もう何年も前の話だけど、なんだか妙に忘れられない出会いの話がある。
ものすごく印象的だったとか、イヤな思い出だったとか。「あんまりリアルタイムの話をするのは良くないなぁ」と思っていたけれど、何年も経った今振り返ると、なんだか他人事のようで笑えたり、学びになることがある。
そんな「時効」になった婚活話に迫ります。
今回お話を聞いたのは、さやさん(31歳・仮名)。
「最初は、この人なら私のことを理解してくれるかもしれない、という期待がありました。でも、そううまくはいきませんね」
さやさんには、中学生の頃から好きな、とある熱烈な趣味がありました。
アプリでやりとりをする男性は、趣味が「映画を観る、トレーニング、散歩、旅行、ゲーム」ばかり。もちろん中には本当に詳しい人もいましたが、要するに「なんとなく時間つぶしにやっている」人多数。そんな中で、ふとやりとりを始めた男性が、さやさんと同じくらいの熱量を趣味に賭けていることが発覚。趣味は違えど、自然と話は盛り上がり、お互いの好きなものの話を自然にできました。
彼の趣味は、ボードゲーム。人生ゲームやトランプ、UNOくらいしか知らないさやさんはまったく知らない世界で、彼の話を興味深く聞きました。
「ボードゲームさん、と呼びますね。ボードゲームさんは、私の趣味についても調べてくれたりして…。好きなものを中心に生きてきたので、それを受け入れてもらえるかもしれないと、ほっとしました」
しかし。
「会いましょう」という話になり、お店を探しておきますね、と言われたためボードゲームさんに任せていたところ、予想だにしない展開になりました。
「会う前日。ここにしましょう、と指定された場所は、ボードゲームカフェ。13時から18時までなら何時間いても料金が変わらないそうで、せっかくなので13時に予約しておきましたと。別にボードゲームがすごく好きってわけでもないのに、初対面の人といきなり5時間ボードゲームやるかもって前日に知らされるって、まあまあしんどくないですか?」
「第一印象で帰りたいと思っても、ほぼ確実に5時間拘束される」ということに身構えたものの、「もう今更断れない」と、ひとまず行ってみた、さやさん。
結果的に知らないボードゲームでいろいろ遊べて楽しく、サクッとごはんに行き「私のことを受け入れてくれそうな人だ」と頭では思ったものの、心の中には「なんか違う」という気持ちがわき上がってきました。けれど「これといってダメな理由」もないので、もう一度会って考えてみよう、と思いながらサヨナラをします。それでも、帰りの電車の中では不思議と「やっぱりなんか違う」というモヤモヤでいっぱいでした。
さやさんがLINEの返事をするのは1日に1回程度。対して向こうからは、どんなに遅くても1時間以内に返事がきました。やってきた2度目のデートの誘いも再び「楽しかったのでまたボードゲームカフェに行きましょう」と13〜18時プランを提案されました。「サクッとごはんくらいにしませんか?」と伝えても、ボードゲームさんは引き下がりません。
けれど、そのときのさやさんは仕事が忙しくてなかなか休みが取れなかった上に、持病の腰痛でしんどい時期。正直に「すみません、仕事が忙しくて、腰痛で、久しぶりの休みに、5時間あなたの趣味に合わせるのは辛いです」ということを、オブラート10枚ほど包んで送りました。
すると。
「でも、ディズニーで5時間並ぶのは楽しくないですか? って。いやいやいや、うまいこと言ったつもりかもしれないけど全然違うわと。そもそもいくらディズニーでも5時間は辛いし、ディズニーほど好きじゃないし。ボードゲーム嫌いじゃないしやれば楽しいんですけど、ものすごく疲れてるときに、別に好きでもない人と5時間、好きでも嫌いでもないことに時間使いたくないじゃないですか。ああ、この人、私の事情とか一切考えてなくて、自分に合わせてくれる人じゃないとダメなんだろうなと思って、連絡、止めることにしました」
余裕あるときにまた連絡します、と伝えて、連絡を止めると、不思議ととてもスッキリしました。
「たぶん、本当に興味がなかったんです。最後まで名前が覚えられませんでした。ずっと、もう連絡しなくていい理由を探していたように思います。それに、すごくどうでもいいことかもしれませんが、歯が1本だけ汚れていたのが、ものすごく気になったんです」
- 一発目から自分の趣味100%の場所を指定する人は、その後もこちらの事情を考えない可能性がある
- 頭で「良さそう」と思っても、心がモヤモヤしているならきっとそれが答え
- 致命的な「イヤな理由」がなくても、「イヤな理由」を探している時点でやめたほうがいい
▼で、「とりあえず3回会ったほうがいい」説って、ホント?