■佐藤流司が考える「2.5次元舞台」の面白さ。そして“自分らしさを消す”理由
Woman Insight編集部(以下、WI) 役者として「個性」を重視しようと考え始めたのは、何かきっかけがあったのですか?
佐藤流司さん(以下、佐藤) 役者を始めた頃、「どういう俳優になりたいか」といった指標がなかったんですが、今までいろんな方と共演させていただき、芸能界という世界に触れた時、「勝てない人が多すぎる」と思ったんです。顔もスタイルも勝てないし、歌や芝居のスキルもそう。この業界で生き残っていくのは本当に難しいことだと実感しました。「このままだとすぐに埋もれて芸能界から消えてしまう」と思って、だったらどうすればいいのかと考えたんです。それで思いついたのが「人と違うことをする」ということでした。とにかく、カリスマ性がほしかったんです。「役者として、誰も真似できない存在になりたい」と思ったのが最初です。
WI それは言い方を変えると、役者として“佐藤流司らしさ”を見つけることでもあると思うですが、特に「2.5次元舞台」では、“佐藤流司らしさ”も大事ですが、原作のイメージを壊さないというミッションも課せられてきますよね。そういった制限がある中で、一貫して心がけていることはありますか?
佐藤 他の役者の方を見ていると、その人“らしさ”に一本筋が通ったものを感じるし、実際、そういう方が多いです。でも俺は、2.5次元舞台に限っては、自分らしさを出さないことが“自分らしさ”になればいいな、と思ってます。限られた中で「自分が演じる以上は自分らしさを出していく」という役者さんもいらっしゃると思いますが、もしその“自分らしさ”を100%消すことができたら、本物の2.5次元俳優なんじゃないかなって。現実的に、100%自分を消すことは不可能に近いですけど、なるべく自分らしさを出さないところに2.5次元舞台の面白さがあると思っているし、そうあるように臨んでいます。
WI 今まで演じてきた役で、スイッチがすぐに切り替えられなかった役柄はありましたか?
佐藤 昔は、切り替えが全然上手くできていませんでした。特に、舞台『NARUTO』の初演でサスケを演じていた時は、年中イライラしていて、口数も明らかに減っていたし……。でも最近は上手く切り替えられるようになりましたね。
WI これまでたくさんの舞台に立ってきて、いちばん大変だったことは?
佐藤 たとえば、サスケは圧倒的な強さを求められていたし、加州清光(ミュージカル『刀剣乱舞』)は沖田総司の刀であり“刀そのもの”だから、刀の扱いに長けていて当たり前。「サスケ、運動神経が悪いな」とか「加州なのに刀の扱いが下手だな」と一瞬でも思われたら、観ているみなさんの気持ちが冷めてしまうんです。だから、演技はもちろん、演技以外の動きの部分で高いスキルを求められることが大変かもしれないです。
WI 観客が作品により入り込めるための努力を惜しまない、ということですね。ところで、舞台のメイクは毎回ご自身でされていますか?
佐藤 サスケは自分でやっていました。役によってはメイクさんにやっていただくこともあるので、その時はメイクさんのやり方を見ながら「こんな感じでやるんだ」と、なるべく学ぶようにしてます。やり方もそうですけど、俺は何事も形から入るタイプなので、メイクさんが使っているのと同じ化粧品を買ったりもしてますね(笑)。
WI 2.5次元の舞台だと特に、“形から入る”ことも大事な時がありますよね(笑)。今回『月刊 佐藤流司×小林裕和』では、計8スタイルを披露していて、イベントでのファンの反響はどれも同じとおっしゃっていましたが……。
佐藤 そうなんです。もっと意見が割れるかなと思ったんですけど、本当にキレイに分かれました。でもやっぱり、花魁の写真が少しだけ反響が大きかったかな。たしかに、とんでもない衝撃ですよね……。撮った写真を見て、自分でもビックリしましたもん。「誰や!?」って(笑)。
WI 花魁は最初で最後だろうということでしたけど、これをきっかけに、女役のオファーが来ることもないともかぎりませんよね。
佐藤 いや……女役はちょっと……(笑)。女装は経験したことがあるんですけど、全編通して女性を演じるのは厳しいかなぁ。俺、声も低いから、しゃべったらみなさんを落胆させることになりかねないし。しゃべらなかったらまだ大丈夫かもしれないけど(笑)。
WI 会見の発言で気になったのですが、今年の誕生日は「家でひとりゲームをしていた」そうですが、友だちの誕生日はお祝いしてあげるタイプですか?
佐藤 相手によりますが、基本的に、誕生日をあまり重要視していないというか……。それだけじゃなく、大事にしているイベントがひとつもないんですよ(笑)。強いていえば元旦かな? 元旦に必ず「餅を食べること」ぐらいです。他のイベントはあまり気にしないですけど、元旦には餅を食べて、日本人らしく初心に返る日って感じです(笑)。
「アクセサリーをたくさん着けたり、着飾ることが好き」と話していた佐藤さんですが、彼が発する言葉は、飾ることなく、常にまっすぐを向いている、そんな印象でした。そして役に向き合う真摯な姿勢こそが「佐藤流司の個性」となり、しっかりと役に反映されているようにも感じます。
今後の活躍に大きな期待と関心が集まる佐藤流司さん。彼の魅力がたっぷり詰まった一冊を、この機会にぜひ。(さとう のりこ)
アーティストブック『月刊 佐藤流司×小林裕和』(A4サイズ・80頁/3,024円 税込)
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