新年度&新生活、ゴールデンウィークとその後の五月病シーズンを駆け抜け、少し落ち着いてくるシーズン。じっくり自分の課題と向き合いたい時期、やっぱり気になるのが「人間関係」。人の顔がなかなか覚えられない、雑談で何を話せばいいか困ってしまう…など、悩みは尽きないもの。
そこで話を聞いたのは、あらゆるコスメメーカーと雑誌編集部などメディアをつなぎ、日々たくさんの人と接するPRのプロ。平均して週に12人、月に約50人と対面して直接コスメの魅力を伝えたりメーカーと打ち合わせしたり、月に一度は150〜300人が集まる発表会で一気に多くの方と話す、美容業界に特化した千田尚美さん。CanCam編集部の美容担当も信頼を置くコミュニケーションの達人のコツ、見ていきましょう!
お話をうかがったのは…
千田尚美さん

美容業界に特化したPR戦略コンサルティングカンパニーを立ち上げ、数々の有名ビューティブランドのPRとして活躍。CanCam編集部美容担当も「よく覚えてくださっている方といえば千田さん!」と一推し。
【1】「雑談」で相手を知り、記憶する
「まず名刺交換をしたら、声のトーンやイントネーションなどからも、相手の人となりを探っていきます。その中で私が大事にしているのが、雑談です。
たとえば社内の打ち合わせでも、常にすぐに議題に入るより、少し『最近このYouTubeが面白くて』など、ちょっとした雑談のコミュニケーションを取れる関係性のほうが、仕事がスムーズになるように感じます」
千田さんのようなPRの仕事は「PRを担当する商品の良さを伝えること」が目的。けれど、ただ商品の良いポイントを伝えるだけでは、なかなかメディアの編集者やライターたちには刺さらないと言います。そこで重要なのが、雑談での情報収集。
「なぜそのブランドからこの商品が出たのか、どんな開発者の想いが詰まっているかなど、ブランドストーリーや宿命を伝えないと刺さりません。
たとえば、単にスキンケアを試してもらって感想を聞いても『しっとりしますね』で終わりやすい。そこに、商品の裏話や込められた想いをお伝えしたり、『最近の傾向は○○に感じますが、どう思いますか?』と聞いたりなど、いろんな方向に話が広がるように意識。お話することで、思っていることを深く知れて、相手の方を理解でき、どのポイントをお伝えしていけばより刺さるのかが見えてきます。
直接担当する商品についてだけでなく、私がお会いするのは美容関連の方がほとんどなので、相手の普段の美容についての考えを聞けそうなことも、雑談として根掘り葉掘り聞きます。『お仕事朝型ですか?』とか『夜のお風呂はどういう感じで入りますか?』などを質問すると、美容のスタイルが見えてきます。
そうやって相手に興味を持ってお話しすると、自然とお顔も覚えられます。
もしかして『スキンケアよりメイクが好きなのかも』と察したら、次にお会いするときにはメイクの新色をかき集めて紹介する。『ヘアケアを勉強されているのかも』と気付いたら、新商品はなぜこの成分なのかメーカーに聞いてからお会いしに行こうと。そうすると2回めにも繋がって、よりコミュニケーションを取りやすくなります
もちろん、仕事に直接関係ないような『アイドルが好きな方なんだな』『バッグに好きなぬいぐるみをつけていて、ぬい活をしている方なんだな』など、なんでも構いません。大事なのは、相手に興味を持ってお話を聞いて、記憶するフックを作ることです」
【2】話が広がりやすい雑談テーマ3つ
「CanCam読者の方のような、まだ社内で若手の世代の皆さんは、どうしても『自分が話していいのかな?』と、先輩たちが話し始めるのを待ってしまうと思います。私自身もそうでした。でも、上の世代は、若い世代の皆さんの話を聞きたいもの! 最近見たテレビの話や面白いと思ったことなど、なんでもいいんです。それが意外と仕事の話につながることもあるし、好きなことの話は、場があたたまります」
自分の話をするのが緊張するなら、質問してみましょう。千田さんがよく使うのは、この3つ。
1.天気の話→お休みの話
「たとえば『最近あたたかい日が続きますけど、週末どこかに行かれるんですか?』。で『ゴルフが好きなので週末に行くんです』と言われたら、そこからゴルフウェアのこだわりや、業界内でゴルフが好きな方が実は共通の知り合いだったりしないかとか、日焼け対策の話など、さらに興味がありそうな雑談に繋げていきます」
2.最近見たYouTubeの話
「たいてい何かしらは見ているもの。好きなものが何かストレートに知ることができます」
3.仕事のストレスケア
「働いていると、皆さん何かしらストレスがつきもの! というわけで『ストレスケア、どうされてますか?』と聞くと、ここも相手の好きなものの話に直結します。たとえば私だったら、飼っている猫の話になります。実際ストレスケアの選択肢も増えますし、次回までに『やってみましたよ!』という話もしやすいのでおすすめの話題!」
【3】メモに頼る
とはいえ、千田さんも最初から会う人全員を覚えられたわけではないそうです。
「もちろん、社会人になりたての頃は、先輩についていってたくさんご挨拶の機会をいただいても、正直覚えきれませんでした……(笑)。その頃は、いただいた名刺の裏に、こんな人だったとか、第一印象を書いてコツコツ覚えていました。
今は、30分くらい相手の方に興味を持ってお話ししたら、話したことと相手の方の雰囲気をひっくるめてなんとなく覚えられるようになりました。けれど今でも、お会いしたのが数分くらいだったら、『髪が長くて背が高い方』など、何かしらの印象を名刺に書いておくようにしています。
今も、ライターさんや編集さんにお会いしたら、相手の方が話したことは忘れないように小さなノートにメモしています」
【4】会ったか覚えてないときは、ひとまず自分から挨拶にGO
ここからは「あるある」なシチュエーション。過去に挨拶をしたかしていないか、いまいち覚えてない人と会ったとき、千田さんならどうしますか?
「どこかでお見かけした気がするような、しないような…お会いした確証が持てない…。どちらか迷う場合は、ひとまず『いつもお世話になってます、改めてご挨拶させてください!』と、ご挨拶に行きます。
もしそこで『以前挨拶しましたよ〜』と言われたら怖い…と思う方もいるかもしれませんが、もしそうなったら『失礼しました! 名刺が少し変わったので、せっかくなのでまたお渡しさせてください』などと元気に言います。迷ったらご挨拶しておくに越したことはありません」
【5】逆に、相手が覚えてなさそう…どうする?
先ほどとは逆パターンで、「こちらは覚えているけど、相手が会ったか会っていないか記憶になさそう」なとき。さっと助け舟を出すのが千田さん流です。
「こちらが覚えていても、相手が私のことを覚えていなさそうだな、と察知する瞬間もたまにあるものです(笑)。PR窓口は頻繁に変わることもあるので、私はまったく気にせず『またお会いできて嬉しいです!』とお伝えして、またご縁に繋がればいいなと思っています。こちらから『前回お会いしたとき、こういうお話しましたよね!』とか『こういう商品教えてもらいましたよね』と、思い出してもらうきっかけを作るようにしています。
人に会えば会うほど、縁は繋がるもの。顔を覚えていただいて、覚えていくと、どんどん仕事は楽しくなりますよ」
構成/後藤香織