歌人・馬場あき子さんが考える「残したい日本の美」

“日本ならでは”という物事はたくさんあります。それは芸術であったり、食であったり、さらには所作であることも。

『和樂』5月号の「シリーズ・私たちが「残したいニッポンの美」第5回では、歌人・文芸評論家である馬場あき子さんに、残しておきたい日本の美について語っていただいております。その中からいくつか、今すぐ見つめ直したい、実践したい日本の美をご紹介します。

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■自然をもてなす心

お花見や紅葉狩りなど、四季折々の風情がある日本ならではの、楽しみがある行為。馬場さん曰く「その美しさを愛で、褒めてあげる。“もてなし”とは本来そういう相互の関係にあるもので、古来、日本人はそうやって自然と向き合ってきたのです」とのこと。

季節ならではの楽しみがどれも宴会の口実になりがちな昨今ですが、その原点に日本人ならではの自然をもてなす心があることを、忘れずにいたいものですね。

■畳、障子、縁側

畳の匂いや感触、障子越しの光の美しさ、縁側のぬくもり。そういった日本家屋での生活によって、自然との一体感が生まれ、家族を思いやる心が育まれてきたのです。

近年のそういった家屋の減少により、日本人は同時に大切なものを失ってきました。「部屋でいいから、畳と障子を取り入れてほしい」馬場さんはそう切に願っています。

■“包む”、“結ぶ”、“たたむ”

たとえば着物は体を“包み”、帯を“結び”、脱いだあとには“たたむ”とすべて揃っているもの。風呂敷も同様です。包むことで生まれるやさしさと、結ぶことによる緊張感のバランスが絶妙。日本が世界に誇るべき手わざの文化です。

■いろは歌留多

実は江戸と京都と大阪では、内容が48枚すべて違うんです! 読み比べていくと、西と東の気質の違いが見え、さらに突き詰めればその背景にある日本の歴史も見えてきて、実に面白いものなのです。

■短歌と俳句

型のある伝統詩歌がこれほど長く変わらずにあり続けたことは、世界的に見ても極めて稀。「難しく考えず、リズムにのせて、素直な思いを歌にしてみてください。それは日本人である自分の心と言葉に磨きをかける、一番の方法です」

改めて見つめ直してみると、奥深い魅力あふれる日本の文化たち。たまにはゆっくりとそれらを感じて過ごすことで、私たちも日本の美しい文化を少しでも継承していく役割を担えるのかもしれません。(鈴木 梢)

 

『和樂』2014年5月号表紙 (『和樂』2014年5月号)

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