芥川龍之介、川端康成、池波正太郎…有名文豪たちが愛した名店3店

【1】芥川龍之介が愛した「江知勝」のすき焼

和樂2015年6月号P45

明治4(1871)年にその歴史をスタートさせた、東京のすき焼の草分けともいえる老舗「江知勝」。本郷に近い土地柄ということもあり、開店以来主な客層は、一高や帝大(現在の東京大学)のエリート学生たちでした。芥川龍之介や夏目漱石の作品にも、この江知勝をしのぶすき焼のことが出てきています。森鷗外は『牛鍋』という短編小説を著しているほど。

前日から仕込んで当日ようやくできあがる、醤油ベースにみりんをブレンドした秘伝の割り下。目利きの料理人がきめの濃やかさや脂の質を見極めた厳選した国産黒毛和牛Aランクの牛肉。担当の仲居さんが教えてくれる食べごろに、ハフハフしながら口に運ぶ牛肉は、舌にのせた瞬間とろけてしまうようなやわらかさです。

お店に足を踏み入れたと同時に懐かしさに包まれるようなたたずまいも魅力。歴史を感じさせる「江知勝」は、往時の東京に出会える詩情豊かな名所でもあります。

 

江知勝(えちかつ)

東京都文京区湯島2-31-23
03-3811-5293
17時~21時(L.O.)
日曜・祝日休(年末年始・8月の土曜も休)

 

【2】川端康成が愛した「つるや」のうな重
和樂2015年6月号P57
いわゆる「鎌倉の大仏」へ続く通り沿いにある、表にガラスの小さなショーウインドーが置いてあるだけのお店、「つるや」。一見地味な店構えですが、昭和4(1929)年に創業して以来、多くの鎌倉在住の文化人たちがこの店を訪れました。

なかでも川端康成は住まいが近く、「つるや」をひいきにしていたひとり。

3代目の河合吉英さんが「うちは昔から文士好みの味と言われているんです」と語る、昭和時代から変わらない、さらさらとして食べ飽きないたれ。備長炭で焼く、少し焦げ目のついた品のいい香りを放つうなぎは、中はしっとりやわらかく、外は香ばしく焼き上がっています。

川端康成以外にも、作家の吉屋信子、立原正秋、評論家の小林秀雄、女優の田中絹代なども訪れていたこの店。店内のいたるところに、昭和時代に鎌倉に住んでいた文化人を感じられるものがあります。

つるや

神奈川県鎌倉市由比ガ浜3-3-27
0467-22-0727
11時30分~19時(L.O.) 火曜休

 

【3】池波正太郎が愛した「並木藪蕎麦」のそば
和樂2015年6月号P43
そば好きで知られた、戦後を代表する時代・歴史小説作家、池波正太郎。なかでも彼が愛したそば屋は、東京の「粋」を表すような店、「並木藪蕎麦」です。何気ない店構え、飾り気がなくて清潔な店内、昔の東京をしのばせる器、従業員のきびきびした働き……掃除が行き届いた店内には、昭和のよさが残った、いい「気」が流れています。

「そば屋とは酒を飲むところ」と心得ていた池波正太郎は、まず焼き海苔や板わさなどで2合ほど日本酒を楽しんでから、そばを食べていました。厚削り(鰹節)を1時間半煮詰めただしと、醤油と砂糖を寝かせたかえしを合わせたうまみが強いそばつゆはとても存在感があるもの。ちょっとそば味噌などをつまみながら日本酒を飲んでもよし、そばを食べてもよしという、“昭和”の名店です。

並木藪蕎麦(なみきやぶそば)

東京都台東区雷門2-11-9
03-3841-1340
11時~19時30分 木曜休

 

見ているだけでもおなかが鳴りそうな美しき料理の数々。『和樂』誌上ではもっとたくさんの名店が紹介されています。是非チェックしてみてくださいね。(後藤香織)

和樂2015年6月号表紙『和樂』2015年6月号(小学館)

 

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