頑張る女子が、男よりもマラソンにハマる理由【キラキラOLのはずが飛び込み営業に】Vol.3

フルマラソンに挑戦


二股かけられた松也を忘れるために、その後は別の人とつきあったり、しばらく同棲したりもしたけれど、どれもいまひとつ熱が入らなかった。やっぱり、イヤなことから救ってくれるのは、新しい男の存在より、何も考えず汗を流して筋肉を動かすこと。

ジムでのトレーニングも何年か続けてきて、全身にいい感じに筋肉がついてきた。ただ、「もうすぐ30 歳」と思うと、このままトレーニングを続けるだけじゃなく、「新しい何かをしたい」。そんなときに会社の先輩から誘われたのが、フルマラソン大会参加だった。

 

「絶対ムリムリって思って、しばらく断ってました。でも、マラソンをやっている人たちは、私から見たらふだんの仕事面でも、人としても、尊敬できる人たちばかりだった。なにごとも最後までやり遂げるし、筋が通っているし、仕事のクオリティも高い。そんな人に近づけるなら、私もやってみようかな」

 

会社の仲間と練習を始め、初めての大会はそれから6か月後だった。

「スタート時点では少し力が入っていたけど、ちょっとたったら、あれ、意外と走れる! そして楽しい! 42キロの間、棄権は一度も頭をよぎらず、5時間ジャストで完走しました。初めてにしてはいいほうらしいです。もちろん大変でしたけど、ゴールしたときの快感というか、感動がスゴかった。そのとき思ったのは、練習はもちろんだけど、それ以上に大事なのは “気持ち”だということ。やるって言ったからには、絶対にやる。ゴールがあるからには、そこに到達してやる。その強い“気持ち”が、走る自分を後押ししてくれたのです」

男と別れるときにもあまり涙が出なくなってしまった桜子が、ゴールしたときはうれしくて大泣きした。自分のやり方は、仕事もマラソンも、気力を振り絞ってとことんくらいつくこと。それをやらない限り、満足観も感動も得られないのだと、わかった。

その様子を見ていた仲間が次に桜子を誘ったのは、半年後にある千葉でのトライアスロン大会だった。

 

「今の自分なら、できるかも。トライアスロン」

30歳の誕生日直前、桜子は大会出場を決めた。

 

Vol.4「31歳、がむしゃらはカッコ悪い?」に続く

 

文/南 ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

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