2015年『太陽に笑え』(フジテレビ系ドラマ『サイレーン刑事×彼女×完全悪女』主題歌)で彗星のごとくミュージックシーンに登場した20歳の歌姫・Anly(アンリィ)。
人口約4,000人の沖縄県・伊江島出身。沖縄本島からフェリーで約30分に位置する風光明媚な島で過ごした彼女は、中学卒業までPCもインターネットも家になく、音楽好きの父が持ち帰るブルースやロックのCDを聴き、ギターがおもちゃ代わりという幼少期を過ごしてきたそう。
デビューから約1年半。ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ)のエンディングに起用された『この闇を照らす光のむこうに』をはじめ、全14曲を収録した、初にしてベストに近いフルアルバムをリリース。
そんなAnlyさんに初インタビュー。
ツイッターに“早く春が来ないかな”というつぶやきがあったので「寒いのは苦手ですか?」とたずねると、「苦手です(笑)。心のつぶやきをツイートしたら、みなさんが励ましてくれました(笑)」と言いながら、やわらかな笑顔を浮かべるAnlyさん。
やわらかな日差しが差し込む窓際で、4年来の相棒“ギター”と撮り下ろした写真とともに、音楽のこと、沖縄のこと、そしてプライベートのことをたっぷりお聞きしました。
┃人気ドラマ『日暮旅人』のエンディング曲に隠された真実とは
CanCam.jp編集部(以下、CCJP) これまで発売してきたシングルの多くが、ドラマやアニメなどで使われてきていることもあって、初アルバムではありますが“ベスト”のような一枚ですね。どんな想いを込めて作ったアルバムでしょうか。
Anlyさん(以下、Anly) 初めてのアルバムということで、“Anly”がどんなアーティストかというのが一発でわかるような一枚になって欲しいなと思って作りました。それもあり、一曲目にはデビュー曲の『太陽に笑え』から始まって、私の故郷(沖縄)のことを歌った『Come Back』で締めくくる……私らしい曲で始まり私らしい曲で終わるという、ストーリー性のある曲順になっています。
CCJP 収録曲のひとつ、ドラマ『日暮旅人』のエンディング曲『この闇を照らす光のむこうに』も注目が高い楽曲でしたが、最終回に主人公の“旅人”の耳が聞こえるようになる……という内容と、タイトルにある「闇」の中に「音」が、希望につながっていると感じさせる印象的な曲でしたね。
Anly 旅人には視覚以外の感覚がなくて、闇の中に閉じこもって出られなかった旅人が、周りからの温かい愛を受けて、人の心の温かさが本当に見えるようになるんじゃないかなって、期待と願いを込めて書いた曲です。私もドラマを観ていましたが、最後に「音」が聞こえた瞬間は本当に泣けました。
CCJP これまでの曲はもちろん、シングル以外の曲もたくさん入っていますが完成するまでにいちばん苦労した曲は?
Anly 収録している曲は、今回のアルバムのために作ったわけではなく、高校生の時から書き溜めてきた曲から、私が「早く出したい」と思った曲、そして「バンドレコーディングをしたい」と思ったものを選曲して形にしたので、大変だったというよりも嬉しい気持ちのほうが大きいです。
CCJP やっと日の目をみた……という感じなのですね、Anlyさんは曲と歌詞はどちらが先行ですか?
Anly 環境によって変わります。沖縄にいる時は歌詞からというのが多かったですが、東京に来てからはメロディーが先のほうが多いですね。自然と変わったという感じです。たぶん……沖縄は街が静かで、東京は夜にサイレンが鳴っていたり、人の話し声が聞こえたりと、ずっと何かしらの音が聞こえる状態で、音の刺激が多いからなのかなと思います。東京にいると、私の中に音がたくさん入ってくるのでメロディーができやすいんだろうなって考えてます。
┃東京で作るAnlyの曲は、バスに揺られながらメロディが生まれる
CCJP 東京では、どんな時に曲が生まれやすいですか?
Anly バスに乗ってる時に思い浮かぶことが多いかもしれないです。私はバスに乗るのが好きで、別に用事もないけど「バスに揺られに行こうかな」ってことがよくあります。電車よりも、できればバスに乗って移動したいです。バスは、揺れが心地良いのと、陽の当たる明るい街の中を走っているのが好きなんです。
CCJP これまでいろいろなドラマやアニメなどに使われてきたので、たくさんの人の耳に入るきっかけも多かったと思いますが、ご自身では反響を実感される場面がありますか?
Anly 以前よりもSNSのコメントが増えたり、インストアライブに行った時、会った方から直接「あの曲を聴いてから好きになりました」とか、「この曲を聴くと元気になるんです!」という声を聞くことで、「ああ、私の想いが伝わっているんだな」って思うことが本当に多くなりました。高校生の時、沖縄で路上ライブをしていた頃は、いつも見に来てくれる顔見知りの人たちが応援に来てくれているという感じだったのが、デビューしてからは初めてお会いする方も増えて、それがとっても嬉しいです。
CCJP 曲を聴いてくれた方の言葉が直接聞けるのは嬉しいですよね。Anlyさんの歌詞は実体験を元に書かれることが多いですか?
Anly 実体験は半分ぐらいです。なかには、私の実体験だけでなく、友だちの話を聞いて作った曲もありますし、本を読んでそこからインスピレーションを得て書いた曲もあったりします。
CCJP 『傘』とか『レモンティー』のような甘酸っぱい恋の話があったり。年上男性への憧れの想いをつづった『さなぎ』もありますが、個人的には『笑顔』の曲調と歌詞にすごく共感を覚えました。どんなふうに生まれた曲ですか?
Anly 『ぼくのいのち』というドラマ(読売テレビ・日本テレビ系スペシャルドラマの主題歌)の書き下ろしですが、台本を読みながら“笑顔”がキーワードになっていると感じたんです。私の周りには私を笑顔にしてくれる人がたくさんいて、私を笑顔にしてくれるのはどんな場所だろうと考えた時、それは私は故郷・伊江島だなと思いました。この曲の制作中に伊江島に帰る機会があって、伊江島を散歩していたら、海の香りに包まれて、近所の子どもたちが「一緒に遊ぼう!」と言いながら走っていく姿とか、いつもは見慣れた光景だったけど、上京して、一度地元を離れてみてあらためて「こんなに素敵な場所で生まれ育ってきたんだなぁ」と実感しました。そう思ったら、すごく嬉しくなったんです。血は繋がってないけど、島に暮らしている人たちが「帰ってきたんだね」と声をかけてくれて私を支えてくれている……そんなみなさんのことを想いながら書いた曲です。島で暮らしていた時には気づかなかった「当たり前じゃない幸せ」を、『笑顔』を聴いて、みなさんにも思い出してもらえたらなって思います。
CCJP 地元を離れてみてわかることって、多いですよね。Anlyさんの曲を聴いていると、沖縄の海や空といった自然を彷彿とさせるというか、そんな広い自然のなかで歌っている姿を想像してしまうのですが、沖縄のことを想いながら曲作りをされることはありますか?
Anly 曲を作る時も、沖縄のだだっ広い空とか海のイメージが浮かぶことが多いですね。それに、離れてみていろんな人が私のことを見守ってくれていたんだと感じるし、たまに母からの電話で「どこどこのお母さんが『曲を聴いたよ』って言ってたよ」と教えてくれたりするので、離れてても心は繋がってるんだなっていつも思っています。
┃上京して約2年。Anlyが東京で驚いたのは「歩くスピードが速いこと」
CCJP 自然に囲まれて約18年間暮らしてきて、東京で2年ということですが、東京の生活には順応できているほうですか?
Anly 私、けっこうできているほうだと思います。寒くなると「やっぱり沖縄がいい」と思うこともありますけど(笑)。最近思うのは、母はいつでも私の帰りを待ってくれているけど、「一生懸命やっているんだったら、いまはそこで頑張りなさい」という、「帰ってきなさい」と言わない優しさもあるんだなって実感しています。もちろんたまに寂しい時もありますが、東京には東京の面白さがあって、私と同じように地元を離れて頑張ってる人がたくさん集まっている街なので、「みんな仲間なんだ!」って思いながら過ごしています。
CCJP 東京にきて驚いたことってありましたか?
Anly ビックリしたのは“歩くスピードが速い”ということ! でもそのスピードに合わせて「私も急がなくちゃ」とは思わなくて、「私は遅いままでいいや」って。だから、それを見越して、ゆっくり歩いていけるように家を出ます(笑)。バタバタと追われるように過ごしていると精神的に余裕がなくなるし、すごい疲れちゃうから……。だから余裕を持って行動してます。ゆっくり歩いて行動しても、絶対に遅刻はしないです! 歩くスピードだけ“沖縄タイム”みたいな(笑)。
CCJP バスに揺られたり、ゆっくり歩かれたり……ということは、もしかして散歩をするのも好きだったりしますか?
Anly すごく好きです! 東京で自然の中を歩く……というより、むしろあえて都会的なところを歩いたり、建物と建物の隙間をのぞいたり(笑)。開かれていない扉とか見つけると、ちょっとワクワクするみたいな。「どこに繋がってるのかな~」ってのぞいちゃいます。私、映画の『ナルニア物語』のような世界観が好きで、その隙間を除いた先がナルニアの世界につながっていたらいいのにって感じで(笑)。
CCJP そう考えながら歩いていると冒険している感じで楽しそうですね(笑)。少し沖縄の話も聞きたいのですが、Anlyさんは中学までインターネットにも触ったことがなかったということですが不便はなかったですか?
Anly クラスの友だち2人ぐらいはインターネットができる環境にあったので、そういう子たちの家に集まってYouTubeを観せてもらったりしていました。でも、自分が観たいもの、最新の音楽を調べようという発想はなくて、父が持っていた音楽のCDを聴いて過ごしていました。私はそれで不便と感じたことが一度もなく、それが普通だと思っていたので。いまはもうスマホでたくさん動画とか観てますよ(笑)。
CCJP 小さい頃はどんなふうに過ごされてきたのですか?
Anly 小さい頃から歌が好きで、夕方、父が仕事から帰ってくると、縁側に座って夕ご飯ができるまでギターを弾く。私はその隣りに座って歌う……という感じ。島の中でも“音楽が好きな家族”みたいに見られていたと思います(笑)。近所の方も「あそこの子は歌が好きだよね」と認識されていたので、縁側で大声で歌っていても何も言われないし、むしろ「あの曲歌って」とか、団地の向こう側に住んでるおじさんにリクエストされたりしてました(笑)。最初に覚えた曲は、エリック・クラプトンの『Before You Accuse Me』。ドライブしながら流れていた曲で、3~4歳の頃かな。耳から入ってきたその曲をなんとなく口ずさんでいたみたいです。
CCJP 二十歳になってまだそれほど経っていませんが、大きく変わったことはありましたか?
Anly お酒もあまり飲まないので、あまり実感がないんです。二十歳になったという意識はそれほど強くないのですが……なんとなく、自分が作った昔の曲に“10代らしいな”というのを感じることはあるかも。高校生の頃に書いた歌詞を見ると「あの頃の発想って面白いな」とか思っちゃうんです。(取材当時)二十歳になってからまだ曲を作っていないので、どんな曲ができるのか楽しみだったりもします。
┃Anlyがひとり暮らしで困るのは“洗濯”。「気がついたら着るものがない!」
CCJP ところで、Anlyさんが最近ハマっているものや「これ美味しい!」と思ったものがあれば教えてほしいのですが。
Anly 「蕎麦を打ちたい」という願望があるんです。他にも、陶芸がしたい、ステンドグラスを作ってみたい、いちご狩りに行きたいとか、いろいろやってみたいことは増えているんですけど、なかでも蕎麦が大好きで、日々、いろんな蕎麦を食べに行ってます。できれば一日に一回は蕎麦を食べたい!と(笑)。一日一食なら、1週間続けて蕎麦を食べるのでも平気です。同じ物をずっと食べていても飽きないタイプですね。
CCJP 現在、ひとり暮らしをされているそうですが、困ったことはありませんか?
Anly 洗濯物がすっごい溜まってしまうこと! 気がついたら「着るものがない!」みたいな感じです(笑)。あとは、「家の鍵、閉めたかな……」という不安で3回くらい確認するぐらい、心配性なところがあって。毎回部屋のカギをガチャガチャしちゃいます(笑)。鍵をかけたことを一瞬で忘れちゃうこともあって、続けて何回も確認したり、駅に向かい始めてからふと気になって戻ったり。もちろんこんなに心配なのは、東京でひとり暮らしを始めてからです。同じように“コンセント”も気になりますね(笑)。
CCJP でも、慎重になるのは悪い事ではないですよね。実際、心配で戻ってみて、鍵がかかってなかったということはありましたか?
Anly それがないんです。やっぱりきちんと鍵はかけてあるんです(笑)。無意識のうちに鍵をかけているのに、かけた瞬間の記憶がないから、心配でもう一回戻るっていう(笑)。
CCJP かなりの心配性ですね。ちなみに、Anlyさんはご自身をどんな性格だと思いますか?
Anly すごくテンションの浮き沈みが激しい人、かな?(笑) 何がきっかけになっているか自分でもよくわからないんですけど……浮いてる時は17歳ぐらいのテンションで「キャー!」って感じで、ドーンと落ちている時は何もしゃべらないみたいな。そういう時、周りのスタッフさんも大変だと思います(笑)。自分でも「あ、いま下がってる」と気づくんですけど、あえて上げようとは思わなくて、自然に上にいくのを待つ感じです。
CCJP そんな時でもメロディーが降りてきたら、やっぱりできあがる曲にも影響しますよね。
Anly (しみじみ)影響しますね……。だけど、テンションが下がっている時にギターを弾いて歌っていると、気持ちがどんどん上がってきて、ちょっといいメロディーができたりすることもあるんです。そういうのに任せて曲作りをしていますね。
CCJP ファッションについてもお聞きしたいのですが、普段はどんなファッションが多いですか?
Anly だいたい『GU』です! 最近の『GU』のアイテムって本当にかわいいですよね。すごく使えるし、リーズナブルだし。それに、落ち着いた女性に見える気がします。
CCJP 落ち着いている女性に見せたい?
Anly そうですね。シンプルなファッションで大人っぽく、落ち着いた感じに見せたいんです。……二十歳になったから(笑)。前はプライベートで柄物も着ていたんですけど、いまでも衣装で着るのは好きですけど、普段着は色もあまり使わないファッションのほうがいいなって。デザインもシンプルに。あ、でも前はパンツスタイルが多かったけど、最近はスカートをけっこう買ってます!
CCJP それは二十歳になったから?
Anly (即答)はい!(笑) 春なので軽めのものがほしくなって、ふわっとした感じのスカートを。まだ少し寒い日もあるので“春の準備”って感じですね。買い物は、誰かと一緒に行くことが多いです。最近は、仲良くなったアーティスの方と映画を観に行った帰りに、服を見て「これ似合うと思うよ」と言われたものを、すぐ買います(笑)。似合うと言われたアイテムをすぐに取り入れる!(笑)
CCJP 買い物では他人の意見を聞いて物を買うタイプ?
Anly ひとりで買い物に行くと、迷って買わないで帰ることが多いので、第三者の意見が欲しくて。だから誰かを連れて行って「いいと思う」と言ってもらったら、「よし、買おう!」って(笑)。それで迷わず買い物ができるとわかったので、友だちと一緒に行くようにしてます。
┃ひとりっこのAnlyが「お姉さん」と慕う、シンガーソングライターの2人とは?
CCJP ツイッターを拝見していたら「ひとりっこだけど、最近たくさんお姉さまが増えたと」ということを書かれていましたね。
Anly 東京に来てからお姉さまが増えました! CanCamでも活躍している“chayさん”(まいさん)にも仲良くしてもらっています。お姉さまたちには「こういうライブがあるんですけど、どう思いますか?」とか「バースデーライブってどんなことをしたらいいと思いますか?」みたいな相談をしたり、ご飯に誘ってくれたり……東京には東京の家族ができたという感じがして、とても嬉しいです!
CCJP chayさんには歌手としてアドバイスをいただくことが多いですか?
Anly そうですね。歌手としての相談が多いです。chayさんはすごく忙しいのでなかなかお会いすることができないので、LINEでやり取りさせてもらっています。とても明るいけど、そのなかにも“強さ”を持っている感じもあって、いつも自分自身と向き合ってる方だなって思います。
CCJP 素敵なお姉さんですね。そしてもう一人は同じレコード会社の“Leolaさん”ですね。
Anly はい! Leolaさんは“太陽の声”という名前の通りの方で、舞台に上がっている時はとても落ち着いていらっしゃるのに、プライベートではすっごく明るいです。まだそんなにたくさんお会いしてないですが、最初に会った時、「この人は本当に太陽のように周囲に笑顔や明るさを届ける人だな」と思ったので、今後も一緒に遊んでいただきたいです。
CCJP 以前、インタビューさせていただいた時、Leolaさんはご自身のことを「ポジティブでよく笑う」とおっしゃっていましたが、AnlyさんとLeolaさんは、なんとなく同じ空気も感じるのですがどう思いますか?
Anly 基本的には似ている部分が多い気もしますが、全然違う部分もありますね。やっぱり育ってきた環境とか、周りにいる方たちも違うので。だけど、ファッションや好きなものはすごく似ているので、本当のお姉ちゃんみたいな感じ! 私はまだ性格に浮き沈みがあるので(笑)、Leolaさんみたいに明るくて優しい人になりたいです。
CCJP Anlyさんが今後、歌手として目指すところは?
Anly 故郷の伊江島で“音楽フェス”を開くことが私の夢です。今回アルバムを発売して、初のライヴツアーも始まるので、そこでバンドスタイルのライブに磨きをかけて、いつか大きく伊江島に恩返しができような、そんなアーティストになりたいです。
沖縄の海のように透き通った、真っ直ぐな声。時に、傷ついた心を温かく包み込み、疲れた心にパワーを与えてくれるような……聴き終わる頃には、自然と笑顔になれるような……そんな不思議なチカラを感じるアルバム。いまのAnlyがギュッと詰まった一枚。自信をもっておすすめします!
(撮影:フカヤマノリユキ/取材・文:さとうのりこ)
Anly 1st Album『anly one』
2017年4月26日(水)リリース
[通常盤(CD)]¥2,700+税
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