メイクで「自己肯定感」は上がる。「自分を好きになるメイク」の大前提

「ササッと簡単に出来て、好きな人の心にササる」#ササメイク を提唱している、メイクアップアーティストの佐々木一憲さん。
なかなか表に出せないオフレコ話も含めた美の情報を共有し、サロンメンバー同士でお互いに高め合っていくオンラインサロン「SASAMAKE LOUNGE」や、マンツーマンのメイクレッスン+写真撮影を行う「SASAMAKE STUDIO」、そして「自分らしさを好きになる」サポート型コスメブランド「BeMe」のプロデュースなど、多岐にわたる活躍を続けています。

佐々木さんが意識的に行っているのは「メイクがあまり得意ではない人向けの情報」や「頑張りすぎないメイク」の発信。肩の力を抜いて、自分らしさを活かしながら美しさを底上げし、そして自己肯定感が上がっていく…。

「自分に自信がなかった人が、美しく変わっていく様子をたくさん見てきました」そう語る佐々木さんに「美容とメンタルの関係性」や「本当に自分を好きになれるメイク」について、これから全4回にわたってご紹介していきます。

 

◆そもそも、メイクや美容で「自分を好きになる」って、どういうこと?

あなたは自分の顔のこと、好きですか? それとも、あまり好きではないですか?
「全体として嫌いではないけれど、このパーツだけは変えたい」とか「これはこれで悪くはないけれど、本当はもっとこういう顔が好き」など、好きと嫌いの間にさまざまなグラデーションがあると思います。

僕は、オンラインサロンやメイクスタジオなどを通して、多くの人たちの自分の顔についてや、コンプレックスにまつわる話を聞いてきました。だいたいの人には「もっと自分の顔がこうだったらいいのに」という理想像や、それにともなうコンプレックスがあります。自分のことをどうしても受け入れられず「私なんてダメだ」と思い込んでしまっている人が、結構多いです。
そんな方にまず認識しておいてほしいことがあります。

まず、そのコンプレックスを見ているのも、気にしているのも、自分だけ」というパターンはものすごく多いこと。
そして「あなたのコンプレックス」は「誰かのなりたい姿」かもしれない、ということ。

メイクスタジオにやってきてくれた朝のお客さんが「私はここがイヤなので変えたいです」と言ったことが、昼のお客さんが「私はこうなりたいです」であることは、本当によくあります。たとえば朝の方は「キツく見られてしまいがちだから、柔らかい印象にしたい」、昼の方が「顔がぼんやりしてしまうのが悩みだから、はっきり見せたい」。「顔の赤みが気になるから消したい」の直後に来たお客さんが「顔の血色がなくて困ります」。「丸顔がイヤだからシャープに見せたい」の次が「面長がイヤでもう少しふっくら見せたい」。
…不思議ですよね。

結局のところ、人はないものねだりをします。その事実をどう捉えるかは、あなた次第です。
メイクやケアなど、美容を通して「自分を好きになる」ことは、「自分の顔とどう向き合い、受け入れていくか」です。「何をしても私なんてダメだ」と思い込んでしまっているうちは、どんなにメイクの技術を身につけたところで、おそらく「自分を好き」になることは難しいと思います。

まずは「受け入れ態勢」を整えましょう。
大丈夫です。僕は自分を変えた人を、たくさん見てきています。

◆どうしても気になるコンプレックスを解消するか、そのままの自分を受け入れるか。

「自分を好きになる」には、大きく分けてふたつのパターンがあります。コンプレックスを解消して好きになるパターンと、そのままの自分の長所を伸ばして好きになっていくパターンです。

僕が誰かに相談を受けたときは、「どうしても受け入れられないコンプレックスがあるなら、短所を消す。そこまでないなら、基本的には長所を伸ばす」という方針です。

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たとえば「厚い唇がコンプレックス」という方がいるとします。他の人から見たら、むしろそのふっくらした唇が色気があって素敵に映ることも多いので、むしろそこを上手に活かすメイクをする選択肢もあります。でも、いくら周囲に素敵だと言われても、本人が本当にイヤでイヤで仕方ないなら、それは「唇の厚さを目立たせない」方向に行かなければ、なかなか幸せを感じにくいので、そちら方向にシフトします。他にも「どうしても一重の自分が好きになれない」人に、いくら「切れ長の目を活かしたメイクが素敵です」と提案しても、そのタイミングでは解決にならない。最初から二重にするグッズを活用した上でのメイクを提案したほうが、結果的に自分を好きになれるんです。

「つい、誰かと比較して落ち込んでしまう」のは誰にでもあることです。
メイクスタジオのお客様には芸能活動をされている方も多いのですが、そのような方でもつい誰かと比較してしまい「周りがみんなすごくかわいいんです、だから私なんて…」と思い込んで落ち込んでしまっていることがあります。その方自身は、もちろんすごくかわいいんです。そのくらい、誰にでもあります。

おすすめしたいのは、自分に自信が持てない人ほど、できれば「長所を伸ばす」方向のメイクをしてみてほしいということ。自信が持てるパーツがあれば、他人と比較してしまうことも少なくなります。
あの人にはあの人なりの、自分には自分なりの素敵なところがあると思えれば、落ち込むことも減るはずです。

それに、そもそも「気にした状態で見ているから、よけいに気になる」ということも多いもの。自分の顔には自分がいちばん向き合っているからちょっとしたことを気にしてしまいがちです。本人は丸顔をイヤがっているけれど、でもそもそもそこまで丸顔には見えないパターンもかなりあります。

ただ「自分の好きじゃない部分を解消する」にしても「そのまま受け入れる」にしても、やっぱり「自分を受け入れる態勢」という大前提がないと、ずっと「違う、こうじゃない」とネガティブな方向から方向転換できないので、「受け入れられる状態を作ってくれる何か」があるといいですね。

◆誰かに褒めてもらうことの力。

人によって、メイクや美容が「自分のため」と「誰かのため」の割合は異なると思いますし、そこはもちろん自由でかまいません。
でも「自分を好きになる」ということに着目すると、実は「誰かの目線で褒めてもらうこと」は、非常に大きな役割を果たします。友達に「今日、なんかいいね」と言われたり、好きな人や彼にかわいいと言われると、不思議と急に自分を受け入れられるようになるものです。
デビュー当時はちょっとあか抜けないところがあったモデルやアイドルの子が、どんどんグッとかわいくなっていくのは、そうやって「誰かの目線」を意識して「他人から見られたときに、どう映るか」を研究し尽くしているから。誰かに認められて、自分をもっと認められるようになって…の好循環です。それと同じように、一度「他人目線」をいつもより重視したメイクをして、誰かに褒められるという経験を積むと、結果的に自分のことが好きになれるはずです。

もちろん、自分ひとりでも「自分を好きになる」は叶えられます。現状がどうとか、こう思っているのが知られたら恥ずかしいとかそういうことは抜きにして、ただ「自分は素敵だ」と、根拠のない自信を持ってみてください。だまされたつもりでやってみると、それだけでも人は変わっていきます。

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どんなメイクスキルを身につける以前の大前提となる、「自分を受け入れること」の力。これを心得た上で、次回は「本当に合うメイクの見つけ方」についてご紹介します。

 

▼お話をうかがったのは…
メイクアップアーティスト 佐々木一憲さん

ササッと簡単に出来て、好きな人の心にササる #ササメイク を提唱。
オンラインサロン『SASAMAKE LOUNGE』、メイクレッスン+写真撮影『SASAMAKE STUDIO』など、メイクが苦手な方でもわかりやすい美容情報を発信している。
Instagram: @kaz_hm Twitter:@kaz_hm

構成/後藤香織