新型コロナウイルス感染拡大に加え、長梅雨、そして急激な猛暑…と、様々な要因で例年よりも外出しづらいムードが漂っていた今年の夏。「#おうち時間」の需要は一時的なものに思われましたが、これを機に日常的なものになりつつあるのかもしれません。
そこで今回は、トレンダーズが独自開発した分析ツール「SNSトレンドファインダー」を使い、Twitter、Instagramで「#おうち時間」と一緒に投稿された特徴的なハッシュタグを抽出。月別、年代別で分析しました情報を基に「おうち時間に皆さんがどのように過ごしていたのか」を調査しました。それでは早速見ていきましょう!
【月別】「#おうち時間」で振り返るTwitterトレンド
3月
各自治体から外出自粛が要請された下旬頃から急激に「#おうち時間」投稿が増加。様々なイベントが中止になる中、美術館や博物館のアカウントから「#おうち時間で学ぼう」をつけて展示関連の情報発信をするムーブメントが生まれました。また、「#外出自粛飯」、「#オンラインでも販売中」といったハッシュタグからは、飲食店を中心に急速な変化を迫られていた当時の様子が思い起こされます。
4月
緊急事態宣言発出となり、世間が大きな不安に包まれる中、SNSでは「#stayhome」をつけて互いに励ましあう、ステイホーム期間ならではのコミュニケーションが活性化しました。星野源さんから始まった「#うちで踊ろう」がトレンドハッシュタグになっています。
5月
5月を境に「#おうち時間」をつけた企業プロモーションが急増。以降、6~8月のトレンドハッシュタグ上位にはプロモーション関連のものが多く並びました。「#おうち時間」と相性のいい消費財、食品、ゲームなどの商材が中心となっています。
6月
プロモーション関連を除き、特徴的だったのは「#Switch難民」です。『あつまれ どうぶつの森』の大ヒットもあり、売り切れ続出となった『Nintendo Switch』。購入は抽選となり、Twitterでいち早く入荷状況を知ろうというユーザーが多く見られました。溜まっていた人々の消費欲求がSNS上でも表れるようになった時期といえます。
7月
7月は「#質問箱」がトレンド入り。引き続き簡単に人と会えない状況下で、Twitter上でもっと会話をしたいというユーザーのインサイトがうかがえます。また、観客数を抑えて開催された「#大相撲七月場所」や、「#オンラインライブ」も。エンタメやスポーツをはじめ、ニューノーマルな状況での活動に徐々にトライし始めたことが、Twitterでも注目を集めました。
8月
「#夏祭り」、「#サマフェス」といったシーズナリティな投稿がトレンドワードとなりました。オンラインでのイベント開催事例も増え、ニューノーマルな消費行動は徐々に定着フェーズに入ってきたといえそうです。
【年代別】「#おうち時間」で振り返るTwitterトレンド
10代
「#漫画好きな人と繋がりたい」、「#古着好きな人と繋がりたい」といった、いわゆる趣味友募集系のハッシュタグが上位を占める結果に。また、コスプレ関連の投稿が目立ち、「#宅コス」(自宅で楽しむコスプレ)もトレンド入りしました。
20代
「#マシュマロを投げ合おう」をはじめとする匿名質問サービス関連がトレンド入り。加えて「#配信ライブ」の投稿も他世代よりも目立ち、Twitter上での会話やコミュニケーションを楽しんでいた様子がうかがえます。
30代
食品や生活雑貨など、主にファミリー向けのキャンペーン系ハッシュタグが上位を占め、Twitterとの相性の良さが表れました。また、この世代においては「#ダイエット」、「#美容」、「#オンラインレッスン」といった自分磨き系のハッシュタグと、「#お菓子作り」、「#子育て」、「#Switch難民」といった家族との生活を想起させるハッシュタグとで二分されました。
40代
30代と同じく、企業プロモーション関連の投稿が多くなる結果に。その他では「#おうちごはん」や「#twitter家庭料理部」といったものが目立ち、自宅で美味しいものが食べたいというグルメ志向が高い傾向にあるようです。
こうしてハッシュタグの投稿状況を世代別で見ると、10~20代の若年層は「繋がり」を重視し、30~40代は「生活の質」を重視するという傾向が出ています。
【月別】「#おうち時間」で振り返るInstagramトレンド
3月
もともと「#おうち時間」の投稿文化があったInstagramですが、この時点ではまだ「#丁寧な暮らし」というニュアンスで使われていました。Twitterよりもリアルタイム性が低いためか、外出自粛に関連したワードがほとんど検出されませんでした。
4月
Twitterと同じく、「#コロナに負けるな」、「#おうちで過ごそう」といったステイホームでのコミュニケーション投稿が特徴となっています。
5月
「#stayhome」に加え、「#ゴールデンウィーク」、「#こどもの日」、「#母の日」がトレンド入り。外出自粛期間であってもシーズナリティイベントを楽しもうとする様子には、Twitterと異なる傾向が見られます。また、「#ダイエット」もこのタイミングでトレンドとなりました。
6月
「#料理好きな人と繋がりたい」、「#お洒落さんと繋がりたい」といった、趣味友募集系ハッシュタグが増加。おうち時間を充実させるためのアイデアをシェアし合いたいというインサイトがうかがえます。
7月
テレワークやオンライン授業の普及も進み、自宅空間をより充実させたいという需要が生まれるように。「#インテリア」、「#リノベーション」がトレンド入りしています。また、「#4連休」も入っており、連休を家の中で過ごした人の投稿も多く見られました。
8月
「#夏休み」、「#お盆休み」がトレンド入り。Twitterの8月トレンドが「#夏祭り」、「#サマフェス」だったことと比較すると、Twitterはイベント感のある投稿、Instagramはより日常感のある投稿が広まりやすいというそれぞれの特性が出ていると言えます。また、「#シャインマスカット」が旬の話題でした。
【年代別】「#おうち時間」で振り返るInstagramトレンド
10代
「#jkブランド」といった同世代での情報交換に加え、「#いいね返し」、「#l4l」(「like for like」の略。「いいね返ししますよ」という意味)のようなハッシュタグが上位を占め、「同世代とコミュニケーションを取りたい」という欲求がみてとれます。
20代
10代と同じく“繋がりたい”という意欲は感じつつも、「#お洒落さんと繋がりたい」「#東京カメラ部」などが入っていることから、年齢ではなく、センスや趣味嗜好で繋がりたい意向が強まるようです。
30代
「#料理好きな人と繋がりたい」に加え、「#こどものいる暮らし」、「#ママコーデ」がトレンド入り。結婚や出産などライフステージの変化がSNSの使い方にも影響していることがわかります。また、Twitterと比べて「家族」よりも「自分」が主になるハッシュタグが多く挙がっています。
40代
プロモーション関連のものを除くと、「#テイクアウト」の他、「#パンスタグラム」、「#パンのある暮らし」といったパン関連のハッシュタグが並びました。Twitterと同じく、おうちグルメへの関心が非常に高いといえそうです。
Twitterと比べて、Instagramの方が繋がりを求めるハッシュタグが幅広い世代に使われつつも、その内容はライフステージによって異なっている、という特徴が見てとれました。
「#おうち時間」で「自分らしさ」の表現がトレンドに
もともとハッシュタグ文化が強く根付いているInstagramでは、以前から様々な「#おうち〇〇」が投稿されていましたが、ユーザーの中でその重要度はより高まっている様子。ハッシュタグや投稿キャプションなどから、「外出できなくても、少しでも楽しいことをしたい」というユーザーインサイトがうかがえました。
今年3~8月に確認できただけでも、「#おうち〇〇」のハッシュタグは5,000種類近くにおよびます。
・おうち時間向上委員会… お取り寄せスイーツ、アロマ、DIYなど、おうち時間を豊かにするアイテムや作品を投稿。
・おうちキャンプ… 自宅のベランダや庭でキャンプをする様子を投稿。
・おうちスタジオ… 自分たちで部屋を装飾し、子どもの記念写真を撮影。プロの写真スタジオのようなクオリティのものが多数。
・おうち縁日… 手作りで夏祭りの飾りつけと、屋台のメニューを並べた様子を投稿。
・おうちディズニー… ディズニーの耳カチューシャをつけた様子や、ディズニーをテーマにしたグルメを投稿。
・おうちモンテ… モンテッソーリ教育を意識したおうち遊びの方法を投稿。
「#おうち時間」のSNS投稿は、日常を共有する意味以上に「いかに自分らしく楽しめているか」という、クリエイティビティや前向きな姿勢を表現するキーワードになってきていると考えられます。
今回の分析から、現時点でSNSにおける「#おうち時間」は、単なる状況説明の意味ではなく、「ニューノーマルな中での自分らしさ」を表現する意味に変化していることがわかりました。皆さんはこれまでのおうち時間を通じて「ニューノーマルな中での自分らしさ」を見つけることができましたか? 今後もまだまだおうち時間の需要はありそうなので、今回の記事やこれまでのおうち時間に関する記事を是非参考にしてみてくださいね!(山口彩楓)