柴崎:……モテテクとはちょっと違うけど、「魔法の言葉」がある。女の子が窮地に陥ったときに使える魔法の言葉、「わかんない」だよ。男はそれを言われると、コミュニケーションが断絶されてそれ以上追求できなくなるんだよ。
つん子:自分の浮気がバレた! とかでも「わかんない」でいいんですか!?
柴崎:うん。男としてはこっちがボール持ってるのに、相手にミットを外されたら、そのボールをどうしていいかわかんなくなるんだ。
つん子:へぇ、女の子のほうがどう悪く思えても、「わかんない」って言われたら、「俺が悪かったのかな……」くらいまで考えるってことですか?
柴崎:うん、考えるね。
ガミコ:それ、もっと早く知りたかったなぁ(笑)。ちゃんと説明しなくていいんだって。
ふじっこ:いや、とっさにそういうことを言えちゃう女子っていうのは、そのテクニックを知ってても知らなくてももとからできる子なんですよ(笑)。
柴崎:あとはね、ポジティブな行動にネガティブな言葉をあわせるの。逆でもいいよ。僕は“イヤキス”って呼んでるんだけど、「好き」って言いながらキスするより、「ダメ」って言いながらキスするほうが、背徳感が上がるっていうか(笑)。
つん子:へぇ……「もっとしてやろう」って思うわけですか?
柴崎:というよりは……恋愛の醍醐味って、タブーをおかすことにあると思うんだよね。だから、タブーのないところにタブーを作ってあげるんだよ。そうすると、その行為に背徳感が出て、乗り超えることに悦びが生まれる。
だからね、テーマに戻るけど、こういうテクニックはあるにはあるんだけどさ。仕事とか生活とか、ほかにも考えるべきことはたくさんあるのに、そんなものにばっかりコストを払ってていいのかな、とも思うよ。高度な男女の腹の探り合いとか、はたから見ていて痛々しいくらい血みどろの戦いになるし(笑)。そういうドツボにはまらないために、「こういうテクニックがあるんだ」って覚えておく程度でいいんじゃないかな。
ガミコ:でも、好きって言われても絶対嬉しくない相手もいるよね。
柴崎:でしょう? 生理的に嫌だって人は誰にとってもいる。でも、「絶対無理!」って人が自分にもいるんだから、相手にもいるのは当然だってことも理解しないと。自分がもし、「こういう人は絶対ダメだ」と思ってしまう要素をたくさん持っているなら、相手にも同じだけの可能性を考えてあげないとフェアじゃないよね。
さーや:自分には甘くなりがちですもんねぇ……。
柴崎:だから、モテテクっていうのを身につけるよりも、自分を磨いた方が早い。ダイエットして体型を変えるとか、身につけるファッションを変えるとかね。内面を変えるよりは、容姿を変えるほうがずっと楽だから。たとえばフランス語を習得するより、体重を5キロ落とすほうが楽じゃない? それに、容姿をよくするのはのちのち、何にでも効果があるからね。時間の使い方として、そのほうがずっとコスパがいいよ。
ガミコ:そうなんだけれども、女子は「このままの自分を愛して!」というのが鉄板ネタですからね。
柴崎:それなら、自分もそういう相手をちゃんと愛しなさい。ありのままの相手を愛してあげるんだ。少なくとも、自分が「どうせ私はみんなよりスタイルが悪いんだ、不細工なんだ……」と思うんなら、同じような男性を軽蔑しちゃダメなんだよ。彼は自分と同じ痛みも知ってるはずだ。そしてもし、自分でそれが嫌ならコストを払う、賭け金を払うんだ。掛け金を払わないと配当は手に入らない。
つん子:女子って、そうやって自分を変えようっていう気がそもそもないから、小手先のモテテクってものに走るんですかねぇ。
柴崎:でも実際は、モテテクを実践するほうが遥かに大変だよ。相手がいる分、精神的な負担もあるしね。ダイエットするほうがずっと楽!
【結論】小手先のテクニックに目を眩まされず、自分を磨くべし!
いかがでしたか?
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(株)アミューズ所属。「シャンペイン・キャデラック」で三田文学新人賞を受賞し、小説家デビュー。映画「未来予想図」で脚本家としてもデビュー。代表作に「あした世界が(小学館)」、「三軒茶屋星座館(講談社)」ほか多数。最新作「あなたの明かりが消えること(小学館)」大好評発売中。
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