トラウデン直美×鎌田安里紗さんと考える「SDGs」について
今、世界中で注目される「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を、2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。昨年、雑誌CanCamでスタートした連載では、専属モデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」に向けたさまざまな取り組みを紹介しています。
CanCam4月号のテーマは「お洋服を作る過程」。綿花栽培に使用される農薬など、深刻な問題について学びながらコットン摘みにもトライしました!
鎌田安里紗さんに教わる♡オーガニックコットンから服が作られるまで
有機綿花でできた服はサステイナブルなものだと言われていますが、実際に何が環境や人に優しいの? と疑問に思っている方も多いはず。今回はそんな疑問に、エシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さんが詳しく答えてくれました!
■有機綿花(オーガニックコットン)が服になるステップ
綿の種からお洋服ができるまでの工程は当然ながらとっても手間がかかるんです! これを読めば、服を大事にしたくなるはず。
①綿花を育てる
綿は日当たりと水はけの良い土壌を好むアオイ科の植物。春に種まきして秋に収穫をします。普通の綿花栽培は化学肥料と農薬を使用しますが、オーガニックコットンは各国の有機農法に従い、有機栽培するので環境に優しいのがポイント。その代わり育てるのにとても手間暇がかかるので、全世界の綿栽培量の約0.9%ほどしか作られていないのが現状です。
②綿花を収穫する
写真はしっかり育った綿花。収穫するとき、多くの綿花は落葉剤をまいてから機械を使って一気に収穫しますが、オーガニックコットンは落葉剤を使用せずに収穫します。
③繊維をキレイにする
まずは収穫した綿花を葉や種を取り除く機械にかけ、繊維を解きほぐします。写真は種を取り除いたところ。これをさらに機械にかけ、細かいゴミを取り繊維の向きをそろえていきます。
④繊維から糸を作る
繊維をより合わせて引き延ばし、糸を作ります。ちなみに手作業で行うとかなり時間がかかるし、美しい仕上がりにするのは難しく、現在の糸のほとんどは機械で生産。
⑤糸を布に仕上げる
布にする場合も、現在はほぼ機械を使用。ちなみに“GOTS認証”を受けているものは、70%以上のオーガニックコットンを使用し、環境にも社会的にもより配慮された方法で製造されています。
⑥布を縫って服にする
布を服にするのにも、多くの人の手が必要! ちなみにTシャツ1枚を作るのには、綿花が100個近く必要なんだそう。私たちが普段着ている服って、実はこんなに手間がかかっているんです。
■コットン栽培における児童労働が問題に
コットンは“キャッシュ・クロップ(換金作物)”とも呼ばれ、インドをはじめとした綿花の生産地では、子供たちまでもが栽培の重要な担い手となっているそう。特に収穫や種子交配の場面で人手が必要となることが多く、子どもの学業に支障が生じたり、農薬の影響で体を壊したりすることが問題に。
地球環境や生産者に優しい有機栽培の綿花
トラ「最近サステイナブルな洋服が増えて、オーガニックコットンという言葉をよく聞くんですが…どこがいいのか、なんとなくしか知らなくて。鎌田さん、ぜひ詳しく教えてください!」
鎌田「オーガニックコットンのよさは、地球や生産者に配慮されているという点にあります。実は今、農薬を使用した普通の綿花栽培によって、地球環境や生産者の健康が脅かされ問題になっているんです」
トラ「海外では生産者が農薬で病気になり、ニュースになっていましたね。恐ろしかったです」
鎌田「さらに、綿花を栽培するために生産者が搾取されている場合もあるそうなんです…」
トラ「そう聞くと、少し高くてもオーガニックコットンの服を買いたくなりますね!」
鎌田「そういう人が増えて、オーガニックコットンの生産が増えたらいいですね。とはいえ、やみくもに買って消費してしまうとむしろ環境によくないので、今後買い足すときに選ぶようにしてほしいな」
↑上の写真で鎌田さんとトラちゃんが使っているのは、日本の伝統的な綿繰り機。ローラーの間に綿花を通し種を取り出すのですが、これが意外と難しい!
「綿花の中にこんなに種が入っていて、なかなか取り出せないって知りませんでした。ふたりで協力し合ったので楽しくできましたが、ひとりだったらできなかったかも。現在この作業はほぼ電動機械を使っているそうなんですが、納得」(トラ)
体験してみることもエシカル生活の第一歩
トラ「今日は鎌田さんと一緒に、都内の綿花畑におうかがいし、収穫&綿繰りをやってみたんですが…すごく興味深くて勉強になりました!」
鎌田「実際やってみると色んなことを感じますよね」
トラ「かなりの時間作業したと思っていたのに、意外とちょっぴりしか収穫できなくて驚きです」
鎌田「ふたりでかなり頑張りましたよね。でも、これくらいの量ではシャツ1枚も作れないかなぁ」
トラ「そんなに使うんですか!? そう思うと、今着ている服を作るのも、相当大変だったんだろうな」
鎌田「実際作業してみると、物のありがたみが沁みますね。エシカルに暮らすためには、楽しく学び、考えて行動するのが大事。それには、体験するっていうのも意外と重要だと思います。一度体験するとぐんと想像力が広がるので、色々なことを深く思いやれるようになるんですよね」
トラ「今日、それを身をもって感じました! 知識を得るだけでなく、行動してみるのも大切ですね」
洋服のお手入れだって、立派なサステナ活動!
トラ「今日の体験を通して、今まで以上にお洋服を吟味して買い、大事にしようって思いました!」
鎌田「そう思ってくれてうれしいです! もうひとつ大切なのは服に合ったケアをすること。「そんなこと?」と思うかもしれませんが、1着を長く着ることもエシカル。洗うとき傷まないよう洗濯ネットを使うのもいいですし、ニット素材は着たらブラッシングすると毛玉ができにくく長持ちしますよ」
トラ「たしかに、洋服をすぐボロボロにして捨てていたら、全然エコじゃないですもんね。これからは服のお手入れのことも勉強しなきゃ!」
鎌田「どうしてもシミが取れないときはプロに頼んで服を新しい色に染めてもらうのもアリ。ぜひ色々試しながら、今ある服やエシカルな素材のアイテムを長く楽しんでいってくださいね」
トラ「今度試してみますね! 鎌田さん、今日はありがとうございました。またひとつ、エシカルライフに近づけた気がします♡」
おうちで有機綿花を栽培し、もっとエシカルを学びたい!
今回の取材で、地球に優しいオーガニックコットン栽培のことをもっと知りたくなりました。それを鎌田さんに話したら、おうちで綿花を育てて服を作る『服のたね』プロジェクトに誘ってくださったんです! 春になったら家のベランダで綿の有機栽培をスタートする予定。読者のみなさんも、参加してみませんか♪
【鎌田さん】ジャケット¥15,000(oblekt)、ワンピース¥32,000・中に着たプルオーバー¥10,000(CASA FLINE表参道本店<CASA FLINE>)、ピアス¥33,000・リング¥27,000(ココシュニック)
目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩
■今月の1冊は…『普通で最高でハッピーなわたし 特別でもなんでもない二度目の人生』
下半身不随になっても前向きに生き、YouTuberとしても活動する渋谷さんの自伝。ハンディに負けない彼女の姿勢に元気をもらいました!
■エコな蜜蝋ラップでお野菜が長持ち!
繰り返し使える蜜蝋ラップの新しい使い方を発見! 野菜を包んで冷蔵庫に入れると、そのまま置いておくより長持ちするんです。ポリラップみたいに蒸れないのも◎。
■食事が美味しくなるマイカトラリー♡
繰り返し使えるストローやフォークを持ち歩き、使い捨てのお箸などをもらわないようにしてます。エコになるし、お気に入りのカトラリーは食べやすさも抜群。おすすめです♡
今回の連載では、オーガニックコットンについて、エシカルファッションプランナーの鎌田安里紗さんにうかがいました! 有機綿花(オーガニックコットン)から洋服ができるまでの過程を知って、その大変さに驚いたという方も多いはず。新しく買い足すのではなく、洋服のお手入れなどを通して持っている服を大切にできれば、エシカルな暮らしに近づけそうです。
「SDGs」について興味がある方は、発売中のCanCam6月号もチェックしてみてくださいね。
撮影/千葉太一 スタイリスト/奥富思誉里 ヘア&メイク/遊佐こころ(PEACE MONKEY) モデル/トラウデン直美(本誌専属) 撮影協力/田中かほ里、豊島株式会社 構成/衛藤理絵 ◆この特集で使用した商品はすべて、本体(税抜)価格です。