あなたは何動物!? 女子のモヤモヤを解決してくれる、ジェーン・スーさんの新刊が発売に!
鋭い分析で働く女子達のモヤモヤを解決し、優しく背中を押してくれる新刊『女のお悩み動物園』。著者はコラムニストでラジオパーソナリティーとしても大活躍中のジェーン・スーさん。雑誌Oggiでの大人気連載が書籍になりました。女性のタイプを動物になぞらえているので、「私はどのタイプ?」「憧れるのはどのタイプ?」なんて、あーだこーだ言いながら読んだら絶対に面白い! 迷えるCanCam世代の必読書ということで、さっそくジェーン・スーさんにインタビューしてきました。
「価値観がアップデートされず、自己評価が低いラクダ女子が多い」
――『女のお悩み動物園』はなぜ動物になぞらえたいと思われたんですか?
連載の初期は「こういうことってあるよね」っていう「あるある」を動物の生態に例えてコラムを書いていたんですよ。朝ご飯を食べない人を私が怒る、みたいな回もあったりして、今のお悩み相談とはちょっと違う体裁でした。連載にはこの本よりも多くの種類の動物が出てきて、たぶん4,5種類減らして今回この動物たちになりました。
「あるある」って読んでいてすごい楽しいんですけど、場合によってはお互いを敵認定したりとか誰かを嘲り笑ったりとか、悪いほうに誇張することにもつながってしまう。時代が変わってきて、「あるある」が難しくなってきました。面白さを追及しすぎると侮蔑っぽくなって、「ああいう女いるよねー」「いるいる」「あるある」というふうになっちゃう。今はそういうのはよくないっていうムードですよね。昔が良かったわけではなくて、今のほうがいいムード。昔はもっと無神経だったんだと思います。
でも楽しくて前向きな「あるある」は話してもいいんじゃないのと思って。書籍化するにあたって改めてお悩みを見直したら、これはトラさんが言ってることと同じだとか、これはラクダさんの悩みっぽいとか、それぞれのお悩みの親和性というか系統が見えてきたんです。「結局、女の悩みって動物園みたいなもんなんだね」と思い、今回の書籍はこの形にしました。
――いろんなお悩みを聞いたと思うのですが、一番多い動物って?
うーん…ラクダ、かな。
――あ、ラクダなんですね! 私もラクダかなって思いながら読んでいました。
(編集部注※書籍によると、ラクダの特徴は「仕事はコツコツていねい」、「行動よりも妄想しがち」、弱点は「自己主張がめっぽう苦手」)
一生懸命頑張っている自分を正しく評価できてない女性が多いんです。でもそれって、世の中のアップデートされていない古いものさしで自分を測ってダメだと言っていたり、我が強い人たちが勝手に押し付けてくる価値観を飲み込んでしまっていたりした結果でもある。そして「こんな仕事誰でもできるし…」と自己評価が低い。ラクダさんタイプは頑張りも踏ん張りもきくし、努力もしてるのに、「あぁ何か他の特別な能力あればな…」とか「誰か迎えに来てくれないかなぁ…」とか思いがちでもったいないんです。
――そういうタイプが働く女性には多いんですね。長年連載を続けられてきて、一番印象的だったお悩みって何かありますか?
広告営業をしている方で、犬の首輪の通販の仕事を立ち上げたいんだけれども、一人で独立するのを迷い中とおっしゃっていた方(書籍P.218に掲載)。こんなにはっきり自分の欲望を書ける若い人がいるということがすごい嬉しかったですね。「バリバリ働き続けて10年」と32歳の人がはっきり言える世の中はいいなと思いました。収入が上がらないから副業で稼ぎを倍にしたいって、男性が言っても特に反感は買わないんですよ。だけど女性だと、こういうことを言うのがちょっとはばかられるというか、欲張りだと思われちゃうこともある。我々の世代なんかは、あまり目立たないほうがいいわよって言われて生きてきたので、こういうふうに言える世の中になったのは素晴らしいと思いましたね。
あとは、見た目が派手だからいつも期待値が低くて評価されにくいというお悩み(書籍P.176に掲載)。その方には実際にお会いしたんですが、華やかな顔つきの美人さんでいらっしゃるんですけど、だからって「すぐ辞めそうなランキング1位」なんて言われたら確かに傷つくだろうなと。容姿って悪い人ばかりが損をするみたいに言われがちだけど、そうじゃないっていう実例をリアルに見て、ひどいなぁと思いました。
――いろんな方のお悩みを聞いていて、30代女性の生き方について、気が付いたことって何かありますか?
私たちの世代からひとまわり以上年下ですが、まだまだ昔の価値観がアップデートされていない人もいるんだなと思いました。
――昔の価値観というのは?
例えば女性だったらある程度の年齢で結婚して子供をもってとか、あまり出しゃばらないで立ち回るみたいな。「事実婚の旦那がいます」という相談が34歳の方から出てきましたが、そういうふうに色んな生き方を選ぶ女性が増えてくればいいのになと思います。
「みんなと同じじゃなきゃいけない不安感」との向きあい方とは?
――スーさんご自身はこの5年間で何か変わったことはありますか?
どんどん忙しくなって、これからどうすんのって感じです。闇金でお金借りて利息だけ一生懸命払い続けているのに元本が全然減らないみたいな感じなんですよ(笑)。次から次へと仕事がいただけて、コロナ禍にありがたいことではあるんだけど、この忙しさでいつまでやっていくんだろうって思うときがあります。5年前も忙しかったから、もしかしたら体力が落ちているだけかもしれないけれど(笑)。
上の世代が体現していることって、自分たちがその年齢になった時にはもう全然通用しないんですよ。我々が20代や30代の時に見た40代って、普通にいいお給料がもらえる管理職だったけれど、それは景気が良かった頃の話。今はプレイングマネージャーとして部下の分まで働いて、会社来なくなっちゃった子が続出の中で何とか自分が頑張るみたいなことばっかり聞くので、「思っていたのと違う」みたいな。それは私たち世代に限らず、どの世代にも起こることなんですけどね。
――コロナ禍で働き方を変えてみようかなと思うことはありますか?
自粛期間中のラジオは2ヶ月くらい自宅からの生放送になったんですよ。ほとんど外に出なくて、下手したら1日100歩も歩いてない日もあって。積極的に外に出てウォーキングをしたり、3食自炊をするようになったりしたら、ものすごく健康になって体重も減ったし、「これくらいの働きで食べていけたら一番いいな」と思ったりもしました。あと、コロナ禍でいちばん思ったのは、日常生活を送る上での「逆一期一会」。
2度と会わないであろう人との接点がストレスになっているんだなと感じました。知らない人がエレベーターに割り込んでくるとか、ドアが開いてるのに出ていかないとか、こっちはこっちで自分の都合を最優先しようとするし、向こうは向こうで向こうの都合を最優先させようとするっていう。お互い余裕がないとき出会う人たちとのぶつかりって意外とストレスになっているんだなと。コロナ禍で家にいたらそういうストレスが全くなくて、なんでこんなに精神が安定しているんだろうと思ったら、そういうことでイライラしてないからだと思いました。
――連載開始から5年でたくさん悩みを聞かれて、悩みに答えるコツみたいなものってあるのでしょうか?
書籍の冒頭に書いたんですが、悩みといってもそれはその人の資質の問題じゃなくて、社会のシステムがうまく回っていないからなんだよ、というのはよく感じました。例えば親の介護にしても、「兄が全然やってくれない…」「姉が私に押し付けてくる…」というのも、その人の資質とか人間関係の問題じゃなくて、本来は地域包括センターに行けば行政である程度解決できなきゃいけない話だと思うんです。
悩みという漠然とした言葉の中に、「自分自身が困っていると感じているもの」、「実は自分のわがままで、思い通りに人を動かしたいだけのことを被害者のポジションに立って言っているだけのもの」、あとは本人の資質は全く関係ない「社会の構造に問題があるのにそれを自分のせいだと思っちゃっているようなこと」など、3つ4つジャンルがあるんだなと思いましたね。例えば「引っ込み思案なんですけどどうしたらいいですか?」という悩みがあったとして、引っ込み思案を直す方法だったら世の中に100も200もやり方が載っている本が出てるけれども、「そもそも直したいんですか?」っていう。その人が引っ込み思案であることで助かってきたこともたくさんあるだろうし、よく考えたら別に引っ込み思案でそんなに困ってないんだけど、みんなと同じじゃないから不安になっているだけかもしれない。みんなと同じにならなくてもいいよ、と思いますね。
――「みんなと同じじゃなきゃいけない不安感」をもっている人は、20代にも多いと思います。
ヒツジはもともと攻撃力がなくて弱いから、外から攻撃されたときに自分だけが狙われないようみんなで集まって群れになろうっていう動物じゃないですか。今自分のことを弱いと思っている子たちってそれだと思うんです。だけどそれは羊飼いの人間からすると、すごくコントロールしやすい存在なんですよ。外からオオカミが来るぞって脅されて、じゃあみんなで固まっていよう、言うこと聞いておこう、と行動していると、コントロールする側の人達にとっては楽なんです。「みんなと同じになりたい」「自信がない」と思っているのは、誰かにそう思わされているんじゃないか、自分がそう思うことによって得をする人がいるんじゃないか。そう考えてみたほうがいいかもしれないですね。
――CanCamは20代の働く女性が多く読んでいるのですが、この本から何を読み取ったらいいでしょうか?
これから就活する方も、社会ってこういうトラブルが出てくるんだなと、事前に知っておくつもりで読んでみてください、ドラえもんからの手紙じゃないですけど…(笑)。
――未来からのアドバイス?
そう、未来からの手紙。30代のお悩みを中心にまとめた本ですが、たぶんありがちな問題は20代のうちに出合ってしまったりもすると思うので。予行練習のつもりでぜひ読んでみてほしいです。
――貴重なお話をありがとうございました!
モヤモヤ悩まなくていいんだ! と背中を押されるような、前向きな気持ちになれるお話をたくさん聞かせていただきました。絶賛モヤモヤ中の方も、社会に出ることに不安がある方も、もっと成長したいと思っている方も、共感できること必至! 『女のお悩み動物園』をぜひ手にとってみてくださいね。視界がぱーっと明るくなります!
撮影/フカヤマノリユキ インタビュー/西村真樹 web構成/木村 晶