桐谷健太、荻上直子最新作でトランスジェンダーの女性演じる生田斗真の恋人役に

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『かもめ食堂』や『めがね』を世に贈り出し、唯一無二の世界観を描く荻上直子監督、5年ぶりの新作『彼らが本気で編むときは、』。

やさしさに満ちたトランスジェンダーの女性・リンコ、そんな彼女の心の美しさに惹かれ、すべてを受け入れる恋人のマキオ。そして二人の前に現れた、愛を知らない孤独な少女・トモ。

荻上作品初出演となる生田斗真さんがトランスジェンダーの女性に挑み、生涯のパートナーとして彼女を支える恋人には、桐谷健太さんをキャスティング。今回、桐谷健太さんのインタビューで、荻上監督との撮影エピソード、そして、トランスジェンダーを演じた生田斗真さんについて話してくれました。

 

┃桐谷健太、荻上直子最新作でトランスジェンダーの女性・生田斗真の恋人役に

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Woman Insight編集部(以下、WI) 荻上監督の現場は初めてですよね。他の監督と大きく違うということはありましたか?

桐谷健太さん(以下、桐谷) やっぱり自分で台本を書いていらっしゃるので、ビジョンがはっきりしていて、物もはっきりと話される方でした。台本を自分で書いていらっしゃることもあって、より信頼感もあるんです。作品全体をよく見えているほうがいいというか、そこで妥協なく言ってもらえるのは大事なことなので。今回順撮りではなかったんです。最初に河川敷を歩きながら帰るシーンを撮ったんですけど、その時、「ちょっと笑いすぎですね」と言われました。自分ではマキオは「やさしい」というイメージがあって、そのやさしさを出そうとした笑顔だったんですけど、監督に言われて、笑うことがやさしさではないなと思って。もっと普通に、マキオの生活感でいったほうがいいなと思ったんです。それ以降は、演出で細かく指示はされませんでしたけど、リンコとトモの3人のシーンで「なんかイメージが違うので、もう1回」みたいな感じは何回かありましたね。

 

WI 具体的に「こうしてほしい」という指示ではなかったのですね。

桐谷 そうですね。「なんかちょっと違うので、もう1回いいいですか?」みたいな。どのシーンかは覚えてないんですけど、何回かありました。でもそれは空気感を撮っていらっしゃるので、「ここをこう変えたらいい」とかじゃないんですよね、きっと。空気全体を見てくるから“なんか違う”と思ったら違うんです。「このセリフをもっとはっきり言ってください」ということじゃなかったけど、その空気感は演じていて分かったので、「なんか違う」という言葉も腑に落ちたっていうか。僕も特に説明もせず演じてみて、結果「いまのよかったね」という感じでした。

 

WI 監督の「何か違う」という言葉に応えるために、どんな気持ちでマキオを演じていたのですか?

桐谷 自分がマキオでいることであったりとか、リンコさんを支える気持ちであったり、包みこむ気持ちだったりを大切にしようと思ったんです。ただ、監督が「もう1回」と言う時は「たしかにもう1回だな」と理解できたし、演じていて「なんかちょっと違ったかも」と思ったらやっぱり撮り直しで、「いまのいけたかも」と思ったのはOKが出たりと、すごくシンクロできてたんです。自然にできたというより、やっていて分かったという感じですね。長回しで撮るシーンが多かったので、そうなると空気感って映像に映りやすいから、そこは自分もかなり大切にしたところですね。長回しでは下手な小細工は通用しないから。もちろんどんな役でもそうですけど、この現場では特にそう感じました。

 

WI リンコとマキオの関係は特殊であり、その関係こそがこの作品の中心になっていると思うのですが、血のつながりがない3人が暮らしながら、距離を縮めたり離れたりという微妙な関係を続きますよね。演じる上で、そんな3人の関係性を保つために気をつけたことはありますか?

桐谷 自分で言うのもあれなんですけど……今回(生田)斗真はかなりチャレンジな役だし、そんな斗真をしっかり支えたいという想いはありました。それに、斗真を支えることは、役を演じる上でマキオにも通じるなと思ったんです。なんで“支えたい”と思ったかというと、斗真は男なので、座り方ひとつとっても周りから細かく言われるわけです。ちょっと足が開いたりとかフィジカルなことを言われながら、芝居もしないといけない。すごく孤独になっていくっていう芝居で、僕は同じ役者だから見ていて分かるというか……それを見て「俺は斗真を支えないと」と思ったし、作品でもマキオはリンコさんを支えなければいけないという気持ちでいたと思うし。それにマキオは、リンコさんを好きだから、リンコさんを傷つける人は許せないみたいなところもあったし。僕とマキオ、斗真とリンコさんがリンクしたところはありますね。僕はいままで自分からガツガツ前にいくような役が多かったんですけど、マキオという役はいままでにない役。でも作品の中でも撮影以外でも、求められていたものがマキオのようなやさしさなのであれば、僕はそれに徹しようと思いました。

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WI ということは、撮影以外でも斗真さんのそばにいることは多かったんですね。

桐谷 よく斗真のそばにいたり、話をしたりしてましたね。撮影の細かいところを話すというのはあまりしていないですけど、監督が「もっと女性に見えるようにしたい」とおっしゃっていたので、「これとかどう?」とか「これもヒントになるかもよ」とか、そういうアドバイスをメールしたりとか。あとは、斗真がやったことに対して「それキレイだよ」って言葉で伝えたりもしてましたね。

 

WI 最初に生田さんのビジュアルご覧になった時はどう思われましたか?

桐谷 実は最初の頃、リンコさんの髪は“ロング”だったんです。まだいろいろ模索中の時で、服も「どんな感じの方向でいく?」という感じ。でも本を読んだ時、「この役は斗真に合うな」と思ったので、撮影も違和感なく入れましたね。こういう台本があって、それをいい作品にしようと思ってる人たちがいて、みんなで「斗真を美しい女性にしていこう」という人間のひとりとして、純粋に「ええ感じやん。もっと所作を覚えていけば、もっと素敵な女性になっていくんちゃうかな」と考えていました。

 

WI マキオはどんな想いで、トランスジェンダーであるリンコと一緒にいると考えていますか。

桐谷 マキオの言葉にもあるように、もはや男も女も関係ないんだろうなって。マキオはすごく小さな頃から母や姉といった女性に囲まれて、女性の怖さや脆さ、弱さをずっと見てきた人なんです。だから女性に対して美化することも、変に憧れを抱くこともなく、もしかしたら一生結婚しないかもしれないと思っていた時に、自分のお母さんの体を拭いててるリンコさんを見た瞬間、本能的に「美しい」って感じたんでしょうね。女性と思ったのに男性だと知って戸惑いはあったでしょうけど、マキオの中で“美しい本物を見た”という感覚でその想いはもう止められなかっただろうし、止める必要もなかっただろうし。周囲がどうこうというのはあってもマキオにはしっかりとした気持ちがあって、もちろんリンコさんを女性として見てるし、女性として一緒にいるんだと思いました。

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WI 印象的なシーンやセリフも多いですが、桐谷さんが思う印象的なシーンや言葉を教えてもらえますか?

桐谷 やっぱ……「ビール発明した人にノーベル賞あげたい」じゃないですかね(笑)。いいセリフですよねあれ。僕、ビールが好きなんです。“ビーラー”っていうんですか?(笑) 最近はいい大人になってきたので、ラムとかをそのまま舐めるようにして飲んでますけど、とりあえず最初の一杯はビールですね(笑)。

 

WI この映画のいちばんの魅力はどこにあると思いますか?

桐谷 この作品自体を僕はすごく面白いと思ったし、完成してみていい作品になったなと実感しました。この作品は、いろんな立場の母親が出てくるんですね。たとえば、小池栄子ちゃんが演じてたような母親もいらっしゃると思うんです。誰が正しくて誰が間違ってるとかはなくて、それぞれの人生があって、できるだけみんなが心地よくそれぞれの違いを認め合いながら生きられたらそれがいちばんですよね。その中で、リンコさんは血のつながってない子の母親になれるのかと問われるところはあるかもしれないけど、いろんな母親が出てきて、女の強さや弱さが見られて、そういう両局面が見られるのは監督が女性だからこそなのかもしれません。それにこの作品はそこが魅力だと思います。実はマキオって、そんないろんな母に囲まれて、たまに振り回されもしているんですよ。だからマキオがいなかったら大変だったんじゃないかなぁ……。マキオ本人はそういうつもりじゃないだろうけど、マキオはみんなのまとめ役であり、受けいれ、包み込むような男のやさしさを持っている人なんですよね。

 

WI リンコとの出会いはマキオの人生を変えたのですが、桐谷さん自身「人生が変わるほどの出会い」は?

桐谷 ホンマのことを言うたらみんなですよ。大小はあると思いますけど「あの出会いがなかったらこの出会いもなかったよな」という感じ。たった2センチの階段だけど、その2センチがなかったら次の段にはいけなかったなっていうのであったり、逆に段差がすごい大きかったりとあるけど、それがすべてたくさんの人につながってる。だから、人生において、人との出会いに大きいとか小さいとかはないですよね。

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第67回ベルリン国際映画祭“テディ審査員特別賞”“観客賞(2nd place)”をダブル受賞(パノラマ部門、ジェネレーション部門 正式出品作品)と、公開前から話題の本作。

大切な人とのつながりを確かめ合いながら、かけがえのない時間を送る人の姿を描き、「ありのままでいいんだ」という荻上監督からの熱いメッセージも込められた極上エンターテインメントを、ぜひ劇場で。(さとう のりこ)

『彼らが本気で編むときは、』
新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか、全国公開中
http://kareamu.com/

[脚本・監督]荻上直子
[出演]生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、りりィ、田中美佐子ほか
■配給:スールキートス

(c)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

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