朝起きてから夜寝るまで、私たちの生活になくてはならないものといったらスマホです。
かわいい写真を見ることができたり、友達とトークできたり、知らない人とつながることができたり、わからないことを調べたり……。とても便利なスマホですが、その裏で様々なトラブルが起きているのも事実ですよね。
というわけで、私たちが巻き込まれがちなスマホのトラブルに関して、東京フレックス法律事務所の中島博之弁護士に相談していきたいと思います。
前回の写真・文章・イラストが無断で使われた場合の対処法に続きまして、3回目の質問はこちら!
友達がTwitterで誹謗中傷されてます!まったく身に覚えのないことまで言いふらされたりも……。
これって相手は罪に問われないんですか。名誉毀損なのでは……。(27歳・女性)
とってもイヤな気分になりますよね……。こんなとき、いったいどうすれば……。
教えて!中島先生!
■弁護士に聞く、SNSなどで誹謗中傷された場合の対処法
「ご回答いたします。刑法では以下のとおり名誉毀損罪について罰則が定められています。
刑法第230条第1項
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」
「ここでいう「公然」とは不特定または多数の人が認識し得る状態を言います。そして、実際に誰かが認識する必要はなく、認識されうる可能性があれば足ります。インターネット上にツイートし、誰でも見ることができる状態にすることは公然性の要件を満たすと考えられます。また、「事実」とは、具体的な事実を言い、投稿内容が意見や論評の類のものであれば、侮辱罪等の問題となります。したがって、本件では、単なる罵倒(●●は馬鹿であるなど)であれば、侮辱罪の問題となり、具体的事実を引用しての罵倒(●●は単位を落として留年したなど)であれば名誉毀損罪の問題となります」
ということは、罪に問われるってことですよね! ちなみに名誉毀損って具体的にはどういうことを言うんですか?
「『名誉を毀損』とは、人の外部的名誉を傷つけること、つまり、人の社会的評価を低下させることを言います。また、実際に社会的評価が下がったことまでは必要がなく、社会的評価を低下させる恐れのある事実の摘示があれば名誉毀損罪は成立します」
名誉毀損発言をした場合でも、許される場合があるのでしょうか? 本当のことを記載しても罪になるのでしょうか?
「社会的評価を低下させる恐れのある事実を記載すれば、記載した内容が真実でも名誉毀損罪の構成要件に該当します。しかし、公益を図るため、公共の利害に関する事実を記載し、当該事実が真実であることの証明に成功した場合は、違法性が阻却され、罪に問われません(刑法230条の2第1項)。また、真実であることの証明に失敗した場合でも、「名誉毀損罪をはじめ、犯罪の成立には故意が必要であり、例えば、「行為者がその事実を真実であると誤信し,その誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らし相当の理由があるときは,犯罪の故意がなく,名誉毀損の罪は成立しない」(最高裁判所昭和44年6月25日判決)とされています。なお、本件のように公的な立場にないような個人への中傷は、上記の違法性が阻却される要件には該当しないと思われます」
ツイッターの投稿でも当然名誉毀損罪は成立しますよね??
「本件のようなインターネット上の投稿でも、次のとおり、通常の名誉毀損罪とかわらず判断されることが裁判例上明らかとなっています」
「インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても,他の場合と同様に,行為者が摘示した事実を真実であると誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り,名誉毀損罪は成立しないものと解するのが相当であって,より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない」(最高裁判所平成22年3月15日判決)。
「つまり、出来心であったとしても、犯罪が成立するか否かはインターネットの投稿だからという理由で、その判断が変わるわけではありません」
ちなみに、「これってなんとなく私の悪口かも!?」と思うような投稿もあるのですが、そういう事に関してはどうなんでしょうか?
「あなたが名誉毀損罪の被害を主張したい場合、問題となっている当該投稿があなたについて書いているという同定可能性が必要となります。
例えば、山田太郎さんが誹謗中傷された場合、全国に何万・何千人といる山田さんのうち、どの山田さんの権利を侵害したかの特定が必要となります」
なるほど! 具体的には?
「本件であれば、twitter上で特定の人物に向けられた中傷であることが投稿上分かる場合、具体例としては、自身の写真アイコンを使用して実名でtwitterを利用しているユーザーに対する誹謗中傷や●●大学の●●(実名)など人物が特定できる情報をあわせて記載している場合などが考えられます」
なるほど、じゃあ誹謗中傷している人はみんな罪に問われるんですね!
「名誉毀損罪は親告罪ですので(刑法232条1項)、犯人を処罰して欲しいと告訴する必要があります。
また、形式的に違法となる場合でも、犯罪として警察に捜査してもらうとなると、実務上、より強度の権利侵害性が必要となる場合があります。twitter上では無数のtweetが存在し、警察も人的限界があるため、違法なものを全て捜査することはできません」
ま、まぁそうですよね……。
「したがって、他人の身体・財産に危害を加えるような発言、企業の業務を妨害するような発言、実際の逮捕例ですと、犯罪を犯して指名手配されていると投稿するなど、その人物の名誉を著しく毀損するような発言等、強度の権利侵害性がなければ、実際に警察に捜査を行なってもらうことが難しい場合があります。
なお、実際に警察に動いてもらえそうにない場合でも、自身で民事裁判を起こし、犯人を特定し、不法行為責任を民事上で追及することも考えられます」
そんなこともできるんですね!
「その場合の手順は次のとおりです」
・日本の裁判所において、アメリカのtwitter.incに、発信者情報の開示を求める仮処分又は訴訟を行なう。
・開示された発信者のIPアドレスをから契約しているプロバイダーを特定し、当該プロバイダーに契約者情報の開示を求める訴訟を提起する。
・また、本件のような迷惑行為をtwitterに通報したい場合は、以下のtwitter内の「嫌がらせや迷惑行為の報告」フォームから報告を行ないます。
https://support.twitter.com/forms/abusiveuser
「当該投稿がtwitterの規約に違反する内容であった場合、アカウントの凍結や当該投稿の削除が期待できます」
なるほど! いろいろ勉強になりました!
便利だけれど一歩間違うとトラブルに巻き込まれてしまうスマホ社会。そんなスマホにまつわる法律相談を受け付けています。
ぜひあなたのお悩みをお寄せくださいね。(高木美樹)
【中島博之弁護士】
2010年 衆議院議員秘書
2011年 弁護士登録
■主要取扱業務
企業法務、知的財産法、インターネット上の権利侵害投稿の削除業務、スマートフォン向けアプリに関する法律問題、スマートエネルギーに関する法律問題
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