そもそもそれ、「エモい」で合ってる?
「まだ付き合っていないけどきっとお互い多分好き…そんな人と公園で花火して…」「来年はもう就職だから、みんなでこうやって思いつきで海に来て遊ぶのも、きっと最後の夏になるよね」
こういうとき、おそらく多用されるワード「エモい」。
CanCamでも、けっこう「エモい、エモい」言ってきました…。
エモいって、切ないとか、懐かしいとか、きゅんとするとか、色々包括している気がして、言葉にできない胸がぎゅっとなる気持ちを表すときに便利でつい使ってしまう言葉ですよね。特に夏は「エモい」って言いがちだったりしません?
でも本当にそれ「エモい」で合っているのか? そもそも「エモい」以外の表現って何かないもの? 一体何歳になるまで「エモい」って使い続けるつもりなんだ、自分 ?
などなど、ふと我に返ってみるとそんな気がしなくもない。そんな時にちょっと読んでみてもらいたい本をご紹介します。『「言葉にできない気持ち」の言語化ノート』です。
『「言葉にできない気持ち」の言語化ノート』は、NHK Eテレで放送されていた人気番組『言葉にできない、そんな夜。』を書籍化したもの。当番組は「エモいよりもぴったりくる表現を探す番組」として、日常の中のこころが動く瞬間をテーマに、その気持ちにぴったり寄り添う言葉や表現を探していきます。
有名作家の小説や歌詞などから「言葉のプロたちはどう表現している?」を豪華ゲストが紐解いたり、考察したり、持論を展開したりする新感覚の教養番組。
番組の中でピックアップされていた「日常のこころが動く瞬間」って、たとえばこんなシーン。
- 「昔よく聴いた音楽を久しぶりに聞いた時」
- 「親友から結婚報告を受けた時」
- 「ふるさとの街並みが変わってしまった時の気持ち」
- 「夏の終わりの気持ち」
- 「スター選手・推しが引退する時の気持ち」
あるある!
ひと言では言い表わすことが難しい、なんだかこころがザワつく場面。
今回は、本書の中で紹介されているトピックの中でひとつ、きっとCanCam世代ならば遭遇したことがある人も多いであろう場面について、ゲストの皆さんの考察をピックアップしてお届けします。
「元恋人の結婚を知った時の気持ち」って…
元恋人に対しての想いは人ぞれぞれ。今回のパターンは「気持ちが残ってなくて、割ともう、どうでもいい」と思っていた元恋人の結婚を、共通の知人から聞いた時の気持ちについて語っている回です。
番組MCはスピードワゴンの小沢一敬さん、ゲストは音楽クリエイターのヒャダインさん、小説家の綿矢りささん、女優の美村里江さん、シンガーソングライターの崎山蒼志さん。
小説家の江國香織さんの著書『ふりむく』からの一節や、アーティストのback numberの曲『そのドレスちょっと待った』からの絶妙なフレーズが登場。(著作権の関係で具体的な言葉をご紹介できないのが残念ですが、ぜひそれは本を読んでみてください…!)
美村さんは、「元恋人を別フォルダや上書き保存、という例えですることがあると思うけれど、私はハードごとごっそり捨てちゃう。だから、元恋人の結婚を知った時も、何も気持ちを抱かない派!」ときっぱり。一方綿矢さんは「元カレよりも、元カレと結婚した女性と自分との距離感を考えてしまう。同じ人を愛したのか、とか、もしかしたら自分と気が合うのかな」と別角度からのご意見。
同じ場面に遭遇しても、それぞれ感じることや言葉の捉え方が異なるというごく当たり前の事実が、あらためて他人と交わる上での醍醐味なんだ、と気付かされます。また「ありがとう」「悲しい」「疲れた」「好きだ」という、たったひと言を言いたいだけなのに、それを伝えるために何行も文字を書いたりLINEを打ったりする、これぞ今も昔も変わらない人間の営みなのだなということにも安心感を覚えました。
自分の体験や感情を言葉にするって難しいけれど面白い!そして正解は一つじゃない。たとえどんなに辛い経験だってその表現によってクスリと笑えるまでに昇華できるかもしれない、と希望を感じることのできる1冊です。言葉ってきっと筋肉と同じで、鍛えれば鍛えるほど新しいフォルムを形成してどんどん研ぎ澄まされていくはず。「最近語彙力足りてないな〜」と思ったそこのあなたにぜひ読んでほしい!言葉の奥深さに沼りますよ。
「言葉にできない気持ち」の言語化ノート(小学館刊・1,540円/好評発売中)
「#語彙力」しがちな人、その思い叶えます
「エモい」で済ませたり、スタンプや絵文字で気持ちを表しがちな現代社会。揺れ動く気持ちを言葉でどう表現するかを、過去作品や書き下ろし作品を通じて学ぶ異色の教養バラエティ「言葉にできない、そんな夜。」で、昨年放送された中から31のお題をピックアップ。「キュン」「イライラ」「ざわざわ」「しみじみ」「どきどき」「じゅくじゅく」「モヤモヤ」「!!! ・・・」の、8つの気持ち別に再編集。この番組のために、豪華メンバーが書き下ろした作品も掲載。
本書に掲載している書き下ろし(五十音順):
朝井リョウ 石崎ひゅーい 江國香織 小沢一敬(スピードワゴン) 金子茂樹 金原ひとみ 川谷絵音 木村カエラ 最果タヒ 島本理生 ヒャダイン 町田そのこ 水野良樹 村田沙耶香 村山由佳 吉澤嘉代子 吉本ばなな 綿矢りさ
*本書は2021年秋、2022年4月~9月に放送された中から、ピックアップしています