自分が知っている先輩ではなくなっているのに、それでも変わらずに好きでいるかのん。変わってしまった先輩に驚く一方で、その後の「高月さんはかわいいね」の一言で忘れてしまう単純さに、思わず切なさを感じます。
自分が好きだった人間が変わっていっても、そのまま好きでいることはできるのでしょうか。考えさせられます。
ですが、どんなに変わっていく先輩を好きでい続けることができても、この恋は諦めなければいけません。世界を救う英雄で、変わっていく先輩は、他の女の人のモノ。そう、先輩には奥さんがいるのです。
前に告白した時は、1ミリくらいは可能性を期待しないでもなかったけれど、今はそんな、見返りみたいなのは、おこがましいと考えるかのん。「間近で先輩を見れるだけで贅沢」だと思ってしまう、そんな切ない恋、読んでいて、胸が痛くなります。
この人を好きでいたら不幸になる。わかっているのに、どうしようもなくずっと好き。
読み進めていくうちに、かのんに対して、ストーカーだ、気持ち悪いと嫌悪感を感じるものの、そこの部分に魅力を感じていきます。それは、自分の中にもそういう部分があるからなのでしょうか。
他人といると、自分が浮いているのを思い知らされるから嫌。だから先輩だけを考えていきたい。
その時だけは幸せでいられる……。誰もが持つ不安や孤独な気持ちは、時として恋のパワーになるのです。
ただ、その幸せを望むことで、かのんは「罰」を受けることになります。1巻の最後のページには、思わず声をあげて驚くはず。
先輩との恋を望んでしまうのは、罰なのでしょうか。
近著に新雑誌「Maybe!」の巻頭カラー書き下ろし小説『魔法のからだ』を寄稿し、『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんも大絶賛しているこの作品。
村田さんは単行本の帯で「『恋』ほど無垢な異常はない。」と本作への思いをよせていました。
かのんの一途な恋の果てはどうなるのでしょうか、目が離せません。(かすみ まりな)
『あげくの果てのカノン / 1』
著/米代恭 596円税込(小学館)
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