しんのすけ@今月のMOVIEコレミトコ!
TikTokの映画レビューでバズりまくりのアニキ・しんのすけさんがイチオシの映画をナビ☆
紹介してくれたのは…
Q. もし自分が監督をするとしたら、撮ってみたい映画のジャンルは?
A. SFアクション映画を撮ってみたいです!
今月の映画は『隣のステラ』
STORY
餡蜜による人気コミックを実写化。千明(福本莉子)と昴(八木勇征)は、隣同士に住む、仲のよい幼なじみだったが、昴が芸能事務所にスカウトされたことからふたりの関係は一変する。人気俳優になっても今までと変わらない昴に対し、千明は幼い頃から抱いていた恋心を止められず、ついに昴に告白ー。倉 悠貴、横田真悠、西垣 匠、田鍋梨々花なども出演。
好きになっちゃダメな人ほど好きになるよね
もし、自分の大好きな幼なじみが、ある日突然〝有名人〟になってしまったら? あなたは変わらず、同じ気持ちでいられるだろうか? 映画『隣のステラ』は、この切なくて繊細な問いかけから始まる、夏にぴったりの青春恋愛映画です。しかも今年の夏に公開される純粋なラブストーリーは驚くほど少ない! 恋愛映画を観たい人にとって、この作品はまさに〝今、観るべき1本〟です。
今作が描くのは、ただの幼なじみの恋ではありません。普通の高校生活を送る千明と、モデルや俳優として注目を集める昴。立場の違いによって、少しずつ「隣にいること」が難しくなっていくリアルな葛藤を映し出します。
千明は、隣にいたはずの昴がどんどん遠くへ行ってしまうようなさみしさに戸惑います。一方の昴も、有名になることで〝幼なじみとの関係すら許されない〟ような現実に直面し、気持ちが追いつかないままもがき続けます。恋って、自分のことだけでは決められない。相手の未来を思えば思うほど、言葉にできない距離が生まれてしまう。そんな切なさが胸を打ちます。
ふたりの間には、子供の頃に交わした約束がありました。けれど、その約束はいつしかふたりを縛るものになっていきます。ずっと一緒にいられると思っていた距離が、現実の中で少しずつくずれていく。大切な人だからこそ、気軽に会えない。会わないほうが相手のためになるかもしれない。地球から見れば隣同士の星も、実際は何光年も離れている。そんな切なさが、星空のメタファーとともに美しく描かれています。
『隣のステラ』が、いわゆる〝青春恋愛映画〟と一線を画す最大の理由は、松本花奈監督による映像演出の妙にあります。感情を説明しすぎず、セリフで語らせすぎず、空気や距離感、視線や手の動きで恋心のゆらぎを丁寧に描いていきます。夜景や星空、教室の光、ふたりきりの静かなシーン。そのひとつひとつがまるで絵画のように美しく、胸に残ります。テレビドラマ的な平坦な照明ではなく、映画ならではの光と影、構図がしっかり効いていて、登場人物の心情に寄り添いながらも、観客の心までじんわり染みてきます。「多くを語らない」演出の力強さを、改めて感じさせてくれる一本です。
今まで私は福本莉子さん出演映画を何本も観てきましたが今作は、間違いなく〝史上最もかわいい〟福本莉子だと断言します。まっすぐで、一途で、でも他人を優先してしまう千明の姿を、表情だけで見せる繊細な演技に心をつかまれ、千明の役が見事に本人とシンクロ。それを引き出した監督の手腕も見事でした。
2025年の夏、恋愛映画を観るならこの1本。静かでまぶしい、星空のような純愛が、きっとあなたの心にも残るはずです。
構成/小山恵子 WEB構成/久保 葵