金沢三文豪のひとりである室生犀星が、晩年に発表した小説『蜜のあわれ』が、 映画『蜜のあわれ』として2016年4月1日(金)より全国公開します。
本作では、室生犀星自身を想起させる老作家と、彼が愛でる少女の姿に変貌する金魚との無邪気かつエロティックな触れ合いを描きます。
今回、二階堂ふみが、丸いお尻で自分のことを“あたい”と呼び、金魚から人間の姿に変貌する少女・赤子を熱演! そして赤子と共に暮らす老作家役に大杉漣。また老作家の過去の女である怪しげな幽霊役には、真木よう子。そして同時代に活躍した作家・芥川龍之介役には高良健吾。金魚売りの辰夫役に永瀬正敏と個性豊かな俳優陣が脇を固めています。
そして『蜜のあわれ』はスタッフも豪華! 現在話題沸騰中のauの三太郎シリーズCMや、『ライチ光クラブ』『信長協奏曲』『るろうに剣心』『クローズZERO』など数多くのヒット作を手掛けた衣装デザイナー澤田石和寛氏が衣装デザインを手掛けました。
13種類の赤い生地で表現したのは“ 金魚の艶めかしさと純情 ”。二階堂ふみのアイディアも取り入れ、『蜜のあわれ』の世界観を体現。
映画公開を記念して、澤田石和寛氏が手掛けた『蜜のあわれ』の衣装展が3月1日(火)より渋谷ヒカリエにて開催されることになりました。
《澤田石氏 コメント》
■衣裳について
金魚の赤子が産み落とされて死んでしまうまで、その時間を追う衣裳です。つまり赤子の成長が衣裳で表現されているのです。
袖が伸び、スカートの丈が長くなり、次第に「赤」の面積が増え、朱赤色のシルクオーガンジーから赤黒い二色糸のシフォンへ素材の変化に合わせて「赤」がどんどんと深くなっていくのです。
赤子の尾鰭はスカートになっていて、3種類のスカートがありました。ドレスだけで13種類の生地で制作しています。靴下も手袋も帽子も鞄も赤です。時代設定を追ってヴィンテージの鞄をフランスから送ってもらいました。
金魚を表現するためにもうひとつ重要だったのがフォルムです。金魚のフォルムをデザインするために衣裳制作の岩崎晶子に金魚の形をおこしてもらいました。
裾を軽くするなど金魚の尾鰭の動きをイメージした、柔らかいドレスにしてもらっています。素材に透ける素材のドレスを重ねることで、衣裳の輪郭に金魚の尾鰭の様な印象を加えることもデザインのひとつです。
男性の思考から生まれた女性の「艶めかしさと純情」を赤い色をつかって表現することができたと思います。作家にも同じことをしています。作家の着物は灰白色の着物で始まり最後は漆黒まで色を深めていきます。死に向けた色として。死の色については「黒」と石井さんが口ずさんだことを覚えています。大体12色の着物があったと思います。時間を追ってどんどん作家の着物は色が濃くなっていきます。
■二階堂ふみとのやりとり
彼女はこちらの思い描いたイメージに乗り、その上でもっと個性を強くするアイディアを出してくれる素敵な役者です。顔合わせで初めて会ったときにデザイン画を見て、「楽しみにしています」と言っていました。
衣裳的には、「ポックリがいいと思う」とアイディアが出てきました。まだ白い生地で作成された衣裳の仮縫いを着て、「ポックリ……」と彼女が口ずさんだことを覚えています。
衣裳合わせでは、1着ずつ着ながら、こちらの意図を確認するようにゆっくり時間をかけて赤子のキャラクターを完成させてくれました。
『蜜のあわれ』の世界観の中心に立って、赤子を体現してくれたと思います。
澤田石和寛氏の絵コンテ