田中みな実さんを担当する美容師・朝日光輝さんに聞く【ヘアトレンドの変遷】

「今は“スタイルよりも雰囲気”の時代」。田中みな実さんのヘアを生み出す人気美容師が語る

今の圧倒的なビューティアイコンといえば田中みな実さん。みな実さんヘアを担当しているのが、モデルや有名人が足繁く通うヘアサロンSUNVALLEYの代表である朝日光輝さんです。90年代後半からヘア業界の第一線にいて、ヘアのトレンドをずっと見続け、もしくは生み出してきたレジェンド。女性の(だけじゃないけど)髪型の移り変わりを体感している朝日さんに、今のヘアのあれこれについてうかがいました。

朝日光輝(あさひ・みつてる)さん 1975年生まれ。表参道にある人気サロン、SUNVALLEY代表。超一級品の腕前と、トレンドを読む目に信頼を寄せる著名人は多い。本人も美容好き。インスタグラムでも本人が試した様々な美容ネタを展開している。@mitsuteru_asahi

ー最近のヘアトレンドってどこから生まれてくると思いますか? 昔ほどトレンドらしいトレンドがなくて、「かわいい」と言われるヘアは細分化しているように思うのですが。

「2010年くらいまでは雑誌だったと思うんです。テレビも雑誌の後追いだった。それからインスタとかのSNSが出てきて、発信がそこにシフトしてきた。今はスマホをピピピってやるだけですぐに情報が集められちゃうでしょ。何かを調べると、またそれに関連づいた情報が流れてくるから、情報の取捨選択がしやすいんですよね。

昔はヘアカタとかの雑誌の切り抜きを持ってくる人が多かったけど、今はいないですね。みんなSNSの画像。そういう画像って、正面のがないんですよ。横を向いていたり下を向いていたり。『こういう髪型』じゃなくて『こんな雰囲気』になりたいんだろうね」

ーそんな中でも田中みな実さんヘアは大ヒットじゃないですか?

「最近はあんまり『○○さんぽくしてください』というのはないんだけど、久々だよね!びっくりしたのが、みな実ちゃんは若い子から大人まで幅広い世代に人気があること」

朝日さんがカットした、「田中みな実風」ヘアのほのか。『CanCam』2020年5月号「ほのかが“みな実”になってみた!」より

―今のビューティアイコンのひとりですもんね。みな実さんヘアはモテる印象ですが、朝日さんが女の子をさらにかわいく見せるために大事にしていることはなんですか?

顔周り。いつの時代も女の子は顔を小さく見せたいから、そこは永遠に変わらないんです。顔周りのカットで骨格をきれいに見せることが、いつも大事。今だったらシースルーバングで透け感を出すとかテクニックの変化はあるけど、顔周りが最大のポイントなのは変わらないですね。

今、絶対に押さえたい顔周りは、厚すぎず程よい抜け感のある前髪。以前は、“THE前髪”というのが多かったですが、今はなんとなく“前髪風”というか。薄いから流すこともできるし、アレンジするなら前髪があったほうが決まるし。少しだけある前髪が使えます。

あとは後れ毛ですね。髪を結んだときのおしゃれなアクセントになるように、作る場所と分量をちゃんと見極めて」

こめかみ、もみあげの前部分、こめかみの後ろ部分の3か所をそれぞれ少しずつ長さを変えて作る。『CanCam』2020年5月号「ほのかが“みな実”になってみた!」より

―昔のモテヘアって、きちんと巻いてスプレーでキープして…とスタイリングに手間をかけるイメージですが、今はスタイリングをつけるだけでOKみたいな気がします。

「今でも巻き髪が流行っていないわけじゃないけど、巻き方と質感が違うんですよね。前は、縦のミックス巻きでちょっとドライなボリュームを出してという感じでしたが、今は波巻きがみんな好きだよね。それにオイルでウエットに仕上げるような。CanCam世代の子たちは、Youtubeや動画サイトで巻き方を研究している。だから器用にスルッと巻きますよね」

―ドライからウエットに質感が変わったんですね。

「前はウエットの質感なんてみんな絶対にやらなかったから、それはひとつの新しいトレンドの出現だったと思います。女性は髪にベタベタしたものをつけるのがあまり好きではなかったのに、オイルを使ったウエットヘアは意外と心地は悪くないし、ツヤが出て髪がきれいに見える。人気の切りっぱなしスタイルとの相性もいい、ということでスタイリングのスタンダートがひとつ増えたなと感じています。スタイリングオイルなんてなかったしね」

Nオイル

みんながこぞって買った、N.のポリッシュオイルはスタリイングで大活躍。「まったりするけどベタつかない。乾いていかないから質感が長続きします」と朝日さん。

―朝日さん的に、今いちばん推しているスタイルはなんでしょうか?

「うーん、ウルフですね。切りっぱなしや重めのスタイルに飽きてきて、少し動きを出したいとオーダーする人が増えています。顔周りやトップに少しレイヤーを入れた、重さの中に段差をつけて軽く見せるウルフ。

僕もだいぶ年齢を重ねたから感じることなんだけど、やっぱり時代って巡っているんだよね。例えばシースルーバングはバブル期のW浅野がやっていたし、ウルフは’00年代に流行ったし。でもニュアンスが全然違うし、合わせるファッションも違う。今シャギーたっぷりのウルフをやったら『え?』ってなるでしょ(笑)。昔にまったくなかったのはウエットヘアくらいですよね」

程よい重さの中にくびれを入れた今注目のウルフ(画像提供/SUNVALLY)。

 

長年ヘア業界を牽引してきた経験から、さまざまな視点から今のヘアトレンドについて分析してくれた朝日さん。美容師のカリスマ的存在ですが、いつお会いしてもとてもみずみずしくてワクワクさせてくれる方。年齢を重ねても様々なもの吸収して、新しい発信を続けている姿勢に脱帽します!

 

構成/斉藤裕子