中谷美紀「私は、愛される方を選びます」【インタビュー後編】

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2011年に中谷美紀さんが初舞台を踏んだ舞台『猟銃』が、4月東京・パルコ劇場ほかで再演されることになりました。

『猟銃』は、シルク・ドゥ・ソレイユ『ZED』などの演出家フランソワ・ジラール氏が井上靖さんの同名小説を舞台化し、“妻と愛人そして愛人の娘”のそれぞれの胸に秘められた思いをその男性に宛てた手紙で綴るストーリー。中谷さんは1人3役を見事に演じ、「第19回読売演劇大賞」優秀女優賞と「第46回紀伊國屋演劇賞」個人賞を受賞するなど話題となりました。

その中谷さんにWoman Insightではインタビューを行い、前半では中谷さんにとって『猟銃』とはどんな作品だったのかをお届けしました。後半では熱演のステージを降りたあとのリフレッシュ方法などをお届けします。

 

Woman Insight編集部(以下、WI) 中谷さんにとって舞台の魅力はなんだと思いますか?

中谷美紀(以下、中谷) 多くの人が「本番」とおっしゃるかもしれませんが、私はどちらかというと、本番よりもお稽古の方が舞台の魅力だと思っています。これだけセリフを細かく噛み砕いて、贅沢に時間を使って本(脚本)を読み込んでいく作業は、なかなか映像ではできない作業なので、私にとってはそれが舞台の魅力だと思っています。

WI 役を作り込む作業が魅力なんですね。

中谷 そうです。1人の人間を演じるんですが、己のことも理解していないのに人さまのことなど簡単に理解できないので。それに果たして自分自身がすべての役を理解しているかと言ったら、やはり演じていく中で新たな発見もあるでしょうし、自分の人生に照らし合わせて解釈も変わっていくと思うんですね。そんな中で“とうてい理解しえない人間というものを深く探る作業”って面白くて果てしない“探求”だと思います。

WI 舞台に立つ自分を観られるという感覚ではなく、役作りの過程が魅力だったんですね。

中谷 お客様においでいたけることはありがたいことですが、恐ろしいことでもあります(笑)。

 

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WI 『猟銃』のセリフは、昔の丁寧な日本語ですが……。

中谷 自分自身が、言葉の乱れに加担している節もありますし、どうしても省略語が流行ったり、どんどん日本語が乱れていくと思うんです。でも、きっとどんな言語でも変化しながら存続してきたものだと思うので、言葉が変化していくのは仕方がないことだと思います。とはいえ日本の言葉って大切に守りたい美しい言語だと思っています。

WI そうですね。もとは『猟銃』に出てくるような日本語ですよね。

中谷 はい。そういう意味では井上靖さんの『猟銃』の世界は本当に言葉が美しいのでひとつひとつの言葉を丁寧に大切に発したいと思っています。小津安二郎さんの映画とかを観ても言葉が美しいですよね。家族の中でも敬語を使っている。そういう世界って心地が良いので、裕福であるのかどうかに関わらず、相手を敬う気持ちに近くって、敬いながら暮らすというのが美しいと思うので、『猟銃』の世界も私自身の好きな世界なので、むしろ現代のお客様にもご覧いただきたいなと思います。

WI 日本語ってつつましく感じますよね。

中谷 だから、よけい恐ろしいですよね。言葉は丁寧なのに意味はとても毒々しくって(笑)。

 

WI 『猟銃』は演じる方が本当にパワーを必要とする舞台ですが、中谷さんのパワーの源は?

中谷 一番は寝ることです。あとはサプリメントとプロテイン。プロテインは、いままで1日に体重1キロに対して1グラムと言われていたそうなんですが、最近の研究ではその2倍摂取してもよいそうなんですね。なので私はだいたいですが1日に100グラム近く摂るようにして、ビタミンBで脳の回転を助けたり、脳にケトン体を送るためにココナッツオイルを頻繁に補給して、なんとか頭が働いてくれるように働きかけたりしています。

WI やはり手短に摂取するには、サプリメントを利用されているのですか?

中谷 そうですね。あとはアーモンドを食べたりとか、とにかく気軽にエネルギーになるものを食べています。

WI 食事では?

中谷 たんぱく質を多めに摂ることを心がけています。卵を1日に2,3個食べたりしています。昔は1日1つと言われていましたが、最近はコレステロール値が低いよりも多少は高い方が良いと言われているそうなので、食べています。(編集部:すべての人に当てはまるとは限りません。食べ過ぎにはご注意ください)

 

WI 中谷さんのリフレッシュ方法は?

中谷 寝るのが一番ですね(笑)。舞台って映像のお仕事に比べて時間があるので、舞台のお仕事の時は、家で余計な雑事に身を任せてしまったりするんですよね。そうすると逆に寝る時間が少なくなってしまってヘトヘトに疲れるので、あえて時間はありますけれども、その時間を寝ることに費やしています。あとは食べる! とにかく食べる。

WI なんだか、中谷さんが食べることを挙げられたのは意外でした。

中谷 懐具合など気にせずに食べます(笑)。舞台をやっている間は「自分の体に良いことはなにも惜しまない」としています。点滴を入れたり、マッサージしたり、お肉を食べるときは良質な良いお肉を食べたりしています。

WI お肉はやはりエネルギーになりますね。

中谷 お肉は大事ですね。鉄分とたんぱく質。たんぱく質がアミノ酸に変わるので、何よりも疲れにはアミノ酸が効くような気がします。

WI 年齢とともにお肉を控える人って多いのですが。

中谷 年齢とともにお肉を控えるのは、ご自身でお肉を消化できなくなってきているからだと思うんですが、私の主治医の先生いわく「消化酵素もタンパク質から作られるので、お肉を食べなくなると消化酵素も出なくなって、よりお肉が消化できなくなる」と言われたんです。

WI お肉が食べられなくなるのは、自分で食べる機会を減らしているからということですね。

中谷 そのようです。そこを堪えて、最初はしんどいかもしれませんが、お肉を食べるようにすることによって、また消化酵素ができるようになるそうなんです。私は何年か前に乗り越えて、消化できるようになりました。3か月から半年くらいで体質が変わったことを実感しましたので、続けることが大切だと思っています。