理想の結婚相手は大谷翔平です【がんばらないWワーク女子・千絵③】

【ゆとり以上バリキャリ未満の女たち】第8弾「がんばらないWワーク」Vol.3


「ゆとり以上バリキャリ未満」を生きる女子のルポルタージュ連載の第7弾がスタート!

今回の主人公は、28歳の千絵。千絵の長所はおじさんウケがすこぶるいいこと。保険の外交員をやっても、ゴルフに行っても、そつなく接して、近すぎず離れすぎずの距離感を上手に保つ。短所は理想が高いことと飽きやすいこと。だから彼氏ができにくく長続きしない。こんな千絵が幸せになれる場所はどこに?

>Vol.1「2年目で会社辞めました」を読む

>Vol.2「頼りになるのは『ゴルフおじさん』」を読む

●中田千絵(28歳)人材紹介会社勤務

1990年 千葉県出身、中野区在住(1人暮らし)
短大在学中からイベントコンパニオンやモデルのアルバイトを始める。卒業後、生命保険会社に就職し1年半で退社。現在の会社(人材紹介会社)は2年め。
似ているタレント:山本彩(NMB48)
理想のタイプ:大谷翔平
パートナー:なし
手取り月収:25万円

「がんばらないWワーク」Vol.3【遊ぶのにも飽きたから】

■理想が高いにもほどがある


「今後どうしていきたいのか」と自分に問いかけてみても答えはわからない。1つ確実なことは、貯金はちゃんと増えているということ。依然として自宅住まいだし、外食で自腹を切ることはあまりないので、千絵の貯金は500万円にまで増えた。

 

ゴルフおじさんとの旅行は今も行っているが、それに加えて、仲良しの母親との旅行も増え、それも最近の楽しみだ。年末年始はふたりでドイツ・フランスへ。そして春はプロ野球のキャンプ観戦を兼ねて沖縄にも行った。母娘揃って選手と写真を撮ったりサインをもらったりした。こちらの旅行は全額母持ちだ。

 

合コンのほうも続けている。「野球好き」という千絵のプロフィールは、飲み会の場で男の子と話しが盛り上がりやすく、そこからデートへという流れもできやすい。野球観戦はふたりだけでも密室感がないし、お酒を飲みながら健康的に楽しめるので千絵の好きなデートパターンだ。

けれど、そこから先が続かない。野球を観戦していると、目の前でプレイしている選手のほうがカッコいいし収入も多いし、とかどうでもいい比較をしてしまう。そして隣の男にがっくりしてしまう。
とにかく理想と現実の差に気づいて冷めてしまうことが多い。それもあって、社会人になってからというもの3ヶ月以上つきあった彼氏はゼロだ。

 

「直近で付き合ったのは、合コンで知り合った30歳の会社社長。よく2人でゴルフデートをしてたけど、やたらと『俺、うまいでしょ』『もっとホメて』とアピールしてくる。これがゴルフコンパニオンの仕事ならいいんだけど、デートとなると完全アウト。一瞬で冷めました。もう一緒にゴルフに行かないって私が言ったら、LINEスタンプが100連発くらい送られてきて怖かった。もちろん即ブロック」

 

こんな自分のことを千絵は「男運が悪い」「飽きっぽい」と言い、仲間は「理想が高すぎる」と言う。

 

「わかってます、わかってます。そんな人なかなかいないって。顔がよくって、スポーツができる人。それから、性格がいい人。理想は大谷翔平です」

 

かつてはよく言っていた。付き合うなら野球選手かサッカー選手か、芸能人がいいと。実際そういう人と飲み会で一緒になったこともあるし、友達の中にはゴールインした子もいる。でも、大谷翔平が世の中に出現してからは、ほとんどの男がショボく見えてきた。「理想が高いにもほどがある」と女友達は笑うけど、それが千絵の本心だ。

 

■遊ぶのにも飽きたから


30歳までにスポーツ選手か芸能人の彼氏をつくる。それがかなわないなら、都心で1人暮らしをする。それがいつしか千絵の目標になっていた。30歳まであと2年を切ったとき、千絵は1人暮らしのほうを先に実現させた。

 

これまでの貯金から引っ越し費用を捻出したが、毎月10万の家賃を払うには、コンパニオンのアルバイトだけでは心もとない。それで5年ぶりにフルタイムの仕事にもついた。再就職活動はせず、ゴルフおじさんの仲間の人材紹介会社を紹介され、そこで経理事務をやっている。

 

「就職したのは、遊んでばかりいるのにも飽きてきて。旅行もゴルフもあんなに行ってたのに、なんだか疲れてきちゃった。そこですぐ結婚できたらいいんだけどそうもいかないので、とりあえず仕事します。

 

仕事が楽しいとか合ってるかどうかとか、考えたことはないです。5時半までちゃんと働いて、そして合コンに行くだけ。今日もこれから、商社の男性と2:2で食事です。相手も野球好きだと聞いてるんで話が合うといいんですけど。あ、でももうそのハードルも下げようかな。スポーツ好きならいっか」

 

千絵よりお酒が強いことも絶対条件だと思っていたが、それも緩めてもいい。身長制限もそろそろ取っ払おう。ビジュアルがよくて、実力もあって。いつかそんな二刀流の男性に巡り会えると思っていたけど、これまで数百回の合コンでは出会えなかった。回数が足りないのか、千絵自身に問題があるのか。そこを考えるのは、今のところまだ避けて通っている。

男性の条件のハードルを少しずつ下げながら、千絵は自分に言い聞かせる。

「大谷翔平みたいな人はそうそういないんだから。そろそろ気づこうよ、私」

 

 

 

文/南 ゆかり
「CanCam」や「AneCan」、「Oggi」「cafeglobe」など、数々の女性誌やライフスタイル媒体、単行本などを手がけるエディター&ライター。20数年にわたり年間100人以上の女性と実際に会い、きめ細やかな取材を重ねてきた彼女が今注目しているのが、「ゆとり世代以上、ぎりぎりミレニアル世代の女性たち」。そんな彼女たちの生き方・価値観にフォーカスしたルポルタージュ。

 

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