舞台人・橋本淳。プライドが高く繊細で弱い“少年俳優”を通して感じたこと

┃同世代・浅利の演技に感化。舞台と現実世界がリンクする

ただし演者としては、「面白かった」ではやり過ごせない場面もあるはず。

「浅利くんとは昨年の舞台で一緒になり、年齢もひとつ違い。浅利くんがあんなにいい芝居してるんだったら、俺も負けられない、と思うことはあります。だから『クレシダ』の内容とかぶるんですよね。ハニーもそうですが“悔しいけど認めざるを得ない”と思えば、心から称賛できる。舞台上で、スティーブンを嫌っていたのに彼のいい芝居に対して喜ぶシーンがあるんですけど、役者としてはすごく理解できたんです。たとえば嫌いな役者だったとしても、本当にいい芝居をしたら『すごいな……』と認めてしまう。今回の稽古場でもリアルに感じられる部分が多く、いい現場だなと思っています」(橋本さん)

 

スティーブンが現れたことで、ハニーが築いてきた地位が脅かされる。物語前半では余裕を見せ、動じないフリをしているハニーも、後半では心の葛藤を抑えきれず、舞台上で声を上げて感情をあらわにしていきます。いまにも壊れそうなぐらいギリギリまで追いやられていくハニーに、守ってあげたくなる“母性”すら沸いてきます。

「本だけ読んでいたときは『キレイにスマートに演じよう』というイメージを勝手に持っていたんですけど、実際に立って、他のキャストと演じてみると、なんでこんなにイライラするんだろう、とか、平さんと浅利くんとの場面で、台本に“!”があり、「なぜここで怒鳴り上げるんだ?」と思っていたことも「なるほど」という感じでした。2幕は、ずっとイライラしっぱなし。揚げ句に泣いて……といろんな感情が起こるのですごく疲れるけれど、演じていて本当に面白いんです」(橋本さん)

稽古に入る前は、シニカルな笑いや皮肉が多く「少し構えてしまった」という橋本さんでしたが、本番後には考えが一変。「お客さんが言葉の意味を理解して笑ってくださるので、言葉をいかに感情にのせるかが大事かというのがわかり、そこに気をつけてハニーを演じています」と話していました。

 

┃ハニーの細かな所作から生まれる「色気」が性別を凌駕する

ハニーを見ていて感じるのは、性別を凌駕するその“色気”。実際の橋本さんはハニーより10歳も上なので当然かもしれませんが、声、しぐさ、視線……劇中でも、かなり年上の女性を(時に男性も)虜にするような役ですが、相当なプレイボーイ。

「ハニーの役づくりで大変だったのは、声のトーンや細かい所作。たとえば、足を組んで座るとき、足先が床に触れるように伸ばした状態で座っています。指先もひとさし指だけのばすのもそう。僕は基本的に姿勢が悪いので(笑)、普段とは逆の所作が多いんです。物をとるだけという動作ひとつとっても、すべて自分にない動き。相手を見るときも、周りの空気感とはちょっと違うスピード感で振り向くんです。一度鼻先に視線を落として首を回すように相手に顔を向けるとか。あまり意識すぎると決まり事のようになってしまうので気をつけないといけなんですけどね」(橋本さん)

そう話しながら、実際にやって見せてくれた橋本さん。それは、まさにハニー!

「今まで、あまり色っぽい役をやってきたことがないんです。不器用、田舎者、時代もの……あとは弟っぽい役。僕のビジュアルのイメージもあると思うのですが、優しかったり、人の話をよく聞く役が多くて、ハニーのように“人を見下し、プライドが高い”という役を演じたことがなく、ほぼ初めて」(橋本さん)

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長い役者人生で、初めて出会ったハニーというキャラクター。「自分の中にないなと思ったので、最初の戸惑いはありましたが、やってみたら楽しい」と話していましたが、クチコミが評判が広がってる『CERSSIDA(クレシダ)』の魅力とは?

「『CERSSIDA(クレシダ)』はコアな舞台好きはもちろんですけど、初めて舞台を観るという人でも楽しめると思います。当然、シェイクスピアの作品を知っている人ほど面白い作品です。でも、たとえば僕が最初に真っ白なメイクで登場することも、“メイクをすることは古い”という新しい幕開けの時代のために必要な演出。でも、そういう予備知識がなくても劇を見ていればわかるような演出になっているので、誰が観ても面白い作品じゃないかなと思います」(橋本さん)

 

舞台『CERSSIDA(クレシダ)』は、世田谷シアタートラムでの上演を経て、残すところ、10月1・2日@水戸芸術館ACM劇場、10月8・9日@大阪サンケイホールブリーゼの4公演。いまこのキャストがそろったのは、まさに奇跡。濃厚でいて、ユーモラスもあるクレシダの世界をぜひ劇場で堪能してみてください。

橋本淳さんのインタビューは、まだまだ続きます。次回、舞台が中心となったきっかけ、彼がなぜ舞台に立ち続けるのか、そしてあまり明かしてこなかったプライベートについてもお届けします。(さとうのりこ)

★後半はコチラ→ 橋本淳が舞台中心となるきっかけは、朝ドラの共演者。「年間100本観劇」をノルマに

舞台『クレシダ』
http://www.cressida-stage.com/

2016年
10月1日・2日@水戸芸術館 ACM劇場
10月8日・9日@大阪・サンケイホールブリーゼ

世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007
『キネマと恋人』
【台本・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【出演】妻夫木聡 緒川たまき ともさかりえ 橋本淳 他

2016
11月15日~12月4日@シアタートラム(東京公演)
12月7日・8日@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪公演)
12月11日・12日@まつもと市民芸術館 実験劇場(松本公演)
12月15日~18(日)@名古屋市芸術創造センター(名古屋公演)

*橋本淳さんに関する最新情報は、ツイッター(@TENPAorKUSEGE)にてチェックを。

 

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