モーニング娘。OGの佐藤優樹さんが、10月22日に1stアルバム「now rise」を発売!
今年の春に東京音楽大学を卒業したことを発表した佐藤さん。このアルバムでは、選曲、作詞作曲、さらに音を仕上げるマスタリングまで、あらゆる制作過程に携わり「存分にやりたいことを詰め込みました」と語る1枚。
このアルバムの裏話を根掘り葉掘りインタビューしました。今日・明日の2回にわたってお届けします!
―アルバム発売おめでとうございます! 改めて、今回のアルバムのテーマを教えてください。
タイトルは「立ち上がるなら、今しかないよ」という自分への思いも込めて、「now rise」です。これは、アルバムを出すきっかけになり、私の大きなターニングポイントにもなったカバー曲『右肩の蝶』に出会って生まれた、自分の変化から来ているんです。本当に、『右肩の蝶』に出会っていなかったら、今、アルバムは出していなかったと思います。
―『右肩の蝶』がアルバムを出すきっかけになったというのは、どういう流れなんでしょうか?
普段、いろいろな音楽に触れてみようと曲を聴いていて、「この曲気になる」と止めることってそこまで多くないんですけど、『右肩の蝶』は何かのときに偶然聴いていたら、パッと止めたくなって。聴いていると、頭の中にふわっと映像が流れてくる感覚があったんですね。これは5月のバースデーイベントで歌ってみたい、サックスもブラスもドラムも全部生演奏の音源を作りたいと。
―それほど「歌いたい」と強く思った理由を教えてください。
自分の中で、ずっと「自分を信じられるか」がテーマでした。モーニング娘。時代は、モーニング娘。というグループの歴史や、つんく♂さんの楽曲が私に自信を持たせて、支えてくれていて、それで強くいられました。でも卒業後は、透明人間の自分しか背中にいないような感覚。「世の中でいちばん信じていないものは、自分」というくらい、モーニング娘。時代より自信がなくなってしまって、うまく表情が作れなくなっていたり、ずっと誰かに助けを求めているような感覚で生きていました。
でも、『右肩の蝶』に『歪んだ体埋めるのはあなたしかいない』という歌詞があって。それを聴いていると、それを自分が自分に言っているような感覚になりました。私の中で「歪んだ体」は、ネガティブな自分なんです。
―詳しく教えてください。
ネガティブって、ウニョウニョして歪んでいそうじゃないですか? 聴いているうちに、「自分を助けるのも、輝かせるのも、苦しめるのも、幸せにするのも、自分だ。ずっと周りの人に助けを求めていたけれど、自分がどうにかならないといけないんだ」とハッと気づいて、ジーンと胸に来たんですね。もしかしたら私は、今このタイミングでなら変われるかもしれない、「変わりたい、立ち上がりたい、自分を信じてあげたい!」と、思うようになりました。自分に自信がないと、自分にも正直になれなかったんです。たとえば、怒りたいけど、伝えられない。本当は楽しみたいけど、今はそういう場所じゃないと勝手に我慢する。そうやって、自分に嘘をついている感覚だったんですが、もう打ち切りにしたいと。子どもの頃みたいに、ただ「その時間が楽しい!」で素直に生きられるようになりたい、「もう、今までの私は終了。新しく頑張ろう」と思えるようになりました。本当にターニングポイントです。そこから、『右肩の蝶』をカバーしたいことなど、やりたいことを自分から言えるようになりました。
―かなり大きく変わったんですね。
そうです。それこそモーニング娘。時代は、曲も、衣装も、歌うパートも、全部誰かが決めてくれていて、「決まったものをいかにベストでやるか」でした。でも、ソロになったら、曲も衣装も、「佐藤、どれにしたい?」と聞かれて、全部やりたいことを聞かれるやり方に変わって。それこそ右肩の蝶の歌詞に『どこがいいかなんて聞かれても困る』という歌詞があるんですが、まさにそんな感じでした(笑)。
たとえば、ポルノグラフィティさんの『サウダージ』をカバーするときは、「本当にやっていいと思いますか? 決めてください」とマネージャーさんに決めることをお願いするような聞き方をしていました。でも、今は違います。『右肩の蝶』のカバーをしたいこともそうですし、今まで作詞作曲した曲をこのタイミングでアルバムに収録したいことも、自分から伝えました。
―いただいた資料などを見ていても、あまりご自身で作詞作曲していることをそこまで打ち出していないように思えるのですが、何か理由があるのでしょうか?
恥ずかしいというのもあるんですけど…(笑)、一番強い理由は、「佐藤優樹」という名前が作詞作曲のところに入っていたら、曲に対する皆さんの素直な評価を聞けなくなってしまう、と思って。もし「好きじゃないな」と思っても、言いにくい。それがすごく嫌だったので、名前を変えて、ちゃんとした意見を聞きたかったんです。「まーちゃんが作った曲だから聴こう」じゃなくて、「この曲好きだな。あ、まーちゃんの曲だったんだ」と思ってほしかった。
―ちなみに作詞のクレジットは「優樻」、作曲は「rire」になっていますが、こちらはどういう名付けなんでしょう?
作詞の「優樻」は、「優樹」と同じ「まさき」。「樻」が常用漢字に含まれていない文字なのでできなかったんですが、本当は親がこちらの文字にしたかった名前です。作曲の「rire」はフランス語。「リールー」って呼んでいるんですけど、これは私が生まれて3か月くらいとか、小さい頃に父と母が私を呼ぶのに使っていた名前です。なので、私の中では、優樹、優樻、rireは、3つある自分の名前、という感じです。
―なんと。そういった大切な名前だったんですね。話は戻りまして…曲に対して、下駄を履かされない評価が純粋に知りたかったんですね。
ファンの皆さんは優しすぎるので(笑)。きっと、私が輝いていないとか、最近歌の調子が良くないのかな、と思っても、それを言ってこないと思うんです。もちろんその優しさも本当にありがたいなとは思うんですが、ソロとグループではやるべきことも歌い方も違うし、今の自分にまだまだ満足していないので、できるだけフラットな意見を聞いて頑張りたい時期。すごいと思っていないのに、無理してすごいと言われるより、「最近全然輝いてないよ」と言われるくらいのほうが、頑張れるタイプです。モーニング娘。時代も、自分に対する厳しい意見を聞くたびに「じゃあ、そう思われないようにするには、どうしたらいいんだろう?」と考えるのが好きでした。
―かなりストイックなんですね。
ただ、そうやって優しすぎるくらいに私を応援してくれている人のことは裏切りたくないし、とても感謝しています。私が今、このお仕事をしていられるのは「これをやります!」と言ったら、来てくれる方がいるから。今回のアルバムのリリースイベントの日程も全部平日で、結構皆さん来れない日もあるだろうな…と思うんですが、「行けなくてごめんね」なんて思わないでほしいです。皆さんが頑張ることじゃなくて、私が頑張ること。もしジャスティン・ビーバーだったら、平日に、どんなに行くのが大変な場所でイベントをしても、どれだけ時間を使ってもたくさんの人が行くじゃないですか? 私もそのくらい、もっといい曲を出して、もっといい歌を歌えるようになって「行きたい!」と思わせる人になりたい。もしかしたら今は自分の実力不足で悔しい思いをするかもしれないけど、その悔しさも、今の私に必要。ずっと、悔しいと頑張るのは変わらないです。
そういえば、今年の夏のツアー「Ember」でも、悔しい思いをしました。
―何があったのでしょう?
観にきた事務所の方に「モーニング娘。時代のように、オンオフのスイッチがちゃんと押せていない」「2回目を見ようと思わない」など、かなりハッキリと言われまして(笑)。事務所の方がそう思うってことは、確実にファンの方でもそう思った人がいるはずなんですよ。だから、ありがたい言葉としてちゃんと受け止めつつ、「悔しいーー!!」って、森に叫びに行きました(笑)。
―「Ember」はどのようなツアーだったのでしょうか?
「now rise」と同じく、「自分をどれだけ信じて、立ち上がって、変われるか」がテーマでした。Emberの意味は「残り火」。私もファンの皆さんも、モーニング娘。時代はものすごく燃えていた感覚があると思うんです。でも、卒業して、その火が少し落ち着いて。けれど、まだ端っこのほうに、その火は残っている。その残り火を、もう一回大きく広げられると自分を信じられるか、チャレンジも込めで、全部自分で曲を選んで回ったツアーです。アルバム新曲を披露したり、モーニング娘。の『Mr.Moonlight〜愛のビッグバンド〜』は「こういう曲を歌うのは苦手だな」と思っていたので、あえて挑戦の意味も込めて選曲してみました。
でもやっぱり、いつもそのときどきのベストを出しているつもりでも、過去の映像を見返すと、自分の中で、悔しいくらい今の自分がベストじゃないんですよね。少し前の自信がなくて「いやいや大丈夫です〜」と言っている自分を「もっと頑張れよ、自分!」と言って殴りたいくらい(笑)、「Ember」はエネルギーになる悔しさが生まれたツアーでした。
―ちなみに、ご自身の中では、いつがベストだったなと思う時期はあるんですか?
……2歳(笑)! モーニング娘。に入ってからだと…うーん、でも、モーニング娘。にいた期間ずっとですかね。それは、私の力ではなく、モーニング娘。を作ってきてくれた歴代の方々、つんく♂さんが作ってきた曲、モーニング娘。の看板を信じてそばにいてくれるスタッフの方々が作ってきた場所にいさせてもらえていたから。たとえるなら、「モーニング娘。」って看板は、鉄みたいに強い箱なんです。今の私は、まだタッパーとか段ボールくらいの箱。でも、そこで終わらせたくはない。モーニング娘。だって、どんどん強くなっていった箱です。佐藤優樹という個人も、そのくらい強くなれるように頑張りたいです。
―ちなみに、アルバムのアートワークで、バラと時計が印象的なのですが、これはどのような意味があるのでしょう?
あのオレンジ色のバラは「カルピデューム(Carpe diem)」というラテン語の名前のお花で、そのまま直訳すると「その日の花を摘め」「今、この瞬間を生きる」という意味を持っていて。もともと、アルバムのタイトルはこれにしようかと言っていたほどお気に入りなので、ジャケットにも使ってもらいました。
時計は0時を差しているんですけど、0時になるとまた新しい1日が始まるじゃないですか? それに、シンデレラも「0時までに戻ってきなさい」と言われながら、自分で幸せを掴みにいった。そうやって、私も時間や何かのせいにせず、今やるべきことをやろう、という意味を込めています。
明日公開の後編では、佐藤さんが作詞作曲を手がけた曲に込めた想いについて、じっくり聞きました。お楽しみに!
▼アルバム全曲ダイジェスト
佐藤優樹 1stアルバム「now rise」
2025年10月22日発売
ソロデビュー以来3年半の集大成。自身で作詞作曲を手がけた曲や、モーニング娘。時代の石田亜佑美さんとのコラボ曲、敬愛する先輩田中れいなさんとカバーした「サマーナイトタウン」はじめ、ポルノグラフィティの誰もが知る名曲「サウダージ」やボーカロイドの人気曲「右肩の蝶」カバーなど、多岐にわたるジャンルの曲を収録。
佐藤優樹
1999年5月7日生まれ、北海道札幌市出身。2011年、約6000人の応募があった「モーニング娘。10期メンバー『元気印』オーディション」に合格し、モーニング娘。加入。2021年12月、同グループを卒業。2023年3月、『Ding Dong /ロマンティックなんてガラじゃない』でソロデビュー。2025年3月、東京音楽大学を卒業。絶対音感を持ち、作詞・作曲をはじめ、楽曲制作も手がける。