今年の夏も猛暑が続き、毎日エアコンをフル稼働させていた人も多いのではないでしょうか。そんな冷房で酷使したエアコンは、冬の暖房稼働に備えてしっかりお手入れする必要があるんです。
そこで今回は、パナソニック エアーマイスター・福田風子さんに「正しいエアコンの夏じまい方法」を解説していただきます。
教えてくれたのは…
【パナソニック株式会社 空質空調社 日本マーケティングセンター 空気事業マーケティング統括部】
自宅に異なる4機種のエアコンを設置し、機能の違いや風の違いを感じ分ける。スマホを使って家中のエアコンを遠隔操作したり、時にはカビの発生したエアコンを自ら入手・分解して調べるなど担当の枠を超えてちょっとしたエアコンマニア。
エアコンのお手入れ(夏じまい)に関する意識調査
まず、パナソニックが全国の20~60代の男女544人に「自宅のエアコンのお手入れ」に関するアンケートを実施。
Q.今夏(6~8月)の間に、どれくらいエアコンのお手入れをした?
今夏の間にエアコンのお手入れをしたか質問すると、「まったくしていない」が43%もいることが判明! 次に多かったのは「月に1回程度」「3ヶ月に1回程度」でした。
「パナソニックは、フィルターのお掃除の適切な頻度として『2週間に1回』を推奨しています(エアーマイスター・福田さん)」
Q.今夏のエアコンの稼働終わり(9~11月)に、お手入れをするつもりはある?
今夏のエアコンの稼働が終わる時期にお手入れをするつもりがあるか質問すると、「ある」との回答は半数以上。しかし「ない」「わからない」を合わせた44%が、夏じまいの予定がないとのことでした。
Q.毎年、夏のエアコン稼働終わりにお手入れをしていた?
今まで、夏のエアコン稼働が終わる時期にお手入れをしていたか質問すると、「ほとんどしたことがない」「まったくしたことがない」を合わせた45%がお手入れをしていない結果に。
約2人に1人がエアコンのお手入れ(夏じまい)に積極的でないことが分かりました。
冷房シーズンはエアコン内部にカビが発生しやすい…!
冷房を稼働させた後には、エアコン内部にカビが発生しやすいのだそう。そこでパナソニック エアーマイスタ―・福田さんは、夏の冷房稼働後に「夏じまい」をすることが大切だと言います。
「暖房よりも冷房の方がエアコン内部にカビが発生しやすいため、冷房稼働終わりの『夏じまい』は暖房稼働後の『冬じまい』より念入りに行っていただきたいです。カビは気温20〜30℃、湿度60%以上で最も繁殖しやすく、多くの胞子を作ります。特に湿度60%以上では湿度が上がるほどカビが発生しやすくなります。仕組み上、エアコン暖房は熱交換器を加熱し暖めるため、エアコン内部は乾燥した状態になるのとは対照的に、冷房運転は熱交換器を冷やし、温度を下げるとともに空気中の湿度を結露させて排水するため、エアコン内部は高湿度の状態になります。
エアコン内部に結露が発生し、カビの育成を助けることになってしまうので、冷房時は特に内部のカビに注意が必要なのです。さらに、真夏より湿気が多く気温が下がる秋は、カビの繁殖条件と合致しており梅雨どきと似ているので、これからの秋シーズンにもカビ発生の注意が必要です(福田さん)」
冷房シーズンや秋のカビ発生の原因とそのメカニズム
原因①:ホコリや油分がカビの栄養源に
エアコンは室内の空気を取り込み冷やしているため、空気中に浮遊している油分やホコリもエアコン内に取り込んでしまいます。フィルターでブロックできないホコリや油分が内部にたまり、カビの栄養源となり増殖する原因に。
原因②:エアコン内部の湿気
冷房や除湿運転では熱交換器を冷やし、空気を冷やすのと同時に空気中の湿気を結露させて排水するため、内部の湿度が高まり、カビの成長に適した環境になってしまいます。
暖房稼働時にカビが吹き出してしまうことも…
夏のエアコン稼働時間が長ければ長いほど、エアコン内部に湿気がたまり、カビのエサであるホコリもたくさん付着してしまいます。
フィルター部分は掃除機で吸えばケアができますが、エアコンの内部はそういうわけにはいきません。エアコンを掃除せずに放置をしておくと、使用していない秋の間にエアコン内で繁殖したカビが冬の暖房稼働時に吹き出す可能性があります。
エアーマイスター伝授!正しいエアコンの「夏じまい」方法
エアコン内部にカビを発生させないためには、どのようにお手入れをしたらいいのでしょうか? 夏じまいとはいえ、残暑でまだまだ冷房を稼働中の日もありますよね。次の「エアコン夏じまい方法」は夏のエアコン稼働終わりのみだけでなく、普段のお手入れとしてもぜひ実践してほしいもの。定期的にお手入れをすることで、カビの増殖や汚れを防ぎ、夏じまい時の負担軽減にもつながりますよ。
ポイント①フィルターの定期的なお手入れ
フィルターの汚れは、能力の低下、消費電力の増加につながります。掃除機でホコリを吸い、それでも汚れが落ちない時は薄めた中性洗剤で洗い、陰干しをしてしっかり乾燥させてください。
ポイント②内部クリーン機能や送風運転を活用
冷房中の結露により水分がたまったエアコン内部を乾燥させることが、実はカビ対策に効果的です。内部クリーン機能がエアコンに搭載されていれば使用しましょう。内部クリーン機能が搭載されていないエアコンの場合は、冷房運転の後に「送風運転」を3〜4時間行い、エアコン内部を乾燥させましょう。
ポイント③拭き掃除でカビ菌を防止!
エアコンに汚れがたまるとカビ菌のエサになるため、汚れている場所(通風路、フラップ等)を拭き掃除してください。このときのポイントは、見える部分のみです。
【NGお手入れ方法】
エアコンのクリーニングは高い専門知識が必要です。ご自身でエアコン内部の洗浄をしないでください。誤ったクリーニング方法(除菌剤やお掃除スプレーをするなど)を行うと、内部に残った洗浄剤で故障の原因につながる恐れがあります。専門業者に依頼しましょう。
※ご⾃⾝での掃除が⼼配な⽅、掃除がしづらい箇所の汚れが気になる場合やすでにカビが生えている場合は、専⾨業者にご依頼ください。
夏じまいをサボったら「冬の暖房代」が高くなる!?
夏のエアコン稼働後のお手入れをしないと、カビなどの衛生面だけでなく、経済面にも影響が出てしまうんだとか。このことについて、エアーマイスター・福田さんは次のように話します。
「エアコンは室内の空気を取り込み、冷風や温風にして放出します。ところが、フィルターにホコリが溜まっていると十分な量の空気を取り込めません。多くの空気を取り込もうと、余計なパワー=電力を使うことになるため、エアコンの運転効率は低下し、電気代を余計に消費する状態に陥ってしまいます。実際にエアコンフィルターを1年間掃除しないと年間で約25%も消費電力量がアップしてしまうという実験結果(※)もあり、フィルターの目詰まりや冷暖房能力の低下で、金額にして1万円以上も電気代がムダになってしまう場合があります(福田さん)」
値上げラッシュの今、光熱費を抑える取り組みのひとつとして実践したいもの。ぜひ本記事を参考にエアコンの「夏じまい」をしてみてくださいね。(Mai)