ここ最近、あなたは「キレた」ことはありますか?
そして「キレる」人を見かけたとき、どのような感情を抱きますか?
近年、あおり運転や児童虐待など、「怒り」を抑えきれずに社会的事件に至ってしまった……というケースが数多く見られます。
そんな社会情勢の中から生まれた1冊が、脳科学者の中野信子さんによる『キレる!』
「人はなぜ怒り、そしてキレるのか」のメカニズムを解き明かし「キレる人」「キレる自分」に必要以上に振り回されずに、うまく怒りを活用していく内容になっています。
今回はその中から「怒る人への対処法」そして「自分が怒りを感じたときに有効な方法」をご紹介します。
【1】怒る人への対処法
◆面倒な人だと思わせる
相手に「私はあなたにたたただ攻撃されるだけの対象にはならない」と知らしめるためには、じっと黙っているのではなく「攻撃するのは面倒だ」と思わせることが有効です。
たとえば会社の上司からセクハラのようなことを言われたら
「私が男でも、そのようなことをおっしゃいますか?」
「上司が部下にそういうことをおっしゃるのはコンプライアンス的にいかがでしょう?」
など、相手にうしろめたさを感じさせる言い回しをすることが重要です。
◆相手の言葉尻に反応しない
売られたケンカを買うと、確実に損をします。真面目な議論であればきちんと返したほうがいいこともありますが、ちょっとしたことが原因の売り言葉であれば、ふっと力が抜けるようなことを返すのも得策です。
たとえば人は「どうしてゴミ捨てくらいやってくれないの?」と言うときは「どうしてやらなかったのか」を聞きたいわけではなく「ゴミ出しをしてほしかった」と伝えたいケースが多いものです。
こんなときに「今日は疲れているの? コーヒーでも入れる?」などと言うことができれば、いらぬケンカを買わずに済みます。
さらに「どうして全然●●してくれないの?」と言われると「あれもこれもやっているじゃないか!」と思うかもしれませんが、これも「言葉尻に反応して自己防衛をする」ではなく「そんなに切羽詰まっているんだね」と理解を示すことができれば、ケンカに発展しないこともあります。
売り言葉の理由は必ずあるので、その言葉自体に反応するのではなく、言葉を発した理由に共感して一緒に解決しようという姿勢を見せるか、相手に攻撃の理由を示すことで、相手に自覚させて理性が働くのを待ちましょう。
これはカウンセリングの技術としても使われています。カウンセラーは患者に「どうして先生はそういうことをおっしゃるんですか」と聞かれたときに「それはね」と直接答えずに「そういうことを聞きたい気分なんですね?」と返すそうです。
【2】自分が怒りたくなったときの対処法
◆持ち上げてから、人格を責めず行動を指摘する
たとえば協力しあうことが必要な場面で、ルールを守ろうとしない相手に対してはどうしても怒りたくなってしまうものです。
そんなときは最初に「相手を責める」から始めるのではなく、まずはとにかく盛大に称賛の言葉をかけて持ち上げます。相手がいい気分になったところで、ルールを守らないことに対してだけ「あれはないよね」とさらっと伝えます。
相手の人格や性格にはふれず、直してほしい行動だけを「あれはまずいよね」と伝えることは、相手に軽くうしろめたさを感じさせるよい方法です。
◆「私は」を主語にして伝える
「アサーション」という、「相手を尊重しながら、自分の感情や主張したいことを抑えることなく、お互いのためになる方法や結論を導き出すコミュニケーションスキル」があります。相手も自分も大切に扱うのが特徴で、意見がぶつかっても、すぐに自分の意見を曲げることも、相手に意見を強制することもありません。
ポイントは意見がぶつかったときは「私は~と思う」と、「私」を主語にして伝えることです。これにより、自分の感情を素直に表現でき、相手を責めているのではない、という姿勢なので、相手からのリベンジを避けることができます。
たとえば同じことを伝えるにしても
「なぜあなたは●●なんてひどいことを言うの?」
と言うと、相手は責められていると感じ「君だって言ったじゃないか」とケンカになってしまう可能性があります。
一方で
「私は●●なんて言われてつらい。もう言わないでほしい」
という表現に変えれば伝わり方も変わりますし、「もう言わないでほしい」という、本当に伝えたかったことを伝える目的にも近づけます。
他にも「相手が約束を守ってくれないことで言い合いになった場合」は
「私はあなたとの約束の時間に合わせて、いろいろと計画を立てていたんだよね。楽しみにしていたんだけど、全部無駄になってしまって悲しいな。何時だとよかったのかな?」
などと基本的に「私は」を主語にすることで、反論しようとする気持ちは起きにくくなります。
ポイントは
・約束を破られた直後に言う
・相手の機嫌がよいときに言う
です。相手が空腹だったり、ストレスを抱えていたり、眠たそうなときはセロトニンが不足しているタイミングなので、必要以上に責められていると感じてしまいます。
『キレる!』の本書内では他にも「普段はおとなしいのに、突然攻撃的になる人」「嫌がらせするママ友」「知人には優しいのに店員さんにはキレやすい人」「最近キレやすくなった気がする自分をどうすべきか」など、さまざまなケースをもとに対処法を紹介しています。
「怒り」や「キレること」に対して困ることがある方、悩んでいる方は、是非一度お手に取ってみてくださいね。(後藤香織)