もう何年も前の話だけど、なんだか妙に忘れられない出会いの話がある。
ものすごく印象的だったとか、イヤな思い出だったとか。「あんまりリアルタイムの話をするのは良くないなぁ」と思っていたけれど、何年も経った今振り返ると、なんだか他人事のようで笑えたり、学びになることがある。
そんな「時効」になった婚活話に迫ります。
今回お話を聞いたのは、はるかさん(32歳・仮名)。
「アプリで出会った彼…Aさんと呼びますね。Aさんは、出身県が同じということで、メッセージをやりとりし始めた当時から気が合いました」
日々なんでもないことをやりとりし、「会ってもいいかも」と思ったのも自然な流れ。
Aさんが探してくれたお店で初めて会ったときも、前からの知り合いだったかのように話も盛り上がり「いい人だな」という印象が強くありました。
でも、とある問題から合わない点が少しずつ出始めました。
Aさんは、いくらなんでも「LINEの返事が早すぎた」のです。
予定を決めるときなどはわりと早めに連絡をするようにしているそうですが、それ以外のなんでもない話をするときのはるかさんは、メッセージのやりとりが得意ではなく、LINEの返事がそこまで早くありません。多いときで朝の通勤・昼休み・帰宅中・寝る前などに1回ずつ、忙しいときには1日に1回くらいのペースで返事をすることが多いそう。
一方で、はるかさんからLINEを送ると、何時に送ってもたいていAさんから5分以内には返事が来ました。
「なんでもない話でLINEがずっと続くのが苦手で…。すぐ返事すると、また向こうからすぐ返事が来て、やりとりがずっと続いてしまって、終わりにするときは何か理由をつけなければいけないほうが面倒で。通知が来ても既読をつけず、しばらく未読スルーをしてしまうことがありました。会えば楽しいんです。でも、頻繁に連絡するのがどうしても苦手なんです」
そんなある日、Aさんから不穏な通知が来ました。
「僕と連絡を取るのがイヤだったらもう連絡しません」
といった内容でした。
非常に仕事が忙しい時期にこの連絡を受け取ったはるかさんは、どう返事をしていいかわかりませんでした。
「Aさんに連絡を取るのがイヤ」ではなく、「誰に対しても頻繁に連絡することが苦手で、どんどん面倒になってしまう」なのです。けれど、仕事で疲れ切った頭では、そのニュアンスを勘違いされずに相手を傷つけずに伝えられる言葉を探せず、一旦こんな連絡をしました。
「すみません、連絡を取るのがイヤなわけではないんですが、もともとLINEが得意ではないので、返事が遅くなってしまうんです。最近とっても忙しくて、今も仕事の帰りで、頭がうまく働いていないので、また返事しますね」
しかし。
さらに運悪く、はるかさんはそこから2日休日出勤をし、ここまでの無理がたたって体調を崩して丸一日寝込んで休み、次の日はそれを取り返すべく終電まで働く、という4日間が続きました。
Aさんからまたメッセージがやってきたのは、終電まで働いた日の、帰りの電車の中でした。
「僕は連絡が取りたいので、一度今後のスタンスを確認させてください」
はるかさんの頭には「私にはもう何もできない」という言葉が思い浮かびました。そして、「自分のスタンス」を上手に説明する言葉を考えることができませんでした。
「体調も悪くて、仕事も忙しくて、終電で。もうオブラートに包んだ返事ができなくて、『返事ができていなくてごめんなさい、言い訳のようですが、最近仕事が本当に忙しくて、今も終電の中で、余裕がありません。あなたが望むことに応えられません、本当にごめんなさい』といったことを、送ってしまいました。…でも、とてもすっきりしました」
帰宅し、メイクを落とし、ざっとシャワーを浴びた深夜1時過ぎ。
今にも寝落ちしそうなタイミングでスマホを開くと、Aさんから「はるかさんとは将来を考えたいと思っていたので、意見を聞きたかっただけなんです」というLINEがちょうどやってきました。
「そう言われると、こちらも真剣に考えて返事をしないと、と思って、気軽に返せませんでした。会えば居心地がよかったので…。でも今は疲れているし、夜はネガティブになってしまう癖があるので、朝すっきりした頭で考えよう、と。気づいたら眠っていて、朝になっていました」
朝7時半。いつもの時間にはるかさんが目を覚ますと、Aさんからはもう1通、LINEが入っていました。
はるかさんが起きる、3分前の連絡でした。
「あまりしつこくしても迷惑をかけてしまうので、ブロックしておきますね。それでは」
行き場のないモヤモヤに、朝から襲われました。
「確かに、大事な連絡で既読スルーに思われるような行動をした私が悪かったと思います。でも、深夜1時に送ったLINEに、朝7時半に返事がなくてブロックするって、しかも将来を考えたいと言ってくれていたのにそこから6時間半でブロックって、不思議だなと…。ただ、きっともし返事をしていても、いつか合わなくなっただろうな、と思ったので、後悔はありません。この件を境に、メッセージのやりとりがそんなに得意ではなくて返事が遅くなりやすいことを、ある程度のタイミングで先に伝えるようになりました。得意になれればいいんですが、なかなか難しいですね…」
- 「連絡の頻度」はすれ違いが起きがち。希望の頻度があまりに違うときはどこかですり合わせを
- ただし、相手が多忙なタイミングは避ける
- 深夜1時に送ったLINEの返事はせめて昼まで待とう
- 「会うと楽しいけど、連絡は頻繁じゃなくていい」は存在する