「自分へのご褒美」って、結構よく聞く言葉です。
美味しいものを食べたり、かわいいと思う服やコスメを買ったり、心を満たしてくれる本や映画を楽しんだり…。そうやって自分で自分の機嫌を取りながら、やりたいことややるべきことを進めていくのが大人というもの。そんな気がしています。
ここからはものすごく個人的な話ですが、私はとにかくこれが下手。「まだご褒美をあげる自分になれてないぞ」と、必要以上に自分に厳しい。さらに休むのも下手。「今日は休むぞ!」と強く決めた日も、やらなければいけないことが頭をちらつき「何もせず休む」よりも「やるべきことを進める」ほうが心が休まる…という始末。
一見なんとか回っているように見えても、完全に気力の自転車操業状態。
季節の変わり目なのか、疲れが溜まったのか。ガス欠になるタイミングというものは驚くほど突然訪れるものです。
たとえば、いつもなら1時間で終わるはずのことが、何倍も時間がかかる。ふっと手に力が入らなくなってものを落とす。集中力が続かず5分おきに違うことをしてしまう。そんなことが続き「なんで私こんなこともできないんだろう?」と落ち込み、余計に何もできなくなる…。
「何かおかしいぞ」と思った頃にはみごとに悪循環モード突入です。毎日晴れではなく雨の日があるように、そういう日は突然やってくるものです。一番ひどいときは頭が回っていなさすぎて「日本語をうまく認識できず、文字だなぁ…としか思えない」状態。
↓確かに日本語なのに、これを見たときの感じになるイメージ。
というわけで今、これを書けているということは、おそらく底は脱出したわけです。
復活を早めるべく「自分に厳しくしている場合じゃない」となんとか気づき、脱出のためにありとあらゆる「自分へのご褒美」を与えまくったのですが、今思えば、ふっと復活するきっかけは「ピアスを買ったこと」にあったように思うので、そんな「自分へのご褒美話」を書いていきたいと思います。
◆とりあえず、最初は髪を染めにいった
「見た目は一番外側の内面」と言われることもあるように、外見に納得いかないとそのままなんとなく憂鬱になりがちです。そういえば先日「目にキズがついて眼科の先生にコンタクトNG宣言をされ、全然好きじゃないメガネ状態で2週間過ごさなければいけない」という状態が憂鬱度合いにかなり拍車をかけていたように思います。
さらに「なんとなく憂鬱だとそのまま外見にかける気力がなくなる」というのもそう。疲れているときは自分の落ち込み具合に気づいてあげられる余裕もなく、メイクや服にかける気力もなくなりがち。
でも、ふっとその日やるべきことがひと段落して鏡を見たときに「今の私、いくらなんでもヤバくない?」と気づき、「そういえば髪が荒れていてプリンだな」と思い立ち、染め直しにいつも通っている表参道の美容室を予約。お疲れモードの自分を癒すべくトリートメントもプラスしてみました。
しかし、予約当日の日曜日。
「表参道の街」って、いつもの元気なときなら何も思わないというか「今日もいろんな素敵な人がいて楽しいなぁ」となるのですが、自分の気力が弱りきっているときに行くと結構危険な街でした。「街ゆく人がみんなおしゃれだ…街の気迫に負ける…それに比べて私は何をしているんだ…」と、歩いているだけでヘロヘロになる始末。今思い返すと相当疲れすぎている。
それでもなんとか美容室にたどりつき、髪を染めてトリートメントをしてもらうとちょっと気分は上向きに。美容室から出たときには「表参道の街にいるのがつらい」と思うことはなくなっていました。
◆ふっと何も考えずに服屋に入った
美容室から帰る途中、何度か服を買ったことがある服屋さんを見かけ、ふらっと立ち寄りました。特に何かお目当てがあったわけではないのですが、秋服やニットが並ぶ店内を眺めていると楽しくなってくるもの。
そのとき、明らかに目的なく見ていた私に話しかけてきた、ベリーショートと大きな目が印象的な店員さんとの出会いがとても素晴らしいものでした。
私は服を買うときにあまり話しかけられすぎるのが好きではなく「試着したいものがあればこちらから声をかけるので、基本は放っておいてほしい」という、マイペースで見たいタイプ。日頃「素敵な服はたくさんあるけれど、店員さんがあまりに話しかけてくるため、対応するのが面倒になって店を出る」というパターンが結構あるレベル(すみません)。
でも、この日出会ったこの店員さんは、塩梅がものすごくちょうどいい。基本は放っておいてほしい私のペースを尊重してくれながらも、私がずーっと眺めているものがあればそれについて丁寧に説明をしてくれる。「私、この人から買いたい」と思うって、そうそうないことです。
その人は私が手に取るものや視線のゆくえを見ていたのか、試着するアイテムに合わせて、私が好きそうで、似合いそうなものをどんどんすすめてくれる。試着がこんなに楽しいことはないと思ったほどで、お店がそこまで混んでいなかったこともあり、お言葉に甘えて1時間弱くらいお店にいたと思います(いすぎ)。
◆そして私は、そのピアスに出会った
ニットやパンツ、コートにスカート、いったい何点試着したのか…あれもこれも欲しい…と思ったところで、店員さんがふとひとつのピアスを持ってきました。
「これ、絶対にお好きだと思って。本当は店頭に出すのはもう少し先の予定だったんですけど、持ってきてしまいました」
そう言われて見たピアスは、もう、完全にどストライク。
↑実物。
そのピアスは、フランスからやってきたインポート。そのお店では1点限りの取り扱い。
左右で同じデザインに見えて、実際つけると表裏どちらが見えるかが異なるデザイン。きらきらとステージで光るミラーボールのように輝いてきちんと主役級に主張してくれるのに、どんな服にもなじみそう。「両耳につけてももちろん素敵だけど、片方は小さめのピアスを合わせてもかわいいですよ」などと言われて、家にあるピアスを思い出す。
「私、これをもしここで買わなかったら、結局明日買いにくるし、もしなくなっていたらめちゃくちゃ後悔する」と思うほどにツボ。
おそるおそる価格を確認する。
高い。
9月に使おうと思っていた服の予算より、だいぶ高い。
とはいえそれまであまりピアスに高額を使ったことがなかったのですが、今まで買ったピアスの最高金額の2.5倍くらいのお値段です。適宜ご想像ください。
でも、私の性質上、気に入ったアクセサリーが見つかると、それを毎日のように使う。毎日同じ服を着ることはないけれど、毎日同じアクセサリーをつけることは、よくある。そう考えると、たぶん日割りにしたらかなり安い。それに「満点レベルにものすごく好きなもの」を買っておけば、それがあるからこの先「ちょっと妥協した70点のもの」を買わなくて済む。
何より、手に取ったときにこんなに心を躍らせてくれるものにはそうそう出会わない。特に私は「なんとなくピアスが欲しいな〜」と日々探し続けているのに、頻繁に使う手持ちは2つだけ。それくらい趣味にばちりとハマるものはなかなかない。
と、ひたすら「買う理由」を探し続けていました。この時点でもう心は決まっています。
それにこれをすすめてくれたのは、私が「この人から買いたい」と思った店員さん。
ちょっとお高いけど、買えない値段ではない。もう買わない理由はないと、思い切ってお買い上げしました。
◆「本当に気に入ったもの」が持つパワー。
翌日。
どきどきしながら買ったピアスをつけてみると、もう、きらきらして本当にかわいい。
シンプルな服もぐっと格上げしてくれそうな存在感とか、このピアスを表現する言葉はいくつか思いつくけれど、何より、ただ、心がわくわくする感じ。ずっと落ち込んでいた私の気持ちを上向きにさせてくれるパワーが強すぎる。
これをつけてみたら、この服が着たいとか、きちんとメイクがしたいとか髪が巻きたいとか、落ち込んでいた私がないがしろにしていた諸々を急に整えてくれて、家を出る前に全身を鏡で写したときに「今日の私、なんかいいじゃん」と思えたのです。そんなことを思ったのはいつぶりでしょう?(本当に、いつぶりだったのか思い出せないほど)
そこから私は不思議とみるみる元気を取り戻していき、今に至ります。
(もちろんこれだけで完全復活したわけではなく、他にも土日まるまる何もせずひたすら寝たとか、いろいろやった相乗作用です。でも、それも私にとっては「何もせずゴロゴロする自分を許せる」というくらいの心の余裕ができたからこそできたことでした)
「客観的に見て、世の中の大多数がそのピアスがかわいいと思うかどうか」とか、そんなことはまったく問題ではありません。主観的に見て「今日の私、なんかいいじゃん」と思える、わくわくするものを身につけることって、本当にすごいパワーを持ちます。
どんなものにも好みはありますから、もしかしたらこれを読んでくださっている方の中にも「いや、そこまでかわいくないんじゃ…?」と思う方もいると思います。でもそれでいい。私はこれがすごくかわいいと思うし、これを身につける自分にテンションが上がる。
おそらく「買えなくはないけど、普段買う価格帯より結構お高いもの」であることも、ちょっとそれを後押ししてくれる要素。「ちょっといいもの」が持つパワーって、やっぱりすごい。
ついでに副産物として、秋服を見に行くときにこのピアスをつけていくと「このピアスよりわくわくしないものは買わない」という明確な基準ができあがり「なんかしっくりこない点はあるけどまぁいいか…」で買うことがなくなったので、ムダ買いがかなり防げるという利点もありました。
今回の私は、落ち込んでいた自分をぐっと上向きにするきっかけをくれたのは「ピアス」でしたが、必ずしも何万出さなきゃいけないとかそんなことはまったくないと思います。人によってはもしかしたら、なんとなくやっているコンビニ買いを何回かやめたら買えるくらいのお値段の、大好きな落ち着く空間で飲む1杯のコーヒーかもしれないし、本当に気に入った色のリップかもしれない。
私もそうですが「これ、高くない!?」とつい思ってしまうものでも、それがあれば元気になれる確信めいたものがあるなら、それはきっと値段を超えて素敵なものをもたらしてくれる「心への投資」「元気な自分でいるための投資」だと思うのです。
もちろん度を越した浪費には注意ですが…たまにはね、たまには、いいんです。モヤモヤと「最近の自分なんかイヤだな〜」という気持ちでずっと過ごし続けるなら、「『好きでいられる自分』でいるための何か」を手に入れたほうが、よっぽど心身の健康にいい。結局自分の機嫌を本当にとれるのは、自分だけですから。
(余談ですが、その後、好きなものに囲まれて自分を心地いい状態に置くのって改めていいな…と知ってしまった私は大好きな香りのハンドクリームを買ったり、好きなアロマオイルの香りを部屋中に拡散すべく無印の大きいアロマディフューザーを買ったり、今度は予算の範囲内でちょこちょことした買い物を重ねています。自分を心地よくしてあげることって、本当に楽しい。)