篠山紀信、被写体は…金魚!?「人物でも金魚でも『紀信伝心』」

kisin_017月27日に『アートアクアリウム×篠山紀信カレンダー』を発売した写真家・篠山紀信さんにインタビューを行いました。今年5回目を迎える日本の夏の恒例イベント「ECO EDO 日本橋 アートアクアリウム2015~江戸・金魚の涼~&ナイトアクアリウム」の金魚を篠山さん目線で見ると……。
写真家・篠山紀信さんのインタビューを前編・後編にてお送りします。前編は初体験した金魚の撮影についてお届けします。

 

Woman Insight編集部(以下、WI よろしくお願いします。“篠山紀信さんと金魚”不思議な感じですが、被写体としてこれまで考えたことは?

篠山紀信さん(以下、篠山) あるわけないでしょ (笑) 。家で飼っていたことはあったんですよね。でも僕が飼っていたのではなくて、家に“いた”という感じ。僕は「撮るんだ!」と思うから撮れるタイプなので、普段、じっと見ているときに「撮ろう!」とは思わない。スナップ写真を撮ることもないです。カメラマンによっては普段からカメラを持っていて撮影している人もいるけど、私は“撮る”という目的が決まってから考えたり、エネルギーを集中するので、いつも見ているものでも“撮る”と決まってから「どうしよう」と考えるタイプです。でもまさか「金魚を撮る」とは思いませんでしたけどね(笑)。

WI では、今回の作品の経緯を教えてください。

篠山 「まずは見てください」と(アクアリウムに)連れて行かれたんですよ。そうしたらお客さんが本当にいっぱいで……。アートアクアリウムにいる金魚というのは、“創った金魚(品種を改良したエリート金魚)”で、ここは“不思議な世界”だと思ったね。金魚の国に来たよう。ライティングとか見せ方が上手くって、(撮影依頼に)“なるほど”って思ったんだよね。

WI では、そのあとに撮ることが決まったんですね。

篠山 そう。これもいまの時代だから撮れた写真だよね。いまの時代だからいる金魚で、いまのデジカメだから撮れた写真。金魚の動きってものすごく速くって、デジタルの技術がないとこういう写真は撮れない。デジカメって感度がすごく高いし、これも(シャッタースピード)1000分の1くらいで撮ってる。だいたい金魚って、狭い水槽の中にいても、なかなか正面を向いてくれないでしょ。もちろん横でも充分綺麗なんだけどね……。それで「キタ!」ってときに“ズバッ!”と撮るには、瞬発力とカメラの持つテクノロジーが融合しないとダメ。こういう金魚が創られ、そういうものを追えるだけの写真の機材がある。その段階があって初めて見ることができる写真だよね。

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WI 初めての金魚の撮影で思い出に残るエピソードとかはありますか?

篠山 初めての体験というのは“驚きの連続”で、それを大切にしなきゃいけない。これはどの写真でも同じ。女の子を撮るのでも、風景を撮るのでも一緒。初めて見る“綺麗”や、“すばらしい”と思う瞬間を「撮る」。もし金魚専門の写真家だったら、こういうふうには撮らないと思うんですよ。でもそんなの関係なく「最初の驚き」だけで撮っている感じ“処女体験”ですよ(笑)。

WI 金魚は、エロスやある種の凶暴性をはらんだ生き物だと感じますが……。

篠山 動きが速いよね。身体を翻したり、どこかに行ったり。女心に似てますね(笑)。だからそういう気持ちもわかって撮れたんですね(笑)。

 WI ひらひらした尾ひれなども女性っぽいですよね。

篠山 そうそう。エロいって感じは全体的にある。僕の写真は、男でも女でも風景でもエロティシズムが基本。だからそこは金魚を撮ってもエロいわけです。

WI はじめは意外だと思いましたが、写真を見て腑に落ちたんです。鉢という限られた中で生きる愛玩動物なので、篠山さんにピッタリだと。

篠山 限られた密室の空間で、浮遊している怪しい動物ってエロいよね。普通そういうふうには金魚を見ないのに、そう感じるってことは、それは(僕の)才能なんですよ(笑)。