世界で大雨が増えている今、〝防災地下神殿〟に潜入!
モデル・トラウデン直美が、『SDGs』の目標達成に向かって気になる問題に迫る人気連載が帰ってきました! 記念すべき復活初回は、洪水を防ぐために建設された世界最大級の地下放水路を体験取材。
2024年、ゲリラ豪雨や大型台風が増えていると感じませんか? 実際、世界中で水害が相次いでいますが、その背景にあるのは、気候変動の影響。温暖化で大気中の水分量が増え、極端な降水が頻発しているのだとか。さらに人口増加に伴い、2050年には20億人が洪水の危機にさらされると予測。首都圏では、東京のベッドタウンである埼玉県の中川・綾瀬川流域が特に水害リスクの高い地域として知られています。
洪水の不安が高まる中、私たちの身近ではどんな対策が取られているのか気になりますよね。そこで今回は、埼玉県春日部市の地底50mにある首都圏外郭放水路、通称『地下神殿』へ! まるで映画に出てくるような巨大な排水施設が、どのように人々の暮らしを守っているのか、現地に足を運んで確かめてきました。
今回訪れたのは…首都圏外郭放水路
日本が誇る最先端の土木技術を結集して建設された、世界最大級の水害防災施設。全長約6.3㎞のトンネルや巨大な貯水槽を備え、大雨や台風時に中小河川の氾濫を防いで首都圏を守る。平常時にはほぼ毎日見学会を実施(有料)。映画やMVのロケ地にも活用されている。
よりよい明日を目指して不定期連載でカムバック!
「CanCam専属モデルを卒業してから早5か月…新たに挑戦した報道番組での取材や農園での活動で、自然の変化や社会の現実がより身近になっています。そんな中、3年半続けたSDGs連載での学びが、どれだけ自分の軸となっているか実感しました。実は、卒業してもなんとかこの連載を続けたくて、思い切って直談判しちゃったんです(笑)。
SDGsはただの流行語ではなく、私たち一人ひとりの幸せに関わる未来の課題。不定期ではありますが、今日より一歩前に進めるようまたみなさんと一緒に学んでいけたらうれしいです!」byトラウデン直美
いよいよ世界最大級の地下放水路へ
水が流れ込む「第1立坑」は深さ約70m、なんとNYの自由の女神がすっぽり入る大きさ!
頭脳となる「操作室」で働く首都圏の守り人
教えてくれたのは…
■操作室ではゲート開閉やポンプの運転を監視&コントロール
トラ 圧巻の防災地下神殿でした! つくられた背景にはどんな課題があったのでしょうか?
宮嵜 首都圏外郭放水路は、埼玉県春日部市に位置しています。この地域は、荒川と江戸川に挟まれた低地で、まるで「お皿」のように水が溜まりやすい地形です。元々河川の勾配がゆるやかで水が流れにくいこともあり、洪水が頻発していました。高度経済成長期以降、急速に都市化が進んで人口や資産が集中する一方で、土地の開発により水を吸収する力が低下。水害がさらに増加しました。そこで、1983年に「中川・綾瀬川流域整備計画」が策定され、その一環として首都圏外郭放水路を建設することに。2002年から稼働を開始し、大きな効果を発揮しています。
トラ 都市化が進む中での水害リスクは、現代においてもますます重要な課題だと思います。同様の施設は他にもあるのでしょうか?
宮嵜 実は、地下に広大な空間を設けて水を貯め、ポンプでリアルタイムに排水するというシステムは世界的にも珍しいものです。東京の「神田川・環状七号線地下調節池」など、一時的に水を貯めて最大流量を減少させる施設は他にもありますが、首都圏外郭放水路はそれに加えて、流域外の大きな江戸川へ排水する機能もあります。
■各河川の水位や雨量も24時間チェック!
集中豪雨が30年で1.4倍! 流域治水で取り組む
トラ 特に工夫されたことはありますか?
宮嵜 市街化が進んだ地域では地上の用地取得が困難で、従来のオープン水路では、地域の分断や管理の複雑さなど課題が山積みでした。そこで、国道16号の地下を利用する、トンネル方式を採用。これによって早期に事業を進めることができ、地域への影響も最小限に抑えられました。
トラ まちに暮らす人々の生活や農地を守りつつ、洪水対策を実現できたんですね! 実際、水害はどのくらい改善されたのでしょうか?
宮嵜 毎年平均約7回稼動し、部分開通から18年間の浸水被害軽減効果は1484億円と試算しています。例えば、東日本を襲った2019年の台風19号の際には、流域に降った雨の約3割を大きな河川である江戸川へ排水。これは東京ドーム約10杯分に相当し、同等の降雨量があった1982年の洪水と比べて、浸水家屋の数を約9割も減らせたんです。
トラ すごい! 中川や綾瀬川は東京の江戸川区や葛飾区、足立区にも流れ込む河川。首都圏のインフラや住宅を守るにも、この施設の存在が大きいんですね。
宮嵜 こうした成果をもとに、春日部市では「水害に強い都市基盤」をPRして企業誘致を推進。物流倉庫やショッピングセンターなどが新設され、進出企業からも好評です。
トラ 適切なインフラ整備は、地域の発展にも影響するんですね。防災の最前線で、気候変動についてはどのように感じていらっしゃいますか?
宮嵜 最近は特に、集中豪雨が頻発。1時間に50㎜以上の強い雨が降る短時間強雨は、過去30年で約1.4倍に増えました。さらに、森林の減少や都市化で土地の保水力が低下し、降った雨が一気に河川に流れ込み、氾濫が起こりやすくなっています。
トラ 環境が変化する中、持続可能なまちづくりに大事なことはありますか?
宮嵜 「流域治水」への転換でしょうか。河川や下水道の管理者だけでなく、企業や住民の方々も流域全体で協力して治水に取り組む社会の構築が求められています。
トラ 水害軽減には土地利用や都市計画、森林管理の他、家庭でも浸水予防や避難計画の準備が必要になるんですね。
宮嵜 はい。都市部で高層マンションにお住まいでも、停電や断水のリスクがあります。実際に電気系統の設備が浸水してエレベーターや上下水道などの機能がマヒした例もあり、水や食料、非常用トイレといった日頃からの備えがあると安心です。
トラ 私も自治体のハザードマップや避難ルート、備蓄を定期的にチェックするようにしています。今日の見学会では子供たちがたくさん参加していて、防災意識の高まりを感じました。
宮嵜 防災教育を兼ねて、全国から高校生も修学旅行で見学に来ていますね。また、建設や環境関連の業界関係者の他、水害の多い東南アジアからの視察団も訪れています。国内外からの関心が高まり、水害対策の重要性やこの施設の役割について理解を深めていただくことで、さらなる防災の発展につながると期待しています。
■見学で学べる首都圏外郭放水路のメカニズムや重要性
■模型で治水のしくみもわかりやすくチェック!
今月のトラの気づき:大人も子供も自分の目で見て体感することで防災意識UP
「徳川家康も水害対策に苦労したという関東の地。洪水リスクと治水対策を知り、巨大施設が満水になる光景を想像すると、防災意識も現実味を帯びます。豪雨時に出動する職員の方々への感謝と共に、こうした取り組みに充分な予算が確保される国であってほしいと強く感じました」byトラウデン直美
目指せSDGs! トラの一歩
■取材で、ウクライナの元兵士の方にお話をうかがいました
戦争で兄を失い、自身も銃弾で生死を彷徨った方。普段は朗らかで優しい彼の強い言葉に、戦争が憎しみを再生産する現実を痛感し、どうすれば争いを止められるか考えています。
■番組『やさいの時間』でお野菜を育てています♡
美味しくできたり、失敗したりと試行錯誤しながら、畑について勉強中。自然の恵みをいただく中では、虫食いも共存の一部。人間として自然に恩返ししていきたいな。
今月のSDGsブランド「G-Star RAW」
1989年設立、オランダ・アムステルダム発のデニムブランド。リサイクル素材やオーガニックコットンを使用し、さらに、水の使用量を大幅に削減する綿花の温室栽培技術や、化学物質を使わない染色法を導入。デニムブランドとして世界で初めて、厳格なグローバル環境認証「Cradle to Cradleゴールド」を取得。
トラちゃんと考えるSDGsはまだまだ続く!
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