WI 人物と金魚、撮影するときの相違点は?
篠山 人間だったら言うことを聞いてくれるけど(笑)、金魚だとコミュニケーションなんてまったくとれないでしょ。でもね。金魚の動きとかをよく見ていると、“この辺に来るとこっちに行く”と、なんとなくわかってくるんです。これを“紀信伝心”とも言うんですけどね(笑)。“紀信伝心”して、「来る!」と思ったときにシャッターを押すと、撮れるんです。
WI この1匹を撮る! と決めて撮影されたんですか?
篠山 1匹を追うのと、群れている物を追うのは違うんだよ。群れるっていうひとつの動きがあって、群れたから美しいものもある。群舞・ソロとあるけど、群舞は群舞の面白さがある。群れている中に、ある種のエロい動きがあるんだよね。そういうところを寄っていったり引いたりして撮ってるんだよね。
WI 構図が決まっていてシャッターを押す、という感じですか?
篠山 デジカメだから何枚でも撮れるんだけど、ただむやみにシャッターを押していればいいのかっていうと、そうじゃない。“全体的なバランス”があって「この1枚!」というパワーがないと、こういう写真は映らないんですよね。ムービーの中から1枚切り取って「適当にトリミングすればいいや」って思うかもしれないけど、これ、ほとんどトリミングもしてないですよ。こういうスペースの中で“こう撮ろう”と思ったときの一瞬で撮っているんですよね。
WI 1日で撮影されましたか?
篠山 撮っている時間は短いんですよ。ある限られた密室の中で見つめていると、ある法則があるんだよね。よーく見てるとわかってくる。それをつかんで撮っているんだよね。1日粘ったり、「明日も来るよ」ってことはない。3時間くらいかな。あっという間だったよ。気持ち的に“紀信伝心”で金魚の心になっちゃうんだろうなぁ。でも、“紀信伝心”が上手くいかないのもある。金魚によるというか、飾り方なのか……。そういうときは、すぐに止めて、「次!」って行っちゃう。
WI 構図に合う瞬間を待ったりされましたか?
篠山 それをやっちゃうとこういう写真は撮れないね。「この金魚だったら出会える!」という直感がパン! とあって、それでレンズは100ミリとか、直感的に選んで出会いがしらに写すんだよね。だからスリリングな写真になる。待って撮っていたら金魚のカタログになっちゃう。たぶん金魚の専門家が見たら「何これ!」って言うと思うよ。僕の歌舞伎の写真とかもそうなんだよね。(役者の顔のアップの写真を指さしながら)スタジオじゃなくて舞台上の写真で、こういう、キメポーズではない写真を歌舞伎専門の人は撮らないよ。だから金魚のキメもあると思うんだよね、専門家から見たら。それは完全に無視ですよね。
WI 人物なら相手をノラせて撮ると思いますが、 今回は相手の気持ちを理解して撮る」が異なる部分でしたか?
篠山 いや、結局どちらもおんなじ。だって女の子撮ってたって女の子の気持ちわかんないじゃない(笑)。
WI でも逆に、女の子が篠山さんの気持ちがわかる場合もありますよね。
篠山 うん。だから金魚が僕の気持ちがわかったんだと思うよ。ぜひ金魚に聞いてほしいね。そうしたら「うん。覚えてる。あのときでしょ」って言ったりするかも(笑)。
「金魚でさえも妖艶に感じることができるのは、“紀信伝心”があるからこそ」と熱く語る篠山さんですが、随所に笑いを誘っていただき、緊張していた私たちが、実際には笑いっぱなしのインタビューとなりました。後半はプライベートな篠山さんにも少しだけ迫ります。
7月27日発売
『アートアクアリウム×篠山紀信カレンダー2016』 1,852円+税 (小学館)
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