この道40年の美容ジャーナリストが、整形や美容施術を肯定する理由。【天野佳代子連載vol.1】

美容ジャーナリストとしてカリスマ的人気を誇る天野佳代子さんが、ご自身の経験を元にCanCam世代のもやもやしたお悩みにキッパリ明快、そして愛情たっぷりにお答えいただく連載「モヤってる羊たちへ 晴れ間はこっち」がスタートします!

「奇跡の67歳」というキャッチコピーで知られる天野さんは、常に美しさをアップデートし続けているひと。と同時に、深い美容の知識を武器にキャリアを切り拓き続けてきた、働く女性としての大先輩でもあります。そんな天野さん、実は美容ライターとしてデビューしたての20代の頃、雑誌『CanCam』でお仕事されていたというご縁も。天野さんからCanCam世代へ、心に響く金言をこれからたっぷりお届けしていきます。

天野佳代子
1957年東京都生まれの美容ジャーナリスト。『美的』創刊メンバー、『美的GRAND』初代編集長を経て、現在はフリージャーナリストとして様々な美容媒体などで活動。YouTubeチャンネル『天野佳代子の大人美容』で提案する親近感ある美容法も、公開するたび話題に! 著書『何歳からでも美肌になれる!』(小学館)は重版を続ける大ベストセラー。そしてこのたび5年ぶりとなる書籍『10年前より可愛くなる 大人美容の正解』(主婦の友社)が9月30日に発売予定。撮影(顔写真)/藤井マルセル(t.cube)

 

「クマを取る整形」、リスクを引き受ける覚悟はある?

【今回のお悩み】
クマが昔からコンプレックスで、クマを取る整形も考えています。10年、20年後の支障は本当にないのでしょうか? (23歳・会社員)

 

「クマを取る整形」ですか。この世にそんな美容医療があるなんて知りませんでした。

目の下のクマは血行不良によって生じるものなのですが、手術はどんな方法が施されるのでしょうか。目の下の血管にカテーテルかなんかを入れて血管を広げて血液の流れを良好にして、クマをなくすとか? 血管をいじるとなると『ブラックペアン』の天城ドクターにお願いすべき案件になりますね。想像するだけでも恐ろしいです。


申し遅れました。皆様はじめまして。美容ジャーナリストの天野佳代子です。

私が何者なのかはプロフィール欄をご覧ください。年齢は67歳です。読者の皆様のご両親よりもたぶんうんと年上です。20代の頃、CanCamにて美容ライターデビューをして以来、小学館の媒体でお仕事をさせていただいています。40年以上美容ページの記者をやりながら、他にもいろいろなことをやってきて、プライベートもいろいろあって、自分で言うのもなんですが、 人生経験は豊かを超えて分厚い。

だから迷える若者よ、なんでも聞いてください、私の経験を元によきと思われる方向を見出していきましょう、という主旨でスタートした連載です。


そして連載第1回目の質問は「クマ悩み」。

わかります。私も10代から40代までは目の下のクマに悩んでいました。目の下だけではなくまぶたもくすんでいたので、目周り全体が真っ黒気味。進学したデザイン学校時代(18歳当時)は男子学生にパンダと呼ばれていました。かわいいからそう呼ばれていると信じていたので、それが悪口だと知ったときは怒りで3時間くらい男子らを呪っていました。


だから「クマ消し」とか「クマカバー」のワードには敏感で、様々な雑誌で紹介されている方法を片っ端から実践。失敗を繰り返しながら、当時まだ珍しかったコンシーラーに救われます。メイクアップアーティストの嶋田ちあきさんの教えにより、キャンメイクのイエローのスティックコンシーラー(現在廃盤)で茶グマがキレイにカバーできたのです。今はコンシーラーの種類も豊富だし、クマがいとも簡単に消えるコスメは本当に探しやすい。

天野の目元黒歴史。21歳当時。目の下のクマだけではなく、まぶたまでくすんでいた時期。 当時の彼からファンデーション禁止令が出ていたため、メイクでカバーできずにクマはむき出し状態。


ちなみに私がクマに悩んでいたのがなぜ10代〜40代なのかと言うと、40代以降は脂肪のたまりとシワが発生、そちらのほうが顕著になってしまい、クマがすっかり目立たなくなったからです。これは全然いいことではなくて、脂肪のたまりとシワのほうが老け見えが増幅するので、今思うとクマがあった時代が恋しい。クマは皮膚が薄くて浮き出てくるものだから、クマが目立っている人を見ると、「皮膚が薄いんだなあ、若いんだなあ」と羨ましくもなります。


質問者の悩みに戻ります。

彼女はクマをメイクでカバーするのではなく、整形でなんとかしたいと希望されている。具体的な手術法を明記されていないので、想像で目の下の血管を広げる手術か? と冒頭に書きましたが、多分この方が受けたい施術は、目の下にたまった脂肪を除去する、いわゆる「脱脂」と呼ばれる方法と推測します。目の周りにある眼輪筋の衰えにより、眼輪筋と皮膚の間に脂肪が流れ込み、目の下がぷっくり膨らむことで生まれる目の下のたるみ。このたるみの線が影になって、クマを発生させていると考えられます。私は逆に脂肪のおかげでクマが解消されたクチなのですが。症例はいろいろあるんだなあと思います。


血行不良によるクマと、たるみによって生じるクマは対処の方法がまるで違います。

血行不良によるクマはメイクでカバーできますが、ひどいたるみによって生じるクマはメイクでは解消できません。これは手術が最善だと思えます。私の周りでも実際に手術した人は何人もいます。ただし、次なる悩みも発生します。脂肪がなくなった分、皮膚のしぼみが生じるのです。つまりシワです。新たに生まれたシワを改善させるために化粧品でシワケアを行うとか、お金がある人は定期的にヒアルロン酸注入をしてシワをふっくらさせるとか、脂肪除去はやったらやったで次なる対策が必須。これは脂肪除去だけではなく、どんな美容施術にも言えることです。決して一度では終わらない。

天野の目元黒歴史、PART2。5年前の62歳同時。脂肪のたまりと同時にシワも出現。脂肪を除去するとさらにシワが発生する恐れがあるので、現状維持のままスキンケアで目元ケアに勤しむ日々。

 

今流行りのハイフもリジュランも糸リフトも、定期的に繰り返さないと、思い描く理想の顔は維持できません。何が言いたいかと言うと、整形手術や美容施術は覚悟をもってしてね、ということ。例えば質問者の目の下の脂肪量は非常に少なくて、除去後のしぼみもシワも出なかったとしても、加齢と共に脂肪はまた少しずつたまっていきます。老化は美容施術をした肌でさえ、容赦なく追い越していくからです。
それを理解した上での施術であればよいと思います。私は日々のスキンケアこそが肌を育てるという理念の元で美容を発信していますが、整形や施術も肯定派です。だって、施術で悩みが消えてコンプレックスがなくなるなんて、素晴らしいことだから。自分にも自信がついて、生活も向上するでしょう。ただ、何度も繰り返しますが、一度の施術で生涯若さを保てることはない。もちろん失敗のリスクもある。だから覚悟が必要。


最後に質問者に逆質問。あなたのクマは、本当に脂肪によってできているものですか? もしそうだとしても、脂肪のたまりが少量なのであればコンシーラーでカバーできるので、しばらくはメイクでカバーしてみませんか。そしてなるべく脂肪がたまらないように、眼輪筋を鍛える運動(目をぐるぐる回すなど)をするのも手。
脱脂法はメスを入れる外科手術なので、信頼すべき医療機関にお願いすべきものです。もちろんお金もかかる。じっくり考えた末の覚悟と、大きな資金の準備ができるまで、カバーできる方法をあれこれトライしてみてください。(天野佳代子)

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イラスト/ヨシダナツミ