■つらい部門 1位
『月影』著者/SHOOWA(竹書房)
エロ濃度★☆☆☆☆
理不尽だったり、かわいそうだったり、痛々しい内容の作品を集めた「つらい」ジャンルで1位を獲得したのがこちらの『月影』。幅広いジャンルの5作が収録された短篇集です。
男娼となった少年の一生を描いた表題作は、昭和初期の遊郭を舞台に運命に翻弄される美少年の悲恋を繊細なタッチで描いています。そこはかとなく文学の香りもただよい、郭話や悲恋ものが好きな人にはたまらない作品です。
「つらい」というか、叶わぬ恋を描いた非常に切ない作品。だがしかし、美少年の悲恋に心を痛めていると次のページからは悲しい物語の余韻をブッ飛ばすかのように、『ホモ連戦隊 守るんジャー』というギャグ作品がスタート。他に任侠ものあり、ファンタジーありと、非常に振り幅の大きい一冊です。
エロ度も控えめなのでBLの世界の幅広さを教えてくれる1冊として、初心者にもおすすめです。
異色部門 1位
■『ニィーニの森』著者/SHOOWA(祥伝社)
エロ濃度☆☆☆☆☆
人外のものたちが住まう不思議な森、ニィーニの森を舞台にしたファンタジーBL。
うさぎ(擬人化)とかえる(擬人化)の恋やカブトムシ(しつこいようですが擬人化。ただし内面のみ)の恋を描いた、まさに異色作。
とはいえ、BLの世界に押し込めておくのはもったいないような、普遍的な愛を描いた上質なファンタジーになっています。
BL必須(?)のアッー! 描写もないため、もしBLは苦手だけどファンタジーは好き、というような人がいれば、そういった方も抵抗なく楽しめそうです。
■BLの地平線。そこにはただヤルだけが能ではない、幅広い世界が広がっていた――。
「どうせやるだけ」というちょっとの偏見を持ちながら読んでみた5作品。
ところが王道的なエロ作品から、時代物、ファンタジーと幅広くあり、たまにドキッとしながらも、普通に漫画として面白く読めました。
一応言っておくと、個人的にはアッー! のシーンを読んでいても、あまりに違う世界のためか、興奮するようなことはまったくなかったです。
そのエロの濃度もお腹いっぱいというくらい濃いものから、わずかに匂わすだけというものまであり、作品ごとの違いが大きかったです。
全作品を読んでいて思ったのは、BLはやはり精神的な駆け引きというか、調教というのがベースにあるということ。
一見、何を考えているかわからない、強引だったり束縛的だったりする男らしいイケメンの「攻め」が、割りと見た目も精神的にも弱々しいタイプの「受け」を徐々にエロ教育する、というのがやはり王道。
わがままな王子様にふりまわされるドジっ子というのは少女漫画にも見る設定ですし、物語自体も設定がしっかりした読み応えのあるものが多かったので、私のようにBLはまったく知らない、むしろちょっと偏見があるかも? という人でも、自分に合ったエロ濃度さえわかれば、少女漫画の感覚で楽しむこともできるのではないかと思いました。
理解できそうで理解できない、身近なようで女には絶対に踏み入ることのできないボーイズ・ラブの世界――。「BL本は多すぎて、どれを読んでいいのかわからない!」という人も、新たな面白漫画を探す指標として、BLアワードを活用しない手はありませんね!(内倉あかり)
情報提供元:ちるちるBLアワード2015
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