7月27日に『アートアクアリウム×篠山紀信カレンダー』を発売した写真家・篠山紀信さんインタビュー前編はいかがでしたか? 後編では篠山さんのプライベートにも少しだけ迫ります。
★前編はコチラ→ 篠山紀信、被写体は…金魚!?「人物でも金魚でも『紀信伝心』」
Woman Insight編集部(以下、WI) フィルムの時代は撮影できる枚数や本数が決まっていましたよね。
篠山紀信さん(以下、篠山) うん。僕の写真は連写で撮るんじゃなくて、キメ撃ち。撮り方としては、フィルムの撮り方。フィルムで写真を覚えた人のほうが写真が上手いと思う。フィルムではなかなか上手く写らないものも、デジカメって大体綺麗に写っちゃう。だから写真を撮る技術がなくても、子どもでも撮れちゃう。フィルムだと、写らないぶん、やっぱり心を込めて撮る。僕もいまはデジカメという機械を使っていますが、撮る心はフィルムの気持ちで撮っているのかもしれないね。そこで養った技術と勘がないとこういう写真は撮れない。
WI 被写体として今後の予定は?
篠山 いろいろな話があるんですよ。こっちが驚くような「え? そんなの撮るの?」っていうのを考える人がいるんだよね(笑)。見たことのない動きが僕の撮り方だと出てくる可能性がある、という直感なんだろうね。そういうわけで“撮ったことがない”ものを頼んでくるんで参りますね(笑)。撮ったことのないものなんてたくさんありますから。
WI 逆に撮ってみたいものは?
篠山 僕、ないんですよ。僕の写真というのは、全体的に時代の映し鏡だと思っているんです。だから「時代が生んだ面白い人・こと・物」、そういうものに僕は積極的に寄っていって、一番いい角度から、一番いいタイミングで撮るというのが、僕の一番いい写真だと思うんです。金魚だってこんなふうに写し出したものってなかったと思う。これは時代が生んだんだよ。そこに「篠山を連れて行きたい、篠山に撮らせたら面白そうだ」と思われるところに僕の存在価値がある。「やっぱり篠山だよ」ってところに立っていることが重要。よく聞かれますよ「次は何を撮りたいんですか?」って。違うんだよね。「時代が生んでくれる」んだよね。時代の生ものだな。だからカメラだって、今の時代を撮るなら、今のカメラを使わないと。いますよ、「ライカじゃなきゃ」って人や「やっぱりフィルムだよ」って人が。でも今の時代を撮るのは、今の最新鋭のカメラで撮るのが一番だと思うよ。
WI 篠山さんが撮影された山口百恵さんも「時代と寝た女」と言われていましたよね。
篠山 山口百恵さんは、1970年代を代表する人で73年にデビューして80年に引退しちゃうんだけど、70年代を語るうえで彼女抜きでは語れない。だから百恵さんの写真や曲を見たり聞いたときに「あのとき自分は浪人してたなぁ。あの子と付き合ってたなぁ。この写真は『GORO』の激写だったなぁ……」とか、自分史を思い出す起爆剤になる。写真ってそういうところが面白い。