それ、やりすぎです。適度な「謙遜」のしかた
日本人によく見られる心理傾向のひとつとして、過度な謙遜が挙げられます。人から褒められた際に自分の手柄にしてはいけないという遠慮の気持ちがその根底にあるのかもしれませんね。でも、あまりに度が過ぎるとそれは自己卑下となってしまい、相手に嫌味な印象を与えてしまうことも少なくありません。そこで今回は、「適度・効果的な卑下・謙遜のしかた」をご紹介いたします。
■褒められたら一度受け入れて謙遜するのが効果的
謙遜するときに一番大切なことは何だと思いますか。それは、相手の褒め言葉を否定しないことなのです。謙遜の基本は、相手の言葉を否定したり、事実を否定しないこと。事実は事実として認めないと嫌味になってしまうのです。だからこそ、自分を卑下する前に相手に感謝することを、まず意識しましょう。相手の好意を一度受け入れて、それから卑下することで印象がよくなること間違いありません。心理学における好意の返報性を上手く
活用するのです。
■謙遜するシチュエーションかどうかを意識して
謙遜には、他人の嫉妬から自分を守る自己防衛の手段という意味合いもあります。多かれ少なかれ、褒められると周囲から注目を浴びることになります。その中には、称賛の意味合いだけでなく、妬みや嫉みといったものも少なくありません。だからこそ、自分の価値を下げることで、それらネガティブな評価を回避しようとするのです。これは防衛機制でいうところの回避という心的反応に近いと言えます。でも、これは大勢の前で評価されたときの処世術であり、1対1で褒められたときには使う必要はありません。場面を見て謙遜するかどうかを決めることが大切なのです。
■ネガティブな卑下からポジティブな謙遜へとつなげる
もしもあなたが実力者から認められ、自分の能力以上のポジションに抜擢されたとしたら、どうしますか? きっと、「いえいえ私なんてとんでもない!」と口に出すかもしれません。でも、それは相手の好意を否定するネガティブなアクションである卑下に映ってしまいます。だからこそ、「私のような者に」と一度へりくだった後、「でも、本当に光栄です」や「ですが、ご期待に応えられるようやってみせます!」といったポジティブなフレーズを取り入れて、好印象な謙遜に結びつけることが大切なのです。
■謙遜を好印象に変えるための究極のテクニックとは
これはかなり高度なテクニックになりますが、あえて相手の話に乗っかり、笑いに変えるという方法もあります。たとえば、「あなたは経済力があって素晴らしいです」と言われた場合、謙遜せずに「ですよね! お金の神さまに愛され過ぎてて困ってるんです」と、冗談めかして乗っかってみましょう。キーワードは、過度であることと笑いを取り入れることです。心理学でいうギャップ効果をつくりだすのです。このテクを上手に使うことができれば、好印象間違いなしでしょう、ただ、このテクニックは難しく場を選びます。会話の雰囲気が明るい、相手がシャレの分かる人、いつもの自分の振る舞い、など条件がそろっていないと使えません。
謙遜を効果的に活用した人物として挙げるとするなら、おそらくアメリカの自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォードでしょう。彼は自動車の普及に革命をもたらしましたが、技術に関しては素人だったと言われています。そのため、技術者たちをとにかく褒めまくってモチベーションを高めさせ、画期的な自動車の生産・開発に成功したのです。自分の短所を素直に認め、相手の長所を褒める。これこそが正しい謙遜のあり方なのかもしれませんね。(脇田尚揮)
認定心理士。Ameba公式No.1占い師として雑誌やTVなどに取り上げられ、現在テレビ東京「なないろ日和」にてレギュラーコーナー担当。また、自身が監修したアプリ 「マル見え心理テスト」はTBS 「王様のブランチ」 などでも紹介され、120万DL。著書『生まれた日はすべてを知っている。』(河出 書房新社)。