不可抗力で「1時間に3回鳴るアラームに支配される超面倒な生活」をしたら、意外と最高な時間管理術を学べた話

起きている間ずっと、1時間に3回アラームを鳴らして、そのたびに「あること」をしなければいけない…ということが義務になったら、あなたはどう思いますか? 想像するだけで面倒ではないでしょうか。これは2週間、自分のものぐさが(おそらく)きっかけで、その生活をするハメになった女のドキュメントです。

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「それのきっかけ」は8月中旬のある日の夜に突然訪れました。

右目が、ものすごく痛い。尋常じゃないくらい痛い。

どのくらい痛いかというと「目の裏にコンタクトがいってしまった感覚に近い違和感」が延々続く痛さ。慌てて目の中を見ても何もない。とはいえ私が知らないうちにコンタクトがちょっと欠けたのかもしれない…それが目の裏にいった…?と疑うような痛さ。目はうっすらと充血している。なんだこれ。

「とりあえず寝て起きたら治っているかもしれない」とポジティブマインドで早めに寝たところ、やっぱり起きても痛い。なんなら「目の中に長い髪の毛でも入っているような違和感」に進化していて、つらすぎて起床即ネガティブ。

起床即こんな感じ。

即最寄りの眼科を調べたらよりによって夏季休暇真っ最中だったので、2番めに近いとはいえ絶妙に遠い徒歩20分の眼科を最速の時間で予約完了。

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ずっと髪が目に入っているような違和感(これが結構しんどい)を抱えながら眼科に向かい、先生に目を見られたりどアップの写真を撮られたりとさまざまな検査をしてもらった結果、先生が「目にキズができていて、そこに細菌が入っているんですが、これはかなり悪さをする細菌の可能性があるにはありますね…」といった感じのめちゃくちゃ怖いことを言い始めました。

眼科の先生「これはなんちゃらかんちゃら菌(←覚えていると検索してより不安になりそうで怖いせいか、何回聞いても私の頭は正式名称を覚えてくれなかった)の可能性が高いですねえ、下手するとものすごい悪さをする細菌です」
「どれくらいで治るものなんですか」
眼科の先生「だいたい目安として1週間から1か月くらいですが、でも最悪のケースの場合は1か月以上かかる場合もありますね…

私、遠い目。

*余談ですが、完治した今になってうっすら覚えている単語で調べたところ、おそらく先生が言っていた気がするなんちゃらかんちゃら菌は「失明することもある」とかなんとか書いてありました。本当に治ってよかったです。

細菌を採取され検査に出すことになったものの、それが戻ってくるまでには数日かかるようです(さらにこの数日後からこの眼科が夏季休暇なので2週間くらいわからない)。

眼科の先生「見切り発車で抗菌目薬を使い始めましょうか。1時間に1回、この3種類の抗菌目薬を差してください
「…1時間に1回もですか?」
眼科の先生「そうです。あ、ひとつひとつは最低5分ずつ間隔を空けてください
「…つまり、11時にひとつめを差したら、次が11時5分、その次が11時10分ってことですか?
眼科の先生「そうです」

 

\……めんどくせーーーーー!!!!/(心で大絶叫)

心の中こんな感じだった。

考えただけで面倒すぎる。1時間に1回というだけで面倒なのに、ひとつひとつを5分空けなければいけない。それを3種類。無理。

「そもそもなんで私こんなことになっているんですか?」
眼科の先生「これはコンタクトの装用をしている方がなるものなので、使い方ですかね。そうそう、完治まではコンタクトも厳禁です」

 

嘘やん。
私、メガネの自分があまり好きではないのでコンタクト厳禁はだいぶ憂鬱。

呆然としたまま薬局で処方された目薬3種を受け取り「面倒くさすぎる…」という想いとともに帰りました。
終わりが見えない強制メガネ生活スタート。1時間に1回3種の目薬だとメイクをしても落ちそうなので基本すっぴんで過ごすことになりそうなのもイヤ。さらに3種の目薬のうちひとつは冷所保存。今は夏。出かけるときは保冷剤とともに持っていかなければいけないらしい。面倒にも程がある。その上コンタクトNGで目が小さく見えるメガネのみ。絶対極力外出したくない。コロナ禍の影響でそもそも外出する機会も最低限にしていたものの、心のどこかで「そろそろちょっと遊びに出かけたいな〜」という気持ちと戦っていましたが、もう「面倒すぎて本当に外出したくない」が圧勝。結果オーライでいいコロナ対策と思うしかない。

 

でも、まったく身に覚えがないなら自分の不運を呪えばいいだけですが…身に覚えは、残念ながらめちゃくちゃありました。どう考えてもコンタクトを入れたままうたた寝をしていたのを週に何回かやっていたのが原因としか思えません。完全に自業自得です。どれだけコンタクトしているかしていないか忘れるほどの目に違和感がないレンズであっても、もう一生コンタクト入れたまま寝ません。寝るかどうかわからなくても横になるときはコンタクト外します。ここに誓います。みなさんも寝るときは絶対コンタクトを外してください。

当たり前ですが……。

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そんなこんなで1時間に1回、5分おきに目薬を入れる生活が急に始まりました。

憂鬱です。非常に憂鬱です。私、相当面倒くさがりなんです。どうすればいいんですか。「1時間に1回、5分ずつ空けて3種類の目薬を絶対差す」って想像するだけで面倒くさくないですか。でも自分の目にはキズがついていて、いつ治るかわからなくて、しかも運が悪ければかなり悪さをするらしい細菌が確実にいるわけです。その状況下に置かれたら「1時間に1回絶対3種類目薬差すマンになる」以外の選択肢はありません。完璧な目薬マネジメントが求められます。

少しでも憂鬱を和らげるために、とりあえず目薬を目につくところにかわいく展示することから始めました。

最近あまり使っていないおちょこにとりあえず飾ってみた。かわいい気がする(ひとつは冷所保存のため冷蔵庫へ)。

さも雑貨のように飾ってみる。

そして自分の「あ、そろそろ1時間経った!」という感覚だけに頼るのは非常に心許なく、間違いなく絶対に忘れることが目に見えたので、1時間に1回、絶対忘れるので自分が確実に起きているであろう時間全部すぐにアラームをかけました。

思ったよりアラームの圧がすごい。やっぱりこれ全部鳴るの考えるだけで憂鬱すぎる。なんならこのあと23時まで続いてるし、朝も7時くらいから1時間おきに設定してある。
せめて味気ないアラーム音ではなく、好きな曲を鳴らそう。でも全部同じ曲だと「面倒くさい目薬タイムを知らせる曲」と刷り込まれそうなので、きちんと1時間おきに違う曲を設定する。好きな曲をアラームにするとそのうち朝の憂鬱曲に化けるあるある現象だけは避けたい。

…というわけで、起きている間アラームに支配され続ける生活、本格的にスタートです!

まず1時間経過、好きな曲のイントロが鳴る。意外と早い。1種類めを差し、5分のタイマーをかける。鳴ったら2種類めを差し、また5分タイマー。3種類めを差したら、一応次の時間のアラームがかかっているかを確認し仕事に戻る。

こういう感じです。めちゃくちゃ見たこの画面。

 

ああ面倒くさい明日になったら目治らないかな。
…と思っていましたが、これを繰り返し3時間くらい行ったところで「…これ、もしかして時間に関する意識を変えるめちゃくちゃ良い機会なんじゃない?」と気づきました。ええ、ここまでこんなに何度も何度も「面倒くさい」「憂鬱だ」「無理」と思っていたというのにです。

何が良かったかを説明していきましょう。

【1】1時間の経過をハッキリと知ることができる

コロナ禍の影響で私は基本的に在宅ワーク。人の目がないため、調子が出ないときはついうっかりダラダラと仕事を進めがち。はっと気づけば「あれ!? 今日まだこれしかできてないのにもう夕方!?」ということがちょこちょこあります。
ですが、この「1時間に1回目薬」の影響で「1時間」の経過をハッキリ感じ取れるため、ついうっかりお昼を食べた直後などぼんやりしがちなときも「やばい! あんまり何もしていないまま1時間経った!」ということが否応無くアラームによって知らされるため、もし仮に1日の中にダラダラタイムが挟まったとしても1時間で立て直すことができます。

【2】50分・5分・5分のリズムが案外すごくいい

集中できる日とできない日の差がものすごく激しい私。集中できない日は10分くらいで集中力が切れますが、集中できる日は逆にまったく休みを入れずに3時間くらいぶっ続けでデスクワーク作業をしてしまうという、それはそれで体に悪そうなことをやっておりました。

が、この目薬アラームに支配された生活は「50分・5分・5分→50分・5分・5分…」の繰り返しで1日を進めることになります。

だいたいのリズムは

1.50分長く集中したい仕事をする
2.5分コーヒーを淹れたりストレッチしたり休む
3.制限時間5分だけと区切り、時間がかからないけれど地味に面倒で後回しにしていたことをやる(ちょっとした片付けや調べもの、デスクトップやフォルダの整理など…)
→以下くり返し。

これがまた、メリハリがあってはかどるはかどる。特に「そんなに時間がかからないと頭ではわかっているのに、取り掛かるまでが地味に面倒で後回しにしていたもの」軍団が「制限時間5分」と決めることでタイムトライアルゲームのようになり、ザクザク終わっていったのが最高でした。

ちなみに、最近買った休み方の本を読んでいたら、やっぱり30分〜1時間おきに5分くらい休憩を入れるのがいいようです。結果的にまさにこれ。ラッキー。

【3】「自分が5分&50分でできること」をリスト化し分析できる

ついでに「自分がだいたい所要時間5分&50分でできること」がどのくらいあるのかをリスト化してみました。

こんなに時間で区切って自分を分析できる機会もそうないだろうと、調子がいい日とそうでもない日の作業効率の違いや、頭がはっきり働く午前に向いていること・ぼんやりしがちな午後に向いていること・一度眠くなって使い物にならなくなる夕方に向いていること・突然頭が冴えてくる夜に向いていることなど、同じことをやっても時間帯によって所要時間がまったく違ったことが改めて判明。それぞれの時間帯に何を行うと最も効率的にものごとを進められるのかを洗い出し。

思い返せば最初の会社で働き始めた頃は、どの時間に何をやったか日報を出していましたが、今は自分しか自分をしっかり管理している人はいません。改めて自分の仕事を見直すいいきっかけとなりました。
「これは5分あればできる」というものを改めて身をもって知れたことも「面倒くさいから後回しにしておこう…」がなくなって「あ、次の5分はあれやっちゃおう」と、とても便利。「あれやらなきゃ、これやらなきゃ」と思うだけ思ってやっていない状態がどれだけ自分のメモリを無駄遣いしているかもよくわかりました。

当初は「どう考えても面倒くさすぎて憂鬱にもほどがある」と思っていた「1時間に1回、5分おきに3種の目薬」生活ですが、結果的に自分の時間の使い方を自覚できる非常にいい機会になりました(途中から心底そう思えましたが、最初のほうはもはやそう思わないとやっていられないくらい面倒でした)。

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ちなみに、この1時間に1回・5分おきに3種の目薬生活を続け2週間経った頃。
待ちに待っていた眼科の夏季休暇が終了し、夏季休暇明け朝イチで予約を取って検査してもらったところ「もう完全に治っているのでコンタクトをしても問題ないですし、目薬は停止してください」と完治宣言を受けました。やったー!

とはいえ人間「50分→5分→5分」サイクルで2週間ずっと生活するとさすがにそれが習慣になるもので、「だいたい1時間はこのくらい」ということが体に刻まれましたし、「短時間で終わるけれど取り掛かるまでが面倒な作業」や「集中してやれば短時間で終わるのにダラダラやってしまうこと」をするときは5分のアラームをかけ、制限時間内に終わらせるタイムトライアルゲームのように行う…は引き続き行っています。

まさに怪我の功名オブザイヤー。「50分→5分→5分」サイクルや「5分のタイムトライアル」、在宅ワークなどで「ついダラダラやってしまう」という方にかなりおすすめです。ぜひお試しあれ!

 

構成/後藤香織