なんで?精神科医が「ノンアルコールビールを仕事中に飲むといい」と語る理由

精神科医が「ノンアルコールビールを仕事中に飲むといい」と語る理由


ノンアルコールビールって、とても不思議な存在です。
「ノンアルコール」です。他の炭酸飲料と同じはずです。
実際に、缶の裏側を見てみても「品名:炭酸飲料」と明記されています。

けれど、もし仕事中に飲んでいる人を見かけたら、一瞬「あれ?」と思ってしまいますよね。一般的な炭酸飲料を飲んでいてもそこまで気になることはないのに、いったいなぜ…?

そんな「ノンアルコールビール」と脳の関係について、杏林大学名誉教授で精神科医の古賀良彦先生にうかがいました。

 

Q.なぜ「ノンアルコールビール」は「ノンアルコール」だとわかっているのに、仕事中や日中に飲むことに抵抗があるのでしょうか?


A.「あくまで、アルコールの一種」という認識が外れていないからです。

「ノンアルコール」とついていても「あくまでアルコールの亜種だ」という認識が頭から離れないからこそ、抵抗が生まれています。
日本人の習慣として「昼間、ましてや仕事中にお酒を飲むこと」は基本的に良くないことと思う傾向があります。あくまで「仕事の後、アフター5に飲むもの」という認識がしみついています。昼間は真面目に働いて、終わったらストレスを解消したり、気持ちを解放するためにお酒を飲む。「集中して仕事をする」とは対極のところに存在するものです。それがこれまでの一般的な日本社会でのお酒との付き合い方でした。

でも、それはこれまでの「昼間は会社で、みんなで机を並べて働く」という社会での話です。
新型コロナウイルスは、社会を大きく変えました。これまでの社会とは違う「ニューノーマル」がやってきます。その中のひとつに、在宅ワークが定着する、ということがあります。
僕自身、ビールやノンアルコールビールに関する研究をする中で、むしろ「上手にノンアルコールビールを使って、仕事にいい影響を及ぼす」ことを提唱してもいいんじゃないか、と思っています。

 

Q.ノンアルコールビールを飲むと、仕事にどんないい影響が出るのでしょうか?


A.含まれる「ホップ」「麦芽」が脳にいい影響をもたらす研究結果が出ています。

たとえば「仕事中、お茶を飲むこと」にはなんの抵抗もない、という方は多いと思います。それと同じように、ノンアルコールビールが「仕事中に飲む飲み物」のひとつとして、もっと定着してもいいと思っています。

ノンアルコールビールを構成する要素である「ホップ」「麦芽」「のどごし」は、実は仕事にポジティブな影響を与えてくれます。ひとつひとつを見ていきましょう。

▼「ホップ」は、脳にいい影響を与える

ビールの香りや苦みのもととなる、ビールの魅力を作る非常に重要な原材料「ホップ」。
以前「ホップの香りがどのように脳を影響を及ぼすか」という研究をしたことがあるのですが、使い方によって脳の活動を活発にしてくれたり、休ませてくれたり、さまざまないい影響を与えてくれることがわかっています。

▼「麦芽」は、幸福感ややる気に影響を与える

さらにこんな研究結果があります。
いわゆる「快楽ホルモン」とも呼ばれる、人のやる気や幸福感の増幅に深く関わる「ドーパミン」に作用する物質は、現在あるさまざまな食品に含まれる13000種類の成分のうち17種類しかありません。さらに、その中でもかなり精度が高く作用するとされたのが「ホルデニン」という成分。これは麦芽に含まれているもので、ビールにもノンアルコールビールにも入っています。つまり「ビールを飲むと幸せな気持ちになる」というのはごく自然なことなのです。

▼各メーカーが研究している「のどごし」も大事です

もちろんビールを飲んで楽しい気持ちになるのには「アルコール」が入っているのも理由のひとつですが、実は上記の「麦芽」「ホップ」もかなり大きな要素で、ノンアルコールビールにはこの両方が含まれています。
さらに各メーカーは通常のビール・ノンアルコールビールの両方で「のどごし」を追求しています。この「のどごし」にも、気持ちを元気にしてくれる効果があります。

 

アルコールを飲んでしまうとどうしても酔っぱらって仕事したくなくなったり、眠くなってしまうことがあるので、そこで出てくるのがノンアルコールビールです。「アルコールの一種だ」ということにとらわれて、否定するのはもったいないです。上手に使えば仕事の疲れを取ったり、仕事をポジティブに進めることの助けとなってくれます。

 

Q.とはいっても…本当に飲んでも差し支えないものなのでしょうか?


A.「働きやすさ」を自分でハンドリングできる時代。積極的に利用してみてもいいと思います。

新型コロナウイルスが時代を変えたことのひとつに、「大きなオフィスに集まって、みんなで机を並べて仕事をすること」が減ったことがあります。職種によっては、半永久的に在宅ワークとなったところもあります。

それが働き方にどう影響を与えたかというと「通勤がなくなった」などもそうですが、より成果主義になったことも挙げられます。

これまでは「とりあえず、定時内で働いていること」が重視されていたところもありますが、今はそうではありません。「ある程度自分で仕事のスケジュールを組んで、納期に間に合うようにいい仕事をする」時代です。会社側からしたら「納期に向けて、きちっといい成果を出してくれる」さえできていれば、それでいい。「働きやすく生産性が高い環境を、自分でハンドリングできる」時代です。
その中で「気持ちを元気にしてくれるもの」としてのノンアルコールビールの需要は高まっていくと思います。

これまでのノンアルコール飲料は「運転しないといけないから」「今ここで酔うわけにはいかないから」など、どちらかといえば消極的に使われてきました。
「アルコールが入っていないこと」がマイナスでしたが、むしろこれからは「アルコールが入っていないことがプラスだ」というくらい積極的に利用していくといいと思いますし、今缶コーヒーが「朝用」のものがあるように、「元気になるノンアルコールビール」「くつろぎたいのノンアルコールビール」など、さまざまな特徴があるノンアルコールビールが出てくるといいと思います。

在宅ワークは、誰に見張られているわけでもありません。
香りをかぐことで元気になったり、生産性の向上に結びつくなら、どんどん利用していくといいと思います。もちろんお茶がいい人はこれまで通りお茶でも問題ないですし、仕事をするときの相棒のひとつに「ノンアルコールビール」という選択肢はもっと入ってきてもいいと思います。
自分が快適に効率よく仕事をするためのひとつの手段として、意外と使えるものですよ。

 

【ちなみにこんな調査結果も出ています】


サントリーの調査結果によると、意外と多くの方が日中のさまざまなシチュエーションで「ノンアルを飲んでもOK!」と思っているよう。たとえば在宅勤務の気分転換には3.8人に1人がOK、オンライン会議の息抜きには4人に1人がOK …などなど。「仕事の合間にノンアル」、これからまだまだ浸透していきそうです!

お話をうかがったのは…
古賀良彦先生
慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部精神神経科学教室入室。
76年杏林大学医学部精神神経科学教室入室。95年同大学教授。2016年同大学名誉教授。
TVや新聞など、数多くのメディアで活躍している。
取材協力/サントリー
構成/後藤香織

 

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