「あの、鳥貴族とか…行きますか?」お洒落メンズと会話迷子になった【時効婚活レポ vol.3】

もう何年も前の話だけど、なんだか妙に忘れられない出会いの話がある。
ものすごく印象的だったとか、イヤな思い出だったとか。「あんまりリアルタイムの話をするのは良くないなぁ」と思っていたけれど、何年も経った今振り返ると、なんだか他人事のようで笑えたり、学びになることがある。
そんな「時効」になった婚活話に迫ります。

今回お話を聞いたのは、ゆきさん(30歳・仮名)。

「友達が、もしかしたら合うかも、と紹介してくれたところから始まりました」


紹介してくれたのは、ゆきさんの大学時代の友達Aさん。飲みながら「そろそろ彼氏がほしい」という話をしていたら「同僚に、あんたと合いそうな人がいる」と紹介してくれることになりました。初回は、Aさん、Aさんの夫(Aさんと社内結婚)、そして紹介してもらったBくんの4人で飲むことに。

「ある男性アイドルがずっと好きなんですが、当時は今ほど“推し活”がまだ一般的じゃなかった頃。アイドル好きなことは最初は隠しておこう…と思っていましたが、私がアイドル好きなことをAちゃんがバラしてしまい、お酒の勢いも手伝って、ついうっかり推し活で全国を回っている話をしてしまいました」

勢いに乗って話しきってしまったときには後の祭り。「あ、引かれるな」と思っていましたが…。

「なんと『こういう話が聞きたかったんだよ!』とBくんがノリノリで、本当にびっくりしました」

男性に趣味の話をすると、たいてい引かれてきたAさんは、「あ、この人いいかも…」とときめいてしまいました。
会が終わったあとに、友達Aさんも「あんなに楽しそうなBくん初めて見た!」と言うほどだったそう。自然と、ゆきさんとBくんは2人で飲む約束を取り付けました。

しかし、そううまくはいきません。


2人での待ち合わせの日。
Bくんが探して予約してくれたお店はとてもおしゃれで、朝からドキドキしていました。

「けれど、会社を出る直前に上司に呼び止められてしまい、待ち合わせ時間に少し遅れてしまいそうになったんです」

直接お店に集合にしていたので、外に立たせたまま…ということは回避できるものの、わかった瞬間に「少し遅れてしまうかもしれません」と一報を入れると、Bくんからはすぐに「了解!」と連絡が来ました。

当初8分ほど遅れそうだったのが、急ぎ足で向かって少し早まり、とはいえ5分遅れで店に到着。
予約名を告げ、席に着いた瞬間「遅くなってすみません」と謝るつもりで席に行くと…

「そこにBくんはいませんでした」

確かにさっき「了解!」と返事が来たので、日取りを間違ったなどではありません。そもそも予約してくれたのはBくんで、席は用意されています。「どういうこと??」と思いつつ、「着きました〜」とひとまず連絡。けれど既読にならず、さらにゆきさんは混乱。ひとまずメニューを3周ほど眺め、頼みたいメニューを決めても、それでもBくんは来ません。

もう一度連絡してみようとLINEを開いたところで、「あ、ども〜」と、まったく悪びれずにBくんはやってきました。
待ち合わせ時間から、10分以上が経過していました。

「私も遅れたので人のことは言えないんですが、遅れてごめんなどの言葉は一切なし。悪びれずに、何飲む〜? と。私はわりと無断で遅刻する人が苦手なので、違和感があって」

話しているうちに、前回のときは感じなかったズレを感じ始めました。

「Bくんが普段行く店。着る服、聴く音楽、読む本、観る映画。休日にしていること、交友関係。趣味。何を聞いても、あまりにハイカルチャーというか、お洒落すぎるんです

アイドル好きなAさんは、土日は推しグループのライブに駆けつけ、残りの日は友達とごはんか、家でまったり。推し活にお金を使っているので、普段行くお店はそこまで高いところではなく、服もプチプラでかわいいものを賢く探しています。一方でBくんは、“いいもの”を知り尽くしていて、しっかり稼いでいるエンジニアでもあるので、好きなものにたっぷりとお金を使っています。

住む世界が違いすぎて、途中から、何を話していいかわからなくなって。『あの、鳥貴族とか…行きますか?』とか聞いてしまうほどおしゃれで。ちなみに行ったことないみたいでした。私は鳥貴族が好きすぎて、メニューを見なくても注文できるくらいなのに…。途中から“あ、これは合わない”と思って、2時間くらい飲み食いしたところで解散しました」

向こうから連絡が来なかったら連絡しないでおこう、と思っていたら、そのまま連絡は途絶えてしまいました。

「お互いに、合わないな、とはっきりわかったんだと思います。紹介してくれたAちゃんには『紹介ありがとう、もしかしたら住む世界が違うかも…』とさらっと連絡をして終わりました。最初に私の趣味の話を楽しそうに聞いてくれたときは本当に嬉しかったんですけど、うまくいかないものですね…」

  1. 趣味の話を受け入れてくれる人はそれだけで嬉しい
  2. 「みんなで会う」は楽しくても「ふたりで会う」はそうとは限らない
  3. おしゃれなメンズにはついドキッとしてしまうものの、あまりに自分と住む世界が違いすぎるとしんどい

 

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