Woman Insight編集部(以下、WI) バンドの夢を持って上京した緑ですが……菊池さんにも胸にいだいた夢はありましたか?
菊池亜希子(以下、菊池) 私は、子供の頃から何かを作ったりとか、自分でイメージしてそれを絵に描いたりすることに燃えているタイプで、物だけではなくて、何かイベントや文化祭をやるとか、それに向けて作り上げていくのが好きなタイプだったんですね。だから「将来の夢はこれです」ってあまりなくて……。中学生の時に“建築家になってみたいな”って思ったのが最初に抱いた夢かな?
WI 建築家が最初の夢だったとは、ちょっと意外です。
菊池 高校で建築学科に進みながら、モデルの仕事も始めたんです。でも、(このふたつは)全然違うようで、けっこうリンクしているんです。モデルの仕事で“人がそこでどういうふうに、活き活きと生きていくか”という風に思いながら雑誌の撮影をして、学校に戻って“課題をこなす”みたいな、相乗効果があったんです。結局は、建築の道に進まずに、モデルやお芝居を選んだんですけど……。
WI 驚きましたが、なるほどと思いました。
菊池 すごく大きな夢を掲げていたというよりも、そのとき、そのときで今自分ができることをしていた感じです。たぶん自分は恵まれているんだと思います。モデルをやりながら“自分の言葉で文章を書きたいな”と思ったタイミングで連載の話をいただいたり、一歩ずつ自分のやりたいことが広がって、今があって……。大きな夢がない分、すごく緩やかに自分のやりたいことが実現していると思います。
WI 大きな夢も、小さな夢も、夢が叶うことに変わらないですものね。
菊池 でも、夢を実現するのは、ときどきしんどい時もあって、切羽詰まってきたりするとプレッシャーに押しつぶされそうになって“やりたいけど”と“やりたい”のせめぎ合いで。「あー。全部、手離したい!」って気持ちになるときもあって (笑) 。「もういいです。私降ります」って思ってしまうこともある。でも、そこを超えるとちょっとだけいい景色が待っているというのが、分かっているから(笑)。
WI 「いい景色が待っている」いい言葉ですね(笑)。
菊池 分かりやすく言うと、連載とかをやっていると毎回校了や締め切りに追われて、それが辛い。でも、それを読みたいと思ってくれている人がいて……。編集長に「絶対に終わらない締め切りはない。終わらせられるのは、自分しかいない。確実に3日後には終わっているから」って励まされるんです。そして終わったときの“たまらない開放感”。いつも、その繰り返しですね。でも「やめちゃったらどうなるんだろう」とも思うんですけどね(笑)。