「市川さんの作品を読めば、世界が平和になるのに! 」作家・市川拓司×女優・樋口柚子対談

『いま、会いにゆきます』『恋愛写真 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』、そして『こんなにも優しい、世界の終わりかた』―――累計258万部を売り上げた、大ベストセラー作家・市川拓司さんによる4年ぶりの書き下ろし純愛小説が登場! 市川さんの小説を毎日持ち歩くほどのファンだという女優の樋口柚子さんが、とことん優しい「市川ワールド」の秘密に迫ってきました!

 

市川拓司(いちかわ・たくじ)
1962年、東京都生まれ。2002年『Separation』でデビュー。03年刊行の『いま、会いにゆきます』はミリオンセラーとなる。他の作品に『そのときは彼によろしく』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』などがある。
樋口柚子(ひぐち・ゆず)
1996年、東京都生まれ。2011年日韓アートフェスティバルで上演された映画『愛のしるし』(2011年)で映画初出演、初主演を務め、女優としての活動を開始。ドラマ『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(日本テレビ/2016年)、『咲-Saki- 特別編』(TBS/2016年)、映画『咲-Saki-』(2017年)に出演。明治『チョコレート効果』、パーソルキャリア、アルバイトニュース『an』などの広告のほか、ORANGE POST REASON 『風しるべ』(2016年)のMVなどに出演。9月22日より全国公開の映画『あさひなぐ』に寒河江純役で出演している。

 

樋口柚子(以下樋口) 高校2年生のとき、本屋さんで美しい表紙が目に止まり、『こんなにも優しい、世界の終わりかた』を手に取ったのが、市川さんの作品との最初の出会いです。本はその日の夜、いっきに読みました。こんなにも優しい世界があるんだ! これはすべての本を読まなきゃ、って。今では毎日、市川さんの著書を持ち歩いて、優しい世界にすっかり染まっています。

 

市川拓司(以下市川) よく出会ってくれました。樋口さんはいま何歳ですか?

 

樋口 21歳です。

 

市川 その年の女性だったら、『恋愛寫眞』も好きですか?

 

樋口 大好きです。映画化された『ただ、君を愛してる』も観ました。

 

市川 宮崎あおいちゃん、完璧でしたね。小説の世界観がしっかり映画に反映されていて、エンディング曲もよかった。どれもこれも、いい出会いに恵まれた作品です。

樋口 市川さんの新作『MM』もすでに3回読みました。今回も優しくて癒しの世界でした。今までよりファンタジックな世界観が少なく感じたのですが・・・?

 

市川 『MM』は樋口さんのような今の若い人たちに読んでほしい、と思ったんです。その場合、ファンタジーよりは学校ものだろうなと。『MM』を書こうと思った大きな動機は映画『ペーパータウン』のカーラ・デルヴィーニュ。この作品のカーラがかっこよくて、彼女のような女性を書きたい、と思ったんです。

 

樋口 桃ちゃんがカーラ・デルヴィーニュ?

 

市川 そう! でも、実際には2000年くらいの設定にしたので、そのころの時代でカーラ・デルヴィーニュ的な存在は誰かな、と考えて、ブルック・シールズをモデルにしました。

 

樋口 桃は高校生なのに、洗練されていますね。

 

市川 日本の女子高生にいたら、浮くでしょうね。高校時代の恩師に言われました。「高校生がこんな気の利いた会話しないよ」と。でも、海外の15歳ってこれくらいの会話するんですよ。

 

樋口 市川さんの作品の世界観はいつも日本じゃないような、おしゃれな印象を受けます。

 

市川 子どものころから外国の映画や翻訳本を読んで育ったので、向こうにかぶれているわけですよ。本を読むとき、なるべく現実から離れたいんですけど、日本のものだとどうしても戻されてしまう。そんなとき、シカゴ、ブルックリンとか〝ミシガンの風〟みたいな表現が出てくると、かっこいい、どんな風なんだろう、ってワクワクしながら読んでいました。だから、自分の作品でもなるべく異国情緒やファンタジーを感じられるように、国籍不明にしています。

 

樋口 何かオススメの映画はありますか?

 

市川 どんな映画が好きですか?

 

樋口 邦画が多いです。市川さん原作の『いま、会いにいきます』は何度も観ました。「いま会い」の竹内結子さんを見て、この世界に入りたいと思ったんです。

 

市川 『恋愛寫眞』が好きなら、外国の映画でも楽しめるのがたくさんありますよ。『ぼくとアールと彼女のさよなら』はオススメです。この作品は全米№1ヒットにもなりましたし、サンダンス映画祭で大賞と観客賞をW受賞したんです。じつは『MM』も、サンダンス映画祭を意識しています。もし映画化されたら、サンダンス映画祭で観客賞を取りたいんです。それくらい、向こうの観客がウケてくれるような気の利いた会話をめざしました。先ほど挙げた『ペーパータウン』はいいんですけど、日本語版がないんですよ。『ウォールフラワー』も若い女の子向けだと思います。

 

樋口 『ウォールフラワー』は観ました。主人公の友達(エズラ・ミラー)にすごく目を引く人がいました。

 

市川 あの男の子、素敵ですよね。『少年は残酷な弓を射る』でも彼のあやしい魅力が光っていました。彼はゲイであることをカミングアウトしているんですが、あの曖昧さや中性的な雰囲気から目が離せなくなるんですよね。ヤングアダルトものを映画化したのは入り口としては、いいんじゃないか、と思います。

樋口 ありがとうございます! 市川さんの作品にはたくさんの映画や音楽が登場するので、これからひとつずつ追っていきたいです。

 

市川 樋口さんはどんな女性なんですか?

 

樋口 どんな人間でしょうか。難しいです。クラスで目立つタイプではなく、教室の隅っこで本を読んでいるような生活を送っていました。マイナスな感情がふくらむと、止まらなくなるようなところもあります。

 

市川 自分もそうです。樋口さんと同じ年のころは、半年くらい引きこもっていました。どうしても人に批判されることが多い人生だったので。いまでもそうです。好きなおもちゃと植物に囲まれて、ゴージャスな引きこもりと言っています。でも、傷つきやすくていいんです。傷ついた人はその分、人にやさしくできるから。

 

樋口 みんな市川さんの作品を読めば、世界が平和になるのに! って、いつも思うんです。だから、会う人、会う人に薦めています。

 

市川 そう言ってくださるのは、涙が出るくらいうれしいです。信じられないくらい平和が好きで、そこが自分の小説の根底にあります。「世界の優しさの総和を増やす会」というのを勝手にやっているんです。こんな時代に、優しくしようよ! って叫び続ける人がいないとなし崩しになってしまう。自分は小説を通して、優しさを返していきたいと思っています。

 

樋口 私も女優という仕事を通して、大きな優しさを発信していきます!

 

写真/藤岡雅樹 文/加藤秀和

『MM』著/市川拓司 1500円+税(小学館)

『MM』
著/市川拓司
中学3年生のぼくは、夏休みのある日、駅前通りの本屋で「ハリウッドで脚本家になるための近道マップ」という600ページもある翻訳本を立ち読みしていた。
本に没頭していると急に肩を叩かれ、ぼくは飛び上がった。
恐る恐る振り返ると、そこには彼女がいた。
南川桃(モモ)。同じクラスにいたけど、一度も口をきいたことがない女の子。
女子のヒエラルキーでも頂点にいるのが当たり前のようなその子が、そのあとぼくに頼んできたのは、伝記を書くことだった。
「伝記? だれの?」
「わたしの」と彼女は言った。
ぼくと彼女のあいだには、グランドキャニオン級の深い溝が広がっている。
それを越えることはとてつもなく難しい。
それでもぼくは、モモとの約束を果たすため、そしてこの「仕事」を完遂するため、ひっそりと、彼女へのインタビューを続けた。
著者渾身の作品! これ以上ない青春物語!
この愛が、どうか世界中の人々の心へ届きますように。
いま、社会が抱えるさまざまな問題にも通じる、愛と平和を願うメッセージがこめられています。
大ベストセラー作家によるまったく新しい「ぼくときみの物語」がいつか、世界を変えてくれるかもしれません。