの人は救ってくれないんですよね。弱さを見せるべきときにはちゃんと見せて、誇れるものにしたいなって。弱さを隠して透明になってしまうよりも、自分の不透明さをさらけ出していける明日が来るといいなと思って書いた曲です。

編集部 傷跡をさらけ出すというメッセージは、『勲章』の歌詞にも見られますね。対になっている曲という感じなんでしょうか?

山村 言われて今気づきました。そうかも知れないですね。『不透明人間』は暗い部屋でスマホを見ながら何かを探してるイメージで、1人で自分の弱さと向き合っている曲。対して『勲章』は自分が仲間に囲まれていることを励みにして弱さに向き合っていこうという曲で、個人的なものと周りに目を向けたものでテーマは共通しているかもしれません。

 

ツアーに向けて


編集部 7月からはツアーが控えています。4年ぶりのアルバムを引っさげてのツアーで、思い入れもひとしおだと思いますが。

山村 まだ世の中の状況的にどうなるかって感じですが、僕ら自身4年間待ち望んだツアー、ファンの皆さんの熱量も相当なものだと思います。でも、アルバムタイトルの『Real』の通り、変に身構えず、今のありのままの姿でステージに立ちたいと思ってます。なんというか、なかなか100点のライブってできないんですよ。ライブに限らないことだと思いますけど、物事って0か100かの両極端ばかりじゃない。間の60点くらいの自分をいかに楽しめるか、というのは今回のアルバムの制作中も考えていたことだし、今後も大事にしたいです。

世の中的なことを言えば、この先新型コロナウイルスが落ち着いても、まったく元通りにはならないと思うんですよ。仮にほとんど以前と変わらないくらい元通りになったとしても、人々の価値観は確実にあれを体験する前と後で変わってる。自分自身がどう変わっていくのか、世の中の人がどう変わっていくのか、音楽を作る上でも影響は必ずあると思うので、意識していきたいです。

 

flumpoolの4年ぶりのNEWアルバム『Real』は5/20(水)発売!

10回目のアニバーサリーツアー「flumpool 10th Tour 2020『Real』」は7月11日(土)からスタートです。

取材・文/渡辺雅史

【flumpool】
NEWアルバム『Real』と4年ぶりのツアーに関しては、公式サイトをチェック!

 

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